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2008年12月 1日 (月)

二葉亭四迷の「平凡」を読む

二葉亭四迷の「平凡」は39歳の貧乏文士が恥多き半生を告白するというスタイルの小説です。ある意味では自然主義のパロディ小説ともいえます。

近頃は自然主義とか云つて、何でも作者の経験した愚にも附かぬ事を、聊(いささか)かも技巧を加へず、有りの儘に、だらだらと、牛の涎(よだれ)のように書くのが流行るそうだ。好い事が流行る。私も矢張り其(それ)で行く。

二葉亭四迷は小説の中でこのような悪たれ口を叩いていますが、これを嫌味ととるかユーモアと感じるかは意見の分かれるところだと思います。いずれにしても「平凡」という小説は決して牛の涎のような小説ではありません。緻密な心理描写が冴え渡っているし、落語的な可笑し味もあります。「作者の経験した愚にも附かぬ事」を装いながら実はフィクションだったりもします。とにかく面白いです。

「平凡」にはひとつのエピソードとして主人公が少年時代に仲良くしていた愛犬の思い出が出てきます。この愛犬はポチといいますが、犬殺しに殺されてしまいます。愛犬家にとって飼い犬がいかなる存在であるのかを知るのに二葉亭四迷の「平凡」はかなり参考になると思います。「平凡」を読むと、元厚生次官連続殺傷事件の容疑者の「飼い犬の仇(あだ)討ち」という動機がそれほど不可解ではなくなってきます。もちろん殺人はもっての他だし元厚生次官を標的するというのは全くの筋違いです。でも、仇(あだ)討ちをしたかったという気持は何となく理解できます。

「犬の仇」不可解な動機解けるか 元厚生次官ら連続殺傷
11月30日0時39分配信 産経新聞

 元厚生次官ら連続殺傷事件は、小泉毅(たけし)容疑者=銃刀法違反容疑で逮捕=が警視庁に出頭してから29日で1週間。小泉容疑者は「飼い犬の仇(あだ)討ち」「官僚は悪」と一貫して供述しているが、34年前の心の傷が元次官を標的にした連続殺害計画につながるのか、不可解さは消えない。勾留(こうりゅう)期限の12月4日にも、さいたま市の山口剛彦さん(66)夫妻殺害で、埼玉県警が殺人容疑で再逮捕する見込みで、捜査の焦点は謎の多い動機の解明に移る。

この事件の容疑者に二葉亭四迷の「平凡」を読ませたら号泣するのではないでしょうか。

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