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2007年12月 3日 (月)

夢野久作の「少女地獄」を読む

夢野久作の「少女地獄」は独立した3つの物語(「何んでも無い」、「殺人リレー」、「火星の女」)からなる怪奇ミステリーで、それぞれタイプの違う3人の若い女性が嵌った地獄絵図が描かれています(「火星の女」は日活ロマンポルノとして小沼勝監督が映画化している)。

3編とも若い女性が主人公ですが、常軌を逸した女の執念の怖さがヒシヒシと伝わってきます。救いがありません。こういう小説ばかり書いていると書いている本人がおかしくなってしまうのではないかと心配になってきます。3編とも新聞の三面記事にありそうな話です。当時世間を騒がせた実際の事件がモデルになっているのかもしれません。

3編の中では「何んでも無い」が一番面白かった(怖かった?)です。主人公の姫草ユリ子はたいへん有能な看護師でしたが極端な二重人格者で病的な虚言癖がありました。自分の嘘に自分が振り回されて自作自演を続けているうちに現実と妄想の境いが曖昧になってきます。そして最後は遺書にまで妄想(=主観的真実)を書くようになります。「何んでも無い」を読んでいると、何がホントで何がウソなのか混乱してきます。

姫草ユリ子の遺書の一節に次のようなくだりがあります。

社会的に地位と名誉のあるお方のお言葉は、たといウソでもホントになり、何も知らない純な少女の言葉は、たとい事実でもウソとなって行く世の中に、何の生甲斐がありましょう。

「社会的に地位と名誉のあるお方」は不必要などうでもいいことでウソはつきません。悪質かどうかはともかくとしてウソをつく場合はそれなりの理由があるものです。理由もなく何んでも無いことでウソをつくのはむしろ「何も知らない純な少女」のほうです。ちなみに、姫草ユリ子は25歳です(どこが純な少女だ)。

しかし、「少女地獄」のようなグロテスクな怪奇物語って・・・好きです。

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