« 江戸時代最大のベストセラー小説は何か? | トップページ | テロとの戦いVSテロとの戦い »

2007年10月16日 (火)

「戯作三昧」(芥川龍之介・新潮文庫)

日経新聞の「戯作の時代①―南総里見八犬伝」の解説に次のようなくだりがありました。

芥川龍之介は馬琴を主人公とする小説「戯作三昧」の中で登場人物の1人にこう語らせた。馬琴の小説は「四書五経の講釈だけでせう。だから又当世の事は、とんとご存じなしさ」。八犬伝は水滸伝の焼き直し、山東京伝の二番せんじだとも言っている。

これだけを読むと登場人物の言葉を通して芥川龍之介が馬琴を批判しているかのように受け取れます。ちょっと気になったので実際に「戯作三昧」を読んでみました(短編なのですぐ読める)。

芥川の「戯作三昧」は馬琴に自己の心情を仮託していて、馬琴に対しては批判的どころかむしろ共感をもって描いています。読み方によっては、「戯作三昧」の馬琴は芥川龍之介自身であるともいえます。時代背景を大正時代にして、主人公を馬琴ではなく「私」にしたとしてもほとんど違和感がありません。

「戯作の時代」における宝玉正彦氏の引用に間違いはありませんが、誤解を招きやすいです。引用されているのは風呂屋で馬琴がふと耳にしてしまった無知な大衆の戯言です。芥川の「戯作三昧」はこうした世間の無理解に対する反論として書かれています。戯作文学を「過去の遺物」として軽んじるような風潮に創作者の立場から強く異議を唱えたのが「戯作三昧」という小説だと思います。

小説「戯作三昧」の主題を要約すると、

 「創作活動の何たるかも解らずに生意気なことをほざく阿呆もいる」

こんなところだろうと思います。古典・故事に独自の解釈を与えて物語を展開した芥川龍之介の小説手法は戯作文学への先祖がえりのようなところがあります。できれば江戸戯作文学の隠れ礼賛者として紹介して欲しかったです。

|

« 江戸時代最大のベストセラー小説は何か? | トップページ | テロとの戦いVSテロとの戦い »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/122218/8457728

この記事へのトラックバック一覧です: 「戯作三昧」(芥川龍之介・新潮文庫):

« 江戸時代最大のベストセラー小説は何か? | トップページ | テロとの戦いVSテロとの戦い »