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2008年7月23日 (水)

「反貧困」(湯浅誠著・岩波新書)を読む

日本国憲法第25条には

  「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」

と明記されています。

この日本国憲法の精神に則って日本には生存権を保障する様々なセーフティネット(労働三法,最低賃金法、各種社会保険など)が設けられています。究極のセーフティネットとして公的扶助(生活保護)もあります。したがって日本には深刻な貧困問題は存在しません。

これが厚生労働大臣の見解であり、内閣総理大臣の見解であり、したがって日本国政府の見解であるとすれば、

    ふざけるんじゃねえ!

と異議申し立てをしているのがこの「反貧困」という本だと思います。反貧困というのは生活困窮者が救われる社会を目指す貧困撲滅運動のようなものだと思います。著者の湯浅誠氏は1995年からホームレスの支援活動に関わってきたそうで、2001年からはホームレスに限らず生活困窮者に対する生活相談(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい)も始めました。支援活動を通じで年々ひどくなっていく日本社会の貧困化を肌で感じているようです。また貧困の広がりを裏付けるような各種統計データも本の中で紹介されています。

湯浅誠氏によれば、

憲法25条で定める「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」は単なる御題目ではない。憲法25条の具体化として生活保護法があり、生活保護法にしたがって厚生労働大臣告示で毎年生活保護基準が改訂されている。世帯ごとに、10円単位まで最低生活費が決められている。それが、憲法25条に基づいて国が一つ一つの世帯に保障している金額、「これを下回ったら国が責任を持つ」と宣言している金額である。

にもかかわらず現実はどうかというと、

生活保護基準以下で暮す人たちのうち、どれだけの人たちが生活保護を受けているかを示す指標に「捕捉率」がある。政府は捕捉率調査を拒否しているが、学者の調査では、日本の捕捉率はおおむね15~20%程度とされている。20%として約400万世帯600万人、15%とすれば約600万世帯850万人の生活困窮者が生活保護制度から漏れている計算になる。

まさしく「ふざけるんじゃねえ!」といった感じだと思います。

1.何らかの理由で生活保護基準が下げられない
2.高い生活保護基準を維持しようとすると予算の関係で捕捉率を下げざるをえない
3.そこでメチャクチャな水際作戦が展開される
4.生活困窮者のなかで生活保護制度を利用できる人と利用できない人が出てくる

現実的にはこういう流れになっていると思います。捕捉率15~20%程度でも政府が負担している生活保護費は毎年約2兆円です。かりに政府が本気で貧困対策に取り組んだとすると、毎年10兆円をこえる対策費(≒生活保護費)が必要になってくると思います。10兆円というのは、道路特定財源の約2倍の規模、消費税に換算すると約5%です。

憲法違反と非難されても政府としては貧困問題から目を背けて耐えるしかありません(そんな財源どこにあるんだ)。

「反貧困」という本には、生活困窮者にためにいろいろ相談にのってくれる団体の連絡先が載っています。お上に相談するよりも頼りになるかもしれません。

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