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2008年11月20日 (木)

つげ義春の「大場電気鍍金工業所/やもり」(ちくま文庫)を読む

書店でつげ義春の文庫本を見つけるとつい買ってしまいます。漫画家・つげ義春は遅筆なだけでなくとんでもない怠け者らしいですが、休筆を繰り返しながらも途切れ途切れに新作を発表し続けているのだろうと思っていました。しかし、「離別」(「COMICばく」1987年6月、9月)を最後にすでに20年以上も新作の発表をしていないそうです。注文がないから描かないのか注文があっても描かないのかそのへんのところはよくわかりませんが、とにかく生活に困らなければ漫画は描かないという主義らしいです。まさに描かざる巨匠です。21世紀のこの時代にこういう仙人みたいな漫画家がひとりぐらいはいても悪くないです。

つげ義春コレクション第2回配本の「大場電気鍍金工業所/やもり」に収録されているのは1970年代から80年代にかけて発表された自伝的作品群です。私小説風の漫画でありながらひとりよがりにならずに娯楽作品としても楽しませてくれるその力量は大変なものです。つげ義春の漫画の特徴は、売れなければ困るけど売れ過ぎても困るというその微妙なバランスにあると思います。深刻なテーマを扱いながらどの作品も娯楽作品として十分面白く読めるというのが魅力です。この娯楽性(ユーモアやエロス)は計算してそうしているというよりも結果的にそうなっているのだと思います。これは天性の資質です。もちろんつげ義春本人に聞けば「計算している」というでしょうが、「計算しなくても結果は同じ」というのがわたしの意見です。要するに、どう転んでもつげ義春には駄作や凡作は描けないのです。

寡作ということもありますが、つげ義春ほど読者によってその作品が繰り返し丁寧に読まれいている漫画家もちょっと珍しいと思います。もし100年後にも古典として読み継がれている漫画があるとすれば、それは手塚治虫ではなくてつげ義春かもしれません。

これは余談ですが、「散歩の日々」(「COMICばく」1984年6月)に出てくる坊主頭の主人公は「イノセント・ラヴ」に出てくる佳音の兄・耀司(福士 誠治)にどこか似ています。「散歩の日々」は新潮文庫の「無能の人・日の戯れ」に収録されています。立ち読みしましょう。

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