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2008年2月19日 (火)

長塚節の「土」を読む

仏教には人間の罪として、殺生、盗み、邪淫、うそ、両舌(人を仲たがいさせる言葉)、ののしり、貪欲など、十悪というのがあります。長塚節の「土」は、この十悪が渦巻いている極貧の世界を描いた小説です。

時代は明治末期、茨城県鬼怒川沿いの農村で暮す小作人勘次が主人公です。勘次とその家族の暮らしを通して、生きることさえままならない極貧の生活が赤裸々に綴られています。「衣食足りて礼節を知る」という言葉がありますが、勘次たちの暮らしは「衣食足らずして礼節なし」です。

長塚節の「土」は、貧しい農村の暮しとそれを取り巻く四季の自然を精密に描写した農民文学の最高傑作といわれています。でも、一般の読者(つまり私)にとっては決して読みやすい小説ではありません。方言で書かれた会話は読みづらいし、いたずらに言葉を重ねた(と思う)退屈な情景描写に辟易させられます。最後まで読み通すには相当の忍耐力が必要です。また、苦労して読み続けたとしても、骨折り損のくたびれ儲けで終わる可能性が大です(必然性のない取ってつけたような甘い結末にがっかりする)。「自然主義リアリズムと白樺派的理想主義の融合」という評価もあるようで、長塚節としては無理を承知で最後に救いのある小説にしたかったのかもしれません。

はじめてこれを読まれる読者は、筋の面白さを期待してそれを追わないことだ。この全体が物語なのであり筋なのだと思って最初からとりかかることだ。(和田伝)

まさしくそういう感じの小説でした。類例のない異色作です。

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