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2007年12月 4日 (火)

太宰治の「走れメロス」を読む

昭和12年のことです。太宰治が熱海の旅館にこもって小説を書いていたところ、滞在が長引いて宿代が払えずに身動きが取れなくなってしまいました。そこで盟友の檀一雄が東京からお金を持って助けに行きました。ところがせっかく持ってきてくれたお金を宿代の支払いにあてずに檀一雄とふたりで飲んでしまいました。旅館の宿代をためたまま連日酒と女のハシゴを繰り返しているうちに居酒屋や遊女屋のツケもたまってきました。とうとうふたりとも身動きがとれなくなってしまいました。

そこで、お金の工面をするために、檀一雄を熱海の旅館に残して、太宰治だけが東京へ帰ることになりました。檀一雄は人質です。「すぐに戻る」という約束を信じて檀一雄は旅館で無為の日々を過ごしていました。ところが、4日たっても5日たっても何の音沙汰もありません。檀一雄は旅館に置き去りにされたのでした。

事態がどのように収拾したかは「小説 太宰治」(檀一雄・岩波現代文庫)に詳しいです。日頃温厚な檀一雄もこのときばかりはさすがに激怒したようです。それでもやはり檀一雄は善意の人でした。「走れメロス」について次のような感想を述べています。

私は後日、「走れメロス」という太宰の傑れた作品を読んで、おそらく私達の熱海行が、少なくともその重要な心情の発端になっていはしないかと考えた。あれを読むたびに、文学に携わるはしくれの身の幸福を思うわけである。憤怒も、悔恨も、汚辱も清められ、軟らかい香気がふわりと私の醜い心の周辺を被覆するならわしだ。
「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」
と、太宰の声が、低く私の耳にいつまでも響いてくる。

「走れメロス」を読んで感動した小学生が、こんな素晴らしい感動物語を書く人はどんな立派な人だったのだろうと思って太宰治の評伝を読んだとします。実際の太宰治はグータラで放蕩無頼のダメ男でした。これを知ったらせっかく「走れメロス」に感動した小学生もがっかりするのではないでしょうか。

「DS文学全集」にはリアルタイムで更新されているランキングというのがあります。12月4日22時現在のナンバーワンはこの「走れメロス」でした。ベスト10は以下の通りです。

 1.走れメロス・太宰治
 2.坊ちゃん・夏目漱石
 3.花のき村と盗人たち・新美南吉
 4.野菊の墓・伊藤左千夫
 5.吾輩は猫である・夏目漱石
 6.杜子春・芥川龍之介
 7.恩讐の彼方に・菊池寛
 8.こころ・夏目漱石
 9.セロ弾きのゴーシュ・宮沢賢治
10.玉藻の前・岡本綺堂

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