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2009年12月12日 (土)

「無花果の森」第28回(12/11)

カウンター脇の柱に、厚手の白い紙がピンで留められていました。そこには達筆の墨文字で次のように書かれていました。
  

   急募。住み込みお手伝い。高給優遇します。 天坊
    ◎ ◎

なんだか泉に打ってつけの仕事です。タイミングが良すぎます。まあ人生にはこういうこともたまにあります。ただ、いくら急募だからといって身元保証人なしでは雇ってもらえないのではないでしょうか。住所不定というのもまずいです……うまく雇ってもらえるでしょうか。

ところで、「天坊」というのは何のことでしょうか。ホテルか旅館の名前のような気もしますが、単なる珍しい苗字かもしれません。鈴木とか佐藤だとわかりやすいのですが……。
   

泉は、「住み込みお手伝い」という文字に触発されて、小学生のころ、裕福なクラスメートの家にいたお手伝いさんのことを思い出していました、そのお手伝いさんの部屋を見せてもらったりもしました。

 殺風景な部屋だった。壁にはプラスチックの白い縁のついた四角い鏡が架かっていた。片隅に小さなテーブルが一つ置かれ、いかにも安物の花瓶に薔薇の造花が一輪、飾られていた。中央には、畳まれた薄い布団が一式あった。
 布団の上に載せられた蕎麦殻の枕に、花の刺繍のついたピンク色のカバーかかっていたことを妙に生々しく蘇らせながら、泉は「住み込み」という言葉を反芻した。

う~ん、この描写はどんなものでしょうか。泉は現在38歳です。小学生のころといえば30年近く前になります。たまたま遊びに行ったクラスメートの家のお手伝いさんの部屋の様子をこんなに具体的かつ鮮明に覚えているものでしょうか。さらに不自然なのは、全体の描写が小学生の認識のレベルを超えていることです。まるで大人が見たかのように脚色されています。

1.素材がプラスチックだとなぜわかったのか?
2.花瓶が安物であるかどうかなど小学生が考えるだろうか?
3.一輪挿しの薔薇の花が造花であるとなぜわかったのか?
4.小学生が布団をみて薄いなどと判断するだろうか?
5.枕が蕎麦殻だったというのはどうしてわかったのか?

泉には、見てもいないものを見たかのように思い込んで、それを思い出しているように錯覚してしまう病的な性癖があるのかもしれません。

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