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2010年3月 7日 (日)

小池真理子の「無花果の森」第93回(3/6)まで

日経新聞夕刊に連載されている「無花果の森」という小説は、新谷泉という三十八歳の女性が映画監督である夫の暴力に耐えかねて失踪してしまったというお話です。東京駅から新幹線に乗ってあてもなく西へ向った泉は、岐阜大崖という地方都市に辿り着きました。今は大崖の天坊八重子という老画家(八十歳ぐらい)のところで住み込みの家政婦として働いています。

「無花果の森」には泉の回想シーンが何度も何度も出てきます。この回想シーンには、映画監督である夫の新谷吉彦、泉と親しかったカメラマンの曾我一郎、吉彦のDVに関心を持っている週刊誌記者の塚本鉄治などが登場します。これらの男たちは今のところ回想シーンの住人で、泉の回想シーンにしか出てきていません。

もしもです。これらの男たちが現実には存在しない泉の妄想が生み出した架空の人物だったとしたら、この小説は鬼気迫る世にも恐ろしいホラー小説ということになります。

精神を病んでいる新谷泉が自分は悲劇のヒロインであると思い込んで、妄想と現実の区別がつかなくなったまま失踪してしまったのです。泉は、DVの事実などないのに、自傷行為による身体の傷をDVによるものと思い込んでいます。夫が有名な映画監督というのも泉の妄想であって事実ではありません。泉は現実から逃げ出して、ありもしないDVへの不安や恐怖に怯えながら、見知らぬ地方都市に身を潜めて暮らしているのです。どうです?怖いでしょ?でも、実際はそういうホラー小説(?)ではありません(たぶん)。
  

閑話休題(こういうときに使うのかな?)。

泉が家政婦として働き初めて2週間が過ぎた六月最後の水曜日のことです。その日は、いつも不機嫌な天坊八重子がいつになく上機嫌でした。不思議なこともあるものです。どうしたのでしょうか。

天坊八重子は古い知り合いがやっている「飲み屋」に久しぶりに顔を出そうと考えていました。八重子が上機嫌なのは、犬が散歩の前になるとはしゃぐのと若干似ています。めったに外出しない天坊八重子ですが、久しぶりのお出かけでウキウキしていたのだと思います。

八重子はこの飲み屋に泉も連れて行くと言い出しました。泉がよく働くので「ご褒美」のつもりなのかもしれません。泉としてはありがた迷惑です。でも「遠慮しときます」とはちょっといいにくいです。それに、タクシーを使うとはいえ、足腰が弱っている天坊八重子をひとりで行かせるのは心配でもあります。

以前、八重子から「あんた、なんで水商売に行かなかったの」と訊かれたとき、泉は「(あたしは)水商売には全然向かない」と答えていました。でも、「やりたくない」とか「イヤだ」とは言っていませんでした。八重子の質問にたいする泉の答えは、「向いていればやってもいい」と受け取られかねないところがありました。

天坊八重子は、薄暗い化け物屋敷のようだというその「飲み屋」で、泉を働かせようと考えているのかもしれません。今のところ「飲み屋」というだけで、そのお店が居酒屋なのかスナックなのかはっきりしません。もしかしたらいかがわしいお店なのかもしれません。

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