« 脚本・坂元裕二の「Mother」・第2話を観る | トップページ | NHKの朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」は面白いです »

2010年4月26日 (月)

小池真理子の「無花果の森」第134回(4/24)まで

今、テレビで、「Mother」(日本テレビ毎週水曜22時~)という母性をテーマとした異色のドラマが放送されています。このドラマで、ヒロインの鈴原奈緒役を演じているのは松雪泰子です。こういう女優さんがいたことをこのドラマで初めて知りました。

鈴原奈緒(松雪泰子)は、その存在が浮世離れしていて現実感が希薄です。めったに笑うことがなく、いつも眉間に皺を寄せています。しゃべるときは声を殺して小声でボソボソとしゃべります。その陰々滅々とした雰囲気はまるで幽霊のようです。「Mother」の松雪泰子を見ていると、どうしても「無花果の森」の世捨て人・新谷泉を連想してしまいます。

 伸びかけている髪の毛は、シャンプーしてから首の後ろで一つに結んだ。
 だが、長さが足りず、うまくまとめきれなくて、頬の脇に遊び毛が出てしまった。

4月14日に放送された第1話では、鈴原奈緒(松雪泰子)がまさにこのヘアスタイルをしていました。最近は(個人的に)新谷泉=松雪泰子ということで完全にイメージが重なってしまっています。

  

さて、「無花果の森」です。雨が降りしきる日曜日の午後、鉄治の部屋では依然として鉄治と泉の話し合いが続いています。

 「実は、ある取材をしていて……罪を着せられました」
 「罪?」
 「今では、どんな背景があって、そうなったのか、そのからくりもわかっているんです。でも、迂闊でした。あらかじめその危険性があることを承知していたら、こちらも深入りせずにいられたんですが。馬鹿な目にあった、と思っています。半分は自業自得かもしれない」

鉄治の話は何だか要領を得ません。これ以上話すと泉に危害が及ぶらしいです。

 「ですから」と彼は言った。「これ以上のことをあなたは聞かないほうがいい」
 「知りたいじゃないですか。私が一番知りたいのはそのことです。そのためにここに来たのに」

ここは泉の言い分が正しいです。鉄治はわざわざ泉を呼び出しておいて、なぜ自分がこの街に潜伏しているのかについて、具体的なことは何も話さないというのは変です。泉がブーたれるのももっともです。

ただ、本当のことは言えないし嘘もつきたくないというとき、人は時として黙らざるをえないことがあります。

嘘でもいいからそれらしい話をでっち上げて深刻ぶって話をするという手もなくはないです。しかし、そういうことができないのが誠実な人間の性(さが)というものです。塚本鉄治は雑誌記者としては珍しく相当に真面目な人なのだと思います。

 「……塚本さんを追っていたのは警察なの?」
 それについて、鉄治は何も答えなかった。そういうことには答えられない、だから質問してくれるな、とも言わなかった。

「警察なの?」と聞かれて、鉄治が返答に窮したのは、警察にも追われているし、同時に警察よりも怖い暴力団のような組織にも追われていたからかも知れません。暴力団が相手だと命の危険もあります。

ふたりの会話は、鉄治をあれこれと質問攻めにしている泉のほうがまるで取材記者のようです。泉としては鉄治がモジモジして話さないんだから聞くしかありません。鉄治に関して、事前に読者に与えられている情報は、「警察幹部が絡む事件で無実の罪を着せられ、この寂れた土地に潜伏している」ということだけです。

泉は、「何もかも彼(鉄治)にぶちまけて抑え込んでいた感情を吐露してしまいたい衝動にかられ」ながらも、今はまだその時ではないと考えて自制しています。鉄治も泉との距離(心理的な)を測りながら、何をどこまで話せばいいのか迷っているのだと思います。

|

« 脚本・坂元裕二の「Mother」・第2話を観る | トップページ | NHKの朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」は面白いです »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/122218/34392811

この記事へのトラックバック一覧です: 小池真理子の「無花果の森」第134回(4/24)まで:

« 脚本・坂元裕二の「Mother」・第2話を観る | トップページ | NHKの朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」は面白いです »