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2007年12月20日 (木)

押川春波の「海底軍艦」を読む

「海底軍艦」は押川春波が学生の時に書いた波乱万丈のSF冒険小説です。娯楽大作で大変面白いです。宝くじに当たるような奇跡的偶然が次から次へと起きます。随所に見られる奇想天外な発想にも妙なリアリティがあります。マンガでもこれだけ面白い作品はめったにないかもしれません。

「海底軍艦」という物語は、これ以上はできないというくらい日本の帝国海軍を美化しています。帝国軍人はすべて人格者です。当時の少年はこういう物語に熱狂して軍国少年になっていったのかと思うと、軍国主義のプロパガンダ小説といった側面もあったのかもしれません。でも、当時(1900年)の時代背景を考えれば已むをえないところもあります。

スポーツの国際試合で自国のチームを応援する国民にナショナリストの幻影を見て不快感を感じるような極端な反戦平和主義者でなければ、「海底軍艦」の軍国主義的な要素は許容の範囲内だと思います。「戦争を賛美する物語などけしからん」ということで切り捨ててしまうと、せっかくの面白いSF冒険小説が埋もれてしまいます。物語は物語として、現実は現実として割り切ってしまう読者の立場というのがあってもいいと思います。

 「蟹工船」VS「海底軍艦」

面白さの質は違いますが、両作品とも読んで損のない傑作だと思います。

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