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2008年5月11日 (日)

太宰治の「桜桃」を読む

貧乏文士の太宰さんはお酒が大好きです。わずかばかりの原稿料もみんな飲んでしまうので、家庭の台所は火の車です。奥さんの苦労はたまったものではありません。いつも金欠状態で貧しい暮らしをしています。

夏のある日のことです。太宰さんの家族(父と母と幼い3人の子ども)が破れ畳の3畳間に集まってにぎやかに食事(夕食)をしていました。暑いのでしきりに汗をかきます。そのとき賢妻が愚夫に言いました。

「お父さんは、お鼻に一ばん汗をおかきになるようね。いつも、せわしくお鼻を拭いていらっしゃる。」
 父は苦笑して、
「それじゃ、お前はどこだ。内股かね?」
「お上品なお父さんですこと。」
「いや、なにもお前、医学的な話じゃないか。上品も下品も無い。」

むきになって反論しているバカおやじに大笑いしたものです。「♪だざいさーん、だざいさん、だざいさーんはゆかいだなー(サザエさんの節で)」

しかし、この会話には続きがあります。

「私はね、」
 と母は少しまじめな顔になり、
「この、お乳とお乳のあいだに、……涙の谷、……」
 涙の谷。
 父は黙して、食事をつづけた。

昔(若いころ)「桜桃」を読んだときは、ユーモラスなところだけが印象に残って主人公(=太宰治)のことを「家庭を顧みないなんて悪いオヤジだ」と思ったものです。名作だといわれてもピンときませんでした。このたび「DS文学全集」の裏ダンジョンに収録されている「桜桃」を読んでみました。「桜桃」は文庫本で10ページ程度の短編ですが、なるほどこれは名作です。よき夫やよき父親を演じることに疲れたら、太宰治の「桜桃」を思い出して読んでみるといいです。勇気がわいてきます(無理か?)。

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