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2008年1月25日 (金)

島崎藤村の「夜明け前」を読む・その1

「DS文学全集」でとうとう島崎藤村の「夜明け前」が当たってしまいました。60作目です。2週間前から読み続けていますが、まだ読み終わりません(明日読了する予定です)。

この大長編小説は、必ず読破するという固い決意で臨まないと途中で挫折すると思います。いわゆるエンタメ系の小説ではなく、幕末のヒーロー(=有名人)も名前だけは多数登場しますが、どんなヒーローも歴史的事件に付随した影のような存在として扱われていて物語の前面に出てくることはありません。

この小説の主人公は、木曽馬籠宿で本陣、問屋、庄屋の三役をかねていた旧家の十七代目当主・青山半蔵です。この主人公は親思いで実直なだけが取柄のいたって平凡な男です。親の七光りと周囲のサポートで何とか大役を果たしていきますが、まあ、気のいい村長さんといったところです。

この小説を読んでいると、没落してゆく旧家とその当主の生涯を通して激動の時代の歴史の実相がリアルに伝わってきます。歴史とは何か、人生とは何かというふたつのテーマが同等の重さで迫ってくる大変な力作です。わたしなんぞは、長野県の地図と歴史年表を広げながら、すっかり歴史の勉強をしてしまいました。ただ、本来なら脚注にすべきような無味乾燥な説明が本編に紛れ込んでいて、しかも大長編であるため、読み通すのにはかなり忍耐力が必要です。

娯楽的面白さの乏しい小説ですが、唯一のサービスといえるのが水戸尊攘派が起こしたという「天狗党の乱」です。筑波山で挙兵して遠路はるばる越前新保(福井県敦賀市)に至るまでの過酷な行軍はドラマチックです。諏訪・和田峠の合戦などは吉川英治の小説を思わせる面白さです。でも、島崎藤村には読者を楽しませようという意図はまったくないようです。天狗党の乱はたまたま事件そのものがドラマチックだっため、事実を淡々と描写しても結果的にドラマチックになってしまったようです。

つづく

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