« 宮本百合子の「伸子」を読む・その2 | トップページ | イエス小池さんの「漫画家アシスタント物語」を買う »

2008年4月14日 (月)

宮本百合子の「伸子」を読む・その3

どんな理想の社会を想定しても、そこで暮す万人の性格がみな同じになって、みな同じ人生観を抱いて、誰が誰と結婚しても必ず幸せな結婚生活が送れる、なんてことはありえません。伸子と佃のように性格も人生観も違う夫婦が堕ちこんでいく泥沼の愛憎劇は、社会制度を変えたところで解消できる問題ではないです。

「伸子」は宮本百合子がプロレタリア文学運動にのめり込んで行く以前に書かかれた小説です。渾身の力作だと思います。書かれてしまった作品はすでに作者の手を離れて自立しています。「伸子」に関する限り、左翼系の文学者(その後の宮本百合子自身も含む)の作品解説は、作品を無理矢理左翼文学の鋳型に嵌め込もうとしているようでどうも納得がいきません。岩波文庫版の解説などひどいものです。

「伸子」という小説の不幸は、作品がイデオロギーの檻の中に閉じ込められてしまっているところにあると思います。その評価が良きにつけ悪しきにつけ歪んでしまっています。「女性解放の名作」などという先入観を捨てて虚心にこの小説を読めば、家庭とは何か夫婦とは何かを必死に問いかけてくるイデオロギーを超えた力作であることが実感できると思います。

|

« 宮本百合子の「伸子」を読む・その2 | トップページ | イエス小池さんの「漫画家アシスタント物語」を買う »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/122218/20230045

この記事へのトラックバック一覧です: 宮本百合子の「伸子」を読む・その3:

« 宮本百合子の「伸子」を読む・その2 | トップページ | イエス小池さんの「漫画家アシスタント物語」を買う »