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2009年12月18日 (金)

「無花果の森」第33回(12/17)

泉は天坊先生と電話で話をすることになりました。

 本名にすべきかどうか、決めかねた。だが、相手はわずかの沈黙も逃がそうとしなかった。
 「名前」と苛立って繰り返す声が返ってきた。「名乗らないとわかんないでしょうが」
 「すみません」と泉は言った。「高田です。高田洋子と申します」

住み込みの家政婦として働くのにいくらなんでも偽名はまずいのではなかろうか。咄嗟のこととはいえ、あとで困ったことにならなければいいのですが……。

この小説を読んでいると、どうしても気になってくることがあります。主人公の泉の性格です。泉という人は人間としての基本的誠実さに欠けているのではないでしょうか。

ウソも方便とはいいますが、自分の利益の為にウソをつくのはよくありません。嘘つきは泥棒の始まりです。善良な小市民としては失格です。泉のような人がお金に困ると最近話題の女詐欺師のようになるのではないでしょうか。泉は悪人です(きっぱり)。したがって、路上生活者にはなれません。路上生活者というのは気の弱い善人がなるものです。悪人は詐欺や盗みを働いてリッチな暮らしをするか、捕まって刑務所に入るかどちらかです。

もちろん、嘘をつかない人間はいないというのも本当です。でも、普通の人なら、咄嗟にウソをついてしまった後で、後悔とか、自責の念とか、自己嫌悪とかがやってくるのではないでしょうか。まあ、小説の主人公が善人でなれければいけないという決まりはありませんけどね。

さて、天坊八重子です。この先生も相当口が悪いです。ガーベラの店主といい勝負です。

 「『ガーベラ』よ。やる気なんか、まったくないからね、あの店。小汚いったら、ありゃあしない。学生の下宿のほうがまだまし、ってもんだ」

普通に汚いというよりも、小汚いとか薄汚いといったほうが言葉の語感としてなぜかいっそう汚ならしい感じになるから不思議です。冷静に意味を考えるとそうではないんですけどね。

天坊先生とガーベラの店主は、仲が悪くて本気で相手の悪口を言っているのか、それとも口は悪いけど本当は仲がいいのか、まだよくわかりません。今のところ、泉を相手にお互いに陰で悪口を言い合っているかたちになっています。

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