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2008年4月24日 (木)

「DS文学全集」ベスト10

ようやく「DS文学全集」を読破しました。去年の10月から約半年間の長旅でした。読んでみて面白かったおススメ・ベスト10は以下の通りです(夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、太宰治などの超ブランド作家の作品は除外しました)。

 「不如帰」    徳冨蘆花  1898
 「海底軍艦」   押川春浪  1900 
 「野菊の墓」   伊藤左千夫 1906
 「或る女」    有島武郎  1911~1913・1919
 「玉藻の前」   岡本綺堂  1918
 「恩讐の彼方に」 菊池寛   1919 
 「伸子」     宮本百合子 1924~1926・1928
 「蟹工船」    小林多喜二 1929
 「いのちの初夜」 北條民雄  1936
 「次郎物語」   下村湖人  1936~1954  

「不如帰」は、「金色夜叉」、「婦系図」と並ぶ明治の三大メロドラマ(=トレンディドラマ)小説です。3作を代表して「不如帰」を選びました。徳冨蘆花は大逆事件(大逆罪で幸徳秋水らが処刑された事件)に抗議して「謀叛論」と題する講演を行っています。文学者にしては珍しく筋を通す気骨のある人だったようです(永井荷風は大逆事件にヒビリまくっていた)。

「海底軍艦」は押川春浪が学生のとき(1900年)に発表したSF冒険小説です。その面白さは読んでびっくりです。戦後になって(1963年)映画化されています。特撮監督円谷英二、メカデザイン小松崎茂という豪華版(?)です。

「野菊の墓」も戦後になってから映画化され、映画化をきっかけに大ブレイクした小説です。戦前はあまり読まれていなかったようです。戦前の伊藤左千夫は小説家というよりも歌人として有名でした。「野菊の墓」はモデルの存在した自伝的小説ともいわれていますが、今となっては藪の中です。詩情豊かな名作中の名作だと思います。

「或る女」は有島武郎の精神的自画像のような小説です。その後の心中自殺を予見させる不吉な作品です。面白いです。ただ同じ有島武郎でも「生れ出づる悩み」や「カインの末裔」はいまいちです。

「玉藻の前」はイメージの喚起力がすごいです。最近岩波文庫で岡本綺堂の復刊新刊が相次いでいます。「玉藻の前」も出せばいいのにね。「DS文学全集」では「半七捕物帳」もダウンロードできます。

「恩讐の彼方に」は、「面白いのはけしからん」と考えている人には不人気です。「DS文学全集」に収録されている菊池寛の作品はすべてドラマチックで面白いです。菊池寛は読者を楽しませるツボを心得ています。猪瀬直樹の「こころの王国」(文春文庫)を読むと、菊池寛という作家は「文学界のさいとうたかを」だったのではないかという気がします。

「伸子」は中条百合子の作品だと思って読んだほうがいいです。自己弁護の書ともいえます。徹底的に悪者にされている佃くんが少しかわいそうです。この小説は不幸にして(?)才能に恵まれてしまった女性、たとえば宇多田ヒカルなどにおススメです。

「蟹工船」は北海の海で働く貧しい労働者群像を描いたプロレタリア文学の金字塔です。ワーキングプアが問題となっている今日再びこの小説が脚光を浴びてきているようです。ただ、小林多喜二の他の小説はあまり面白くありません。

「いのちの初夜」は人間の実存を問う重い小説です。ハンセン病がまだ不治の病だった頃にこの小説を読んだ読者がどれほどの衝撃を受けたか、それを想像しながら読むといいです。どんな深刻ぶった小説もこの小説の前では霞んでしまいます。北條民雄は23歳で夭折しました。

「次郎物語」は夏目漱石の小説(「吾輩は猫である」、「坊っちゃん」、「三四郎」、「こころ」など)をひとつの物語に纏めたような教養小説です。五部まであります。振り返ってみるとその後に読んだ作品と比べて相当面白かったような気がします。近代文学史ではほとんど対象外の扱いを受けていますが、大変な労作だと思います。

おわり

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