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2007年5月 1日 (火)

「昭和史の教訓」(保坂正康・朝日新書)

昭和10年代の歴史の実相を学ぶことを啓蒙した本です。この本の中で、保坂正康は昭和10年代を「四つの枠組みで囲い込まれた時代」と規定しています。その四つというのは次の通りです。

1.国定教科書による国家統制 → 国家意思による教育空間の占拠
2.情報発信の一元化 → 言論の封殺
3.暴力装置の発動 → 自主規制の強要
4.弾圧立法の徹底化 → 治安維持法の拡大解釈

昭和10年代というのは、共産主義者に限らず自由主義者だろうとクリスチャンだろうと、国策(つまり戦争)に反対したり、軍部を批判したりする者は、「非国民」として徹底的に排除、弾圧する時代だったようです。

今の日本には治安維持法はないし、原則として拷問もありません。しかし、「情報発信の一元化」ということでは、当局がやってること(またはやりたいと思っていること)は今も昔もほとんどかわらないのではないかと思います。この「情報発信の一元化」について、保坂正康は次のように述べています。

私はこの時代に「表現の自由」がなかったと分析するだけでは誤りだと思っている。それよりも情報の発信が一元化され、ジャーナリストが自由に取材を行えないというところに問題があると思う。現実には、情報局が情報の発信を一元化していき、それがそのまま記事にされているかどうかを、内務省の検閲課が検閲するという状態がつづいていくことになった。
 昭和十年代の言論は、政府の国民への示達という枠内で許容されていたのであり、政府の宣伝要員といった役割を果たしていたと断言していい。

あの太平洋戦争について、「マスコミも戦争を煽った」とか、「国民も戦争に賛成していた」などという論調をよくみかけますが、当り前ですね。賛成以外の選択肢は当局によって許されなかったのですから。

蛇足になりますが、このまじめな本を読んでいて不謹慎ながら笑ってしまったのは、「生死を恐れるな、生きて虜囚の辱めを受けず」と教えた「戦陣訓」についてです。「献身奉公の精神」を強調して、「生死を超越し一意任務の完遂に邁進すべし」などと末端の兵士には言いたい放題のことを言っておいて、「指導部にいた軍人たちのなかには虜囚の辱めを受けるどころか、敗戦後はGHQにすり寄り、その戦史部に身を置き、食うや食わずにいる日本人の生活のなかで並外れた優雅な生活をすごした中堅幕僚たちもいた」そうです。

正直者は馬鹿をみる・・・そんなもんだよ人生は。 ← これ、庶民の生活思想です。

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