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2007年10月31日 (水)

夏目漱石の「こころ」を読む・その2

人間というのは、いわば自己正当化本能のようなものがあって、無意識のうちに自己を正当化しようとする心理が働くものです。過去を美化したり不都合なことは忘れてしまったりするのも自己正当化本能を想定すると納得がいきます。肯定的に考えれば、これがあるから人間は幸せに生きられるともいえます。ところが、「こころ」の先生は、この自己正当化本能がうまく機能しないタイプの人でした。頭脳明晰で神経が過敏なため誤魔化しがきかずに自分を正当化しようとしている自分にすぐ気がついてしまうのです。

人間には自己正当化本能とは別にモラルというものがあります。人間のモラルは環境や教育によって形成される後天的なものですが、このモラルが過度に肥大化してしまうと自己正当化本能に障害が起きてきます。残念なことに、「こころ」の先生はあまりにも真面目なモラリストでありすぎました。

人生というのはどこか適当でいい加減なところがないと辛いものです。「こころ」の先生も遺書を投函してから「やっぱり気が変わった」というぐらいのいい加減さがあればよかったです。

友人Kの死を無駄にしないためにも、先生は奥さんといっしょにKのお墓参りをして幸せな日々をKに報告しなくてはいけません。Kの分まで幸せになることがKに対するせめてもの償いです。自己正当化本能が正常に機能していれば時間の経過とともにそういう気になると思うのですが・・・「こころ」という小説はどうもいけません。

夏目漱石は深刻ぶった嫌味な作家です。軽妙洒脱の余裕派が聞いて呆れます。でも、小説はすこぶる面白いです。謎めいた伏線がいたるところに張り巡らされていて、読者を飽きさせません。推理小説のような醍醐味があります。純文学にしておくのはもったいないです。

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