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2008年2月13日 (水)

夏目漱石の「彼岸過迄」を読む

夏目漱石の「彼岸過迄」は今年の大学入試センター試験に出題されたようです。出題された箇所は、鎌倉の別荘で須永が高木を紹介されたときの回想シーンです。高木というのは健全な精神が健全な肉体に宿っているような好青年です。優柔不断で「卑怯者」で人を愛することができない偏屈な須永が、自分とは対照的な高木と出合ったときの心理を友人の敬太郎に語ります。

漱石文学を「嫉妬の心理劇」と考えれば、最も核心的部分が出題されたといえます。でも、どうしてこの小説が選ばれたのかは不明です。センター試験ということで、なるべく公平になるようにあまり知られていない「彼岸過迄」が選ばれたのかもしれません。問題文で、わざわざ「田口家の別荘」としているのも、「この一節だけを独立した作品として考えなさい」ということなのかもしれません(本当は知人の別荘)。

長編としての「彼岸過迄」は何だかギクシャクした感じのする小説です。元祖ドッキリカメラのような敬太郎の探偵物語から始まって、矢来町の雨の降る日の謎が明かされた後、突然話題の中心が須永に移って須永の長話が続きます。そして、ラストは松本(須永の叔父)が敬太郎に語る須永評で締めくくられています。それにしても、松本という須永の叔父は、いくら親しいとはいえ、甥(須永)の出生の秘密を甥の友人(敬太郎)にバラしてしまっていいのでしょうか。どうも不自然です。

「彼岸過迄」は書きたいこととそれを小説としてどう表現するかが巧く繋がらなくて、途中で面倒になって原料(=書きたいこと)をぶちまけてしまったという感じの小説です。夏目漱石も長編小説はかなり苦手だったようです。しかし、こういう小説を、細切れの新聞小説として書かなければならなかったことを考えると、ある意味では驚異的にすごかったともいえます。あーだこーだ小細工を弄するよりも、文才のある作家は気迫で書いたほうが面白い小説になるのではないかと思います。「雨の降る日」のエピソードなどは実に感動的です(幼くして子を亡くした親は是非読むべし)。

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