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2008年3月30日 (日)

夏目漱石の「明暗」を読む

1年前なぜ清子は自分のもとを去っていったのか、津田由雄はそれを聞くためにわざわざ温泉地で静養中の清子に会いに出かけて行きます。バカだねー。

津田という男は自惚れが強く、しかも些細なことで平気で嘘をつきます。計算高く功利的で見栄坊です。結婚して一家を構えているのに経済的自立心が乏しくいまだに京都に住む親の援助を当てにしています。それでいて世間的な体面を気にします。裏表のない人間を高潔な人格者とするなら、津田はおよそ人格者とは程遠い人物です。自責の念も反省の心もありません。恋人として見せびらかすには適当でも、結婚して人生の苦楽を共にするにはおよそふさわしくない男です。

清子はなぜ津田を捨てて他の男と結婚してしまったのでしょうか。言わずと知れたことです。男を見る目があったからです。そんな津田と延子はなぜ結婚してしまったのでしょうか。これまた言わずと知れたことです。延子には男を見る目がなかったからです。割れ鍋に綴じ蓋です。

「明暗」という小説は、凝縮された時間の中で、津田由雄と延子という新婚夫婦の心に隙間風が吹き始めてくる様子をくどいくらい緻密に描いていきます。まさに行間を埋め尽くすような心理描写がされます。読者の想像力は埋め尽くされた行間のさらにまた行間に向っていきます。頭の中は書かれざる分岐ストーリーが氾濫して一気に読もうとするとパニック状態になります。この小説は、少し読んでは立ち止まって考え、また少し読んでは立ち止まって考える・・・そんな感じで少しずつ読むのがいいと思います。わが身の浅はかさを反省しながらじっくり味わって読む小説です。

津田と清子に温泉地で何が起こるのか、津田の留守中吉川夫人はお延に何をするつもりなのか、ダメ男・津田由雄の行く手にはどんな運命が待っているのか・・・数々の謎を残したまま「明暗」は絶筆となってしまいました。物語はまだまだ続くのか、それともそろそろ結末が近いのか、それさえもよくわかりません。

長さから考えて絶筆とはいえ結末が近かったという意見もあるようです。しかし、「明暗」という小説はこれまでの漱石の小説とは大きく構想が違っています。物語が複眼的に描かれていて、本当の主人公が誰なのかさえはっきりしません。過去の経験則は当てはまらないと思います。

「明暗」は善悪の価値観が封印されていて教訓じみた倫理臭がないというのがひとつの特徴(=魅力)になっています。描かれているのはヒューマニズムの彼岸にある荒涼とした精神風景です。未完でありながら近代文学の最高傑作という評価もあるようです。

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