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2009年12月16日 (水)

「無花果の森」第31回(12/15)

この店に足を踏み入れた泉は、第17回(11/28)で次のように思っていました。

 客のいない店のカウンター席に座ったからには、店主との世間話につきあわなければならなくなるかもしれない、と危惧した。どこに住んでいるのか、何の仕事をしているのか、などといった無邪気な質問に、適当な作り話を返していく元気はなかった。

ところが、食事が終わると、たわいもない世間話を装って、なんと泉のほうから店主に話しかけるようになりました。求人の貼り紙について詳しい情報を訊きたかったのです。

店主がサラダをサービスしてくれて、泉がホットコーヒーの追加注文をする、そんなやりとりをしているうちに気分的に和んできて世間話でもしてみようかという気になったのかもしれません。でも、泉は基本的に性格悪いです。この人は自分の損得で態度が急変するのではないかという印象を受けます。自分に利益がなければ世間話などしたくない、自分に利益があれば積極的に世間話をする……こういうのって何か打算的で嫌な感じです。

軽食喫茶・ガーベラの店主は、無愛想なのかと思ったら、けっこう話好きでした。いざ話始めると、お手伝いを募集している画家の天坊八重子という女性について、訊かれてもいないことまでペラペラとまあよくしゃべります。最初は泉が無口だったので遠慮していたのかもしれません。泉にとってはありがたい情報源です。

「お手伝い募集、なんてテイのいいこと書いているけど、本当のところは、介護人募集なんだと思いますよ。なにしろ独り暮らしだしね。八十近くになって、いよいよ身体が不自由になってきているみたいだから。足元もおぼつかなくて、杖なしじゃ、出歩けなくなっているし」

店主が、天坊八重子について、あることないことおしゃべりしていると、背後でカウベルが騒々しく鳴らされました。誰か来たようです。噂をすれば影で、梅干婆さん(?)の天坊画伯かもしれません。

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