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2009年12月 3日 (木)

小池真理子の「無花果の森」を読む・第20回(12/2)

やっと見つけた軽食喫茶で、泉はアイスコーヒーとナポリタンを注文しました。無愛想で無口な初老の店主は、かったるそうにナポリタンを作っています。まるで客が来たのが迷惑みたいです。

店内には有線放送から懐かしい映画音楽が流れていました。泉はナポリタンが出来上がるのを待ちながら、結婚前の吉彦のことを思い出していました。泉は自称「何の取柄もない、地味な女」でした。にもかかわらず吉彦に愛されてしまいました。おそらく吉彦には泉が落ち着いていて慎み深い清楚な女性に見えたのだと思います。

 彼は他人に、自分の私生活を話したがらなかったが、彼がまだ監督になる前、二十代のころ、一度離婚していることだけは公になっていた。幼い娘が一人いたが、妻が引き取ったという話だった。離婚の理由については誰も知らなかった。

泉が吉彦といつ結婚したのかは不明です。泉が思い出している結婚前の出来事というのもいつごろのことなのかよくわかりません。とりあえず勝手に決めておきます。十数年前、泉がまだ二十代で吉彦が三十代のころの出来事を思い出していることにします。今では吉彦の前妻も四十代だし、その娘はすでに成人しています。

泉はおそらく二十代で吉彦と結婚しました。結婚後すぐに吉彦のDVが始まりました。吉彦がもともと病的なDV男だったのか、それともなにか特定の原因があってDVが始まったのか、今のところそのきっかけについては不明です。泉は吉彦の我がままと暴力に長年の間耐え続けてきました。しかし、とうとう耐えきれなくなって一昨日の午後衝動的に家出をしてしまいました……今のところはこう考えておきます。あくまでも推測です。間違っているかもしれません。

泉は夫の吉彦に言い知れぬ恐怖心を抱いています。物理的な暴力に対する恐怖なのか、吉彦の人格に対する恐怖なのか、肉親や友人知人との関係をすべて断ち切ってでも身を隠してしまいたいと考えるほど吉彦を恐れています。眠れば悪夢にうなされ、見知らぬ街の見知らぬ店にいても、ふとドアを開けて吉彦が入ってくるのではないかと、恐怖心がもたらす妄想に怯えています(たぶん)。

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