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2009年12月 5日 (土)

小池真理子の「無花果の森」を読む・第22回(12/4)

「覚悟を決めたら奪うだろう。それが男だ。だから、女房を奪った相手の男のことを憎んだことはない。俺が憎んで殺したいと思ったのは女房のほうだ」

よくいうよ。相手の男を「前歯がへし折れるほど、ぼこぼこにしてやった」というのはウソなんですか。言っていることとやっていることがめちゃくちゃです。もし、相手が親友の女房だったら、絶対に手を出さないと覚悟を決めるのが普通です。そうはならなかったのは、相手の男にとって、吉彦が親友として眼中になかったのか、あるいは吉彦の女房が見ていられないほど不幸な境遇にあったのかどちらかです。

思うに、実際は女房のほうが先に、別れられなければ吉彦を殺したいと思い詰めていたのではなかろうか……。

「頼むから尊敬してます、なんて言ってくれるなよ。死にたくなるから」

いい気なものです。吉彦が映画監督としてどう優れているのか、人間としてどう魅力的なのか、読者を納得させる描写がこの小説にはありません。したがって吉彦には映画監督というレッテルがあるだけです。そのために、泉が吉彦を尊敬しているといっても、映画監督というレッテルを尊敬しているようにしか読者には伝わってきません。「映画監督?まあステキ!」ということで納得できない読者はこの小説を読むのが辛くなってきます。

次のようなセリフに接すると、泉が単なるバカ女のように思えてきます。

「私は監督と、ずっとこうしてお酒を飲みながら話してきました。とても親しくさせていただいて、すごく嬉しいです。夢みたいです」

「話してきました」というよりも、聞き役に徹して、一方的な暴論、愚論を聞かされていたいたというのが本当のところだったのではないでしょうか。そういう人(=異論を唱えない人)でないと吉彦の相手は務まりません。

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