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2007年11月26日 (月)

岡本綺堂の「玉藻の前」を読む

面白いです。知っている人は知っている、知らない人はただちに読まなくてはいけません。特に妖怪ファンで岡本綺堂の「玉藻の前」を読んでいない人はもぐりです(勝手に決める)。

烏帽子折りの千枝松の幼なじみ藻(みくず)は美少女でした。時の関白忠通に召されて玉藻の前と呼ばれるようになります。この美少女には九尾の狐が憑依していました。妖魔です。玉藻の前は自分の正体を知った人間を次々に殺していきます。しかし、幼なじみの千枝松だけはどうしても殺すことができませんでした。妖魔にも殺人鬼になりきれない心の迷いがありました。心の迷いということでは千枝松も同じでした。千枝松にとって玉藻の前はときには妖魔でありときには幼なじみの藻でもありました。

少女マンガの世界では人間と妖怪の恋物語をラブオカルトというのだそうです。少女マンガに倣えば岡本綺堂の「玉藻の前」もまさしくラブオカルトです。ただ、この物語には単なる悲恋物語にとどまらない不思議な魅力があります。数ある「玉藻の前」を題材にした物語の中で最高傑作だと思います。物語の構成がしっかりしているのと文章によるイメージの喚起力が凄いです。何だか岡本綺堂のファンになりそうです。

こんな名作が読もうと思っても簡単に手に取ることができないというのはどうしたことでしょうか。時代の風雪に耐えない通俗小説だと思われているのでしょうかね。

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コメント

逆だと思います。岡本綺堂の名前を知っているようなレベルの高い人自体が少ない、知っていても半七捕物帳くらいのものでしょう。失礼かもしれないが電車で大方の皆さんが読まれてるような低俗大衆小説ではありません。通俗ではあっても高尚だと思います。この人は文章が美しいですね、私はスジよりも文章の美しい作家が好きですから綺堂、荷風とか谷崎氏はタイプですね。漱石の草枕も大好きです。

この玉藻前は綺堂自身一番愛着があるらしいですね。最後は綺堂の筆に乗り移ったのか?流石の極悪妖狐、玉藻前も可哀想になってしまいます、綺堂の言う通りロマンの香り溢れる怪奇?小説です。こんな美女で純な妖怪がいるなら私も恋をしてみたいものです。

綺堂さん、いいですよ!これを読まれたのは学研M文庫ですか?それなら収録されてる小坂部姫も秀逸です。私は最近まで神戸在住なので刑部姫伝説はよく知ってましたから馴染みやすかったですね、これも怪奇、悲恋ものです。この本は結構有名な五色蟹とか蟹満寺、その他もいいものが入ってるのでお得です。
この人はどういうわけか蟹が好きみたいで、随筆集にも出てきます。狐も出ます、本当に化けるという話で面白いですよ〜。

それとこの人は劇作家でもありますから修善寺物語のはいった角川文庫も面白い。随筆集もお薦めです、荷風や谷崎氏など文章の綺麗な人は随筆もいいですね。この人は修善寺も好きなようで、よく取り上げていますね(笑)修善寺へは私も一度行きましたが文人墨客の好きな感じです、温泉もあるし。それとそこで源頼家、範頼など悲運の人(妖怪にまで!)に同情を寄せてますね、よく解説にあるように温厚で優しい人格が現れている作風だと思います。それと怪奇ものが好きというのはロマンチストな証拠だと思います。リアリストはそんなこと信じないし不思議な事象というのはロマンがありますからね。

投稿: 居眠狂四郎 | 2016年1月24日 (日) 21時46分

居眠狂四郎さん、コメントありがとうございます。

「玉藻の前」はDS文学全集で読みました。岡本綺堂という作家も「玉藻の前」という小説も、何も知らないまま白紙の状態で読んだところ、あまりの面白さにびっくりしたのを覚えています。
 
文学の素養がないというか、私には美文を鑑賞するだけの国語力がありません。たとえば名作といわれている永井荷風の「墨東綺譚」など、どこが名作なのかさっぱりわからない状態です。それでも「玉藻の前」の面白さは実感できました。説得力のある描写にグイグイ引き込まれていった感じです。
 
その後、岡本綺堂に興味があったので、岩波文庫の「修善寺物語・正雪の二代目」(2008年春のリクエスト復刊)も読んでみました。しかし残念ながら「玉藻の前」ほどの感動はありませんでした。戯曲は読み慣れていないせいか何となく消化不良でした。岩波文庫の活字が小さすぎたのがよくなかったのかもしれません。
 
あとDS文学全集では「半七捕物帳」も追加でダウンロードできました(無料)。でも「半七捕物帳」はあまりにも大長編です。何冊か読みまたが途中で挫折しました。

投稿: むぎ | 2016年1月30日 (土) 22時49分

お返事ありがとうございます。

失礼ですが女性ですよね?それなら濹東綺譚がわからないというのも無理はないでしょう。いわゆる花柳小説だしあの人は少々というか相当な偏屈オヤジですし、芸者だとか色街を取り上げた、私みたいな好色親父に好かれる作品が多いですね(笑)濹東綺譚は私的には素晴らしい芸術品だと思いますけど何事も「蓼食う虫も----」ですからね。

谷崎氏の「吉野葛」は読まれました?まあ、筋も別段どうということもない小品ですが私はよくいう「掌中で慈しんでいたい美しさのある」作品だと思います。よければご一読を。

好きなものを好きなように読まれたら良いのでは?失礼ながら全く本を読まない人の方が多い時代に立派なものだと思いますよ。なにも高尚なものばかりでなくても。それに綺堂さんなら立派に高尚じゃないですか。
私的には草枕、濹東綺譚、吉野葛が好きなベスト3です。

投稿: 居眠狂四郎 | 2016年2月 1日 (月) 19時18分

追記
書き忘れていました。それでしたら「オサカベ姫」は、絶対お好みだと思います。

投稿: 居眠狂四郎 | 2016年2月 1日 (月) 19時21分

好みがが女性的なのかもしれません。でも男です(このまま女性ということにしいおこうかと誘惑に駆られましたがウソはいけません)。
 
横光利一は、新聞に連載中の「濹東綺譚」に圧倒されて「濹東綺譚」の連載が終わると、(これには勝てないと観念して)自身が連載中だった新聞小説(「旅愁」)をやめてしまったというエピソードをどこかで読んだことがあります。そんなにすごいのかと思って「濹東綺譚」を読んだのですが……私には高級すぎたのかもしれません。

個人的な好みとして心理描写の優れた小説に魅かれる傾向があります。すべてDS文学全集で読んだのですが、二葉亭四迷の「浮雲」、夏目漱石の「明暗」・「行人」、有島武郎の「或る女」、宮本百合子の「伸子」などが面白かったです。

谷崎潤一郎や永井荷風は長生きをしたためその作品がDS文学全集に収録されていませんでした(DS文学全集は青空文庫の著作権の切れた作品で構成されている)。
 
谷崎潤一郎は名前を知っているだけで未知の作家ですが、居眠狂四郎さんおススメの「吉野葛」を読んでみたいと思います。

「オサカベ姫」も読んでみます。

投稿: むぎ | 2016年2月 1日 (月) 21時29分

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