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2007年9月23日 (日)

謎・「省線にて浅草駅に至る」

永井荷風・「断腸亭日乗」の昭和23年1月9日に次のような記事があります。

牛下省線にて浅草駅に至り三ノ輪行電車にて菊屋橋より公園に入る。罹災後3年今日初めて東京の地を踏むなり。

書かれた当時は疑問の余地がなかったと思われる内容ですが、今となってはチンプンカンプンです。そこでいろいろ調べてみました。

「三ノ輪行電車」というのはおそらく都電(路面電車)のことだと思います。時代はちょっと新しくなりますが、昭和42年ころ、31系統の都電(都庁前~三輪橋)が合羽橋道具街を走っていたといいます。この付近には三ノ輪、入谷2丁目、合羽橋、菊屋橋、三筋2丁目といった都電の停留所がありました。今はバス停になっているかもしれません(起点の都庁前の都庁というのは新宿西口の都庁ではなく、かつて有楽町にあった旧都庁です)。

それから公園というのは浅草公園のことで、浅草寺境内全域を浅草公園といったそうです。「浅草寺」と書いてあれば、部外者は何の疑いもなく「あさくさでら」と読んでしまいますが、正しくは「せんそうじ」だそうです。

どうしてもわからなかったのは、「省線にて浅草駅に至り」というくだりです。当時市川に住んでいた永井荷風にとって省線(現在のJR線)といえば総武線のことです。しかし、総武線に浅草駅はありません。あるのは秋葉原と両国の間の浅草橋駅です。

現在浅草駅と呼ばれている駅は4つあります。東武伊勢崎線の浅草駅、東京メトロ銀座線の浅草駅、都営地下鉄浅草線の浅草駅、つくばエキスプレス線の浅草駅です。さらに、かつては東武伊勢崎線の業平橋駅が浅草駅といわれていたこともあったそうです。でも、この中に総武線で辿り着ける浅草駅はありません。かつて存在して現在は廃止されている「まぼろしの浅草駅」があったという話も聞きません・・・謎です。

苦し紛れですが、「省線にて浅草駅に至り」を強引に「省線にて浅草橋駅に至り」と読み替えるとスッキリします。訳すと以下のようになります。

昼下がり、総武線で浅草橋駅に至る。浅草橋で三ノ輪行の都電に乗り換え、菊屋橋で下車、菊屋橋から浅草寺境内に入る。罹災後3年今日初めて東京の地を踏んだ。

これで意味が通じます。

不案内な土地のことだと、「浅草駅がこんなにたくさんあるのはけしからん。わけわからんじゃないか!」と、つい文句を言いたくなります。でも、「じゃあ新宿はどうよ。池袋は?渋谷は?」といわれると返す言葉がありません。

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