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2010年6月 1日 (火)

小池真理子の「無花果の森」・第161回(5/31)まで

日経新聞夕刊に連載されている小池真理子の「無花果の森」は、登場人物が少ないし物語の展開もゆったりしています。いわゆる「私」が主人公の小説ではありませんが、印象としては「私」の手記を読んでいるような感じです。

ちょっと長くなりますが、この小説の第125回(4/14)からの流れを復習しておきます。

第125回
新谷泉(38)は廃墟のような塚本鉄治(42)のマンションを訪れた。鉄治は「お入りください。傘はそのへんに。あ、靴は脱がなくてもいいですから」と言った。

第126回
鉄治はこのマンションをゲイバーの経営者であるサクラ(60)から借りていた。鉄治は「(サクラが)ここに来る心配はない」と泉に言った。サクラは別のところに住んでいた。

第127回
泉は鉄治とテーブルを挟んで斜向いに座った。鉄治は何から話していいかわからなかった。泉は自分の失踪についての報道がどうなっているのかを鉄治に訊いた。

第128回
泉が映画監督である夫の暴力を恐れて失踪したことは、すでにマスコミで話題になっていた。鉄治は、「(マスコミは)新谷監督のことを追いまわしている感じです」と言った。

第129回
泉の夫である新谷監督(48)から詳しい話を聞けないせいで、泉が自殺目的で失踪したとか、重度の鬱病を患っていたとか、根も葉もない憶測が流れているらしかった。

第130回
泉は、この大崖の街に辿り着いて画家の天坊八重子(80)のところで家政婦をするようになったこれまでの経緯(いきさつ)を鉄治に話した。

第131回
鉄治は泉よりも早く5月末に大崖の街に来ていた。二人が同じ街に辿り着いて、しかもゲイバーの『ブルー・ベルベット』でバッタリ出会ったのはまったくの偶然だった。

第132回
雑誌記者の鉄治は、「ある取材をしていて……罪をきせられたました」と言った。それがこの街に潜伏している理由だった。鉄治はそれ以上具体的なことは話したがらなかった。

第133回
泉は詳しい事情を知りたがった。しかし、知りすぎると泉にも危害が及ぶ恐れがあった。鉄治はどうしてもそれ以上は話そうとしなかった。

第134回
鉄治はサクラと出合って『ブルー・ベルベット』で働くようになるまでの経緯を語った。「事件」とは直接関係のない話だった。

第135回
画家の天坊八重子がワケアリと知りながら泉を家政婦として雇ってくれたように、鉄治もワケアリと知りながらおかまのサクラに雇ってもらっていた。

第136回
泉は鉄治に関して何の情報も持っていなかった。鉄治は泉と会って「お互いの事情をお互いに他言はしない」という固い約束をしておきたかった。

第137回
改めて見ると、鉄治は整った面差しをした男だった(塚本鉄治のイメージとしては高橋克典がピッタリです)。

第138回
鉄治は「この街(大崖)の名前は、あんまり今の情況にぴったりで、笑ってしまいます……よりによって、こんな名前の街に隠れることになったなんて」と言った。

第139回
これからどうするかについて、鉄治は「まだ決めていません」と言った。泉も「今は(天坊八重子のところで)家政婦を続けていくこと以外、考えていません」と言った。

第140回
四時になろうとしていた。「そろそろ、失礼しなくちゃ」と泉は言った。泉は鉄治に「友情に似たもの」を覚えていた。

第141回
泉は来週の日曜日もここで鉄治と会う約束をした。鉄治の誘いだった。泉は、屈託のない笑みが自分の口もとに浮かぶのを感じた。

第142回
鉄治の部屋から帰ってしばらくの間、泉は放心していた。泉にとって鉄治は、この世で唯一、親しくかかわり、真実を語ることのできる相手と言えた。

第143回
再び鉄治に会いに行く日曜日がやってきた。朝方、珍しく何日かぶりの晴れ間が出たが、昼近くになると、再び小雨がぱらつき始めた。

第144回
一時過ぎには長屋を出発する必要があったが、まだ時間がたっぷりあった。泉は、失踪する前の数日間のことが、順を追うように思い出されていた。

第145回
泉は新谷吉彦という人間について、日頃考えていたことを言いたい放題にまくしたてた。「うるせえんだよ、バイタ」と吉彦は言った。あとは殴る蹴るの暴行であった。

第146回
それまでは謂れのない暴力に泣き、嗚咽し、あやまる必要もないのにあやまり続け、嵐が過ぎ去るのを待っているだけだったが、その時の泉は違った。

第147回
泉は、逃げよう、と思った。新谷はそれ以上、泉に手出しはしてこなかった。外出したのである。

第148回
その晩、新谷は帰って来なかった。翌日の昼ころ、事務所の若い女から電話があった。女は「(新谷の着替えを)私がご自宅まで取りに行くようにと言われました」と言った。

第149回
事務所の女の話によれば、新谷は今日と明日、沖縄で二泊して、明後日に羽田着の予定だった。しばらく新谷は帰ってこない。泉が家を出るには絶好のチャンスだった。

第150回
泉は事務所の女に新谷の着替えを入れたボストンバッグを手渡した。女が去ってから、泉は家の中の整理を始めた。家出の準備である。

第151回
泉は新谷が戻ってくる前に家を出ておかなければならなかった。逃げるのだ、と思った。逃げて逃げて、この世の果てまで逃げて、別の人生を生きるのだ、と思った。
  

第152回
泉は父のことを思い出していた。父は予備校の講師をしていた。家庭では母と二人の娘に暴言と暴力を繰り返していた。

第153回 
泉が高校に入学した年の晩秋にその父が自殺した。福島の山間部にある村はずれの廃墟で、梁にロープを巻きつけて縊れていた。

第154回 
父は自殺することでしか自らに決着をつけることができなかったのではないか、と泉は考えていた。

第155回
泉はなぜ忌まわしい過去を次から次へと思い出すのだろうか。まるで、鉄治に過去を打ち明けるための心の準備をしているかのようであった。

第156回
泉は父と夫の吉彦を比較した。父と夫では精神性に大きな違いがあった。父の心に吹いていたはのは虚無の風だが、吉彦の心には肥大化した自尊心の砂嵐が吹いていた。

  
第157回
外は雨だった。泉は先週同様傘をさして歩いていくことにした。近くのコンビニで手土産を買って鉄治のマンションに向った。

第158回
泉は歩きながら心配になってきた。鉄治がいなくなっているのではないかと不吉な考えが頭をよぎった。

第159回
泉は鉄治のマンションに着いた。ドアを三回ノックした。鍵を外す金属音がして、ドアが開けられた。鉄治はいた。泉の心配は杞憂だった。

第160回
一週間前と同じ部屋の同じテーブルで、泉と鉄治はまた斜向かいに座った。一週間前の続きが始まった。

第161回
泉と鉄治は緑茶を飲みながら四方山話を始めた。泉がよく買い物をするスーパーが話題になった。そのスーパーにはスポーツ紙まで置いてある雑誌コーナーがあった。

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