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2009年12月 4日 (金)

小池真理子の「無花果の森」を読む・第21回(12/3)

 妻が男を作ったことが離婚の原因になったこと、相手の男というのが、新谷が学生時代から、唯一、深くつきあってきた親友と呼べる人間だったことを、彼は泉にだけ打ち明けた。

ここでまた吉彦はウソをついています。ウソという言い方に語弊があれば、事実を自分に都合よく解釈しています。吉彦が「相手の男」を親友だと思っていたとしても、「相手の男」は吉彦に憎しみや敵意をいだいていたかもしれません。「深くつきあってきた」というのも一方的に吉彦がそのつもりになっていただけかもしれません。

前妻が浮気をしてしまったのは、自分を客観的にみることができない吉彦自身にその原因があったのではないでしょうか。被害者ヅラをして自分よりも十歳も年下の泉に同情してもらおうというさもしい魂胆が気に入りません。実際はどちらが被害者なんだかわかったものではありませんよ。

「俺は女房を愛していた。俺らしくもない言い方に聞こえるかもしれないけどね。俺なりのやり方で愛していた」

吉彦の言う「愛していた」というのは、一方的な支配欲を満足させることです。本当の意味での愛情ではありません。「俺なりのやり方」というのが曲者です。ありがた迷惑な「愛し方」をしていたのではないでしょうか。

「前歯がへし折れるほど、ぼこぼこにしてやったけどな。殺そうとは思わなかった」

そんなふうだから女房に逃げられたのです。独りよがりな吉彦には相手を思いやるという気持がありません。自分を中心に世界が回っていると思っています。気に入らなければすぐ暴力です。吉彦は一度でも自分はダメな人間だと反省したことがあるのでしょうか。もううんざりです。わたしが女だったら吉彦のような男は敬して遠ざけます。決して近寄りたくありません。泉がなぜこんな男と結婚する気になったのか不可解です。くだらないパフォーマンス野郎にしか思えませんけどね。

だいたい「前歯がへし折れるほど、ぼこぼこにしてやった」などというのはたいして傷ついていない証拠です。気を取り直して、今度は浮気されないように地味な女(つまり泉)を再婚相手に選んだのでしょうか……。

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