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2010年6月29日 (火)

脚本・坂元裕二の「Mother」が堂々の第1位!!

「2010年の春ドラマのうち、最終的に満足度が一番高かったドラマは?」(Yahoo!ニュースの「番付」)というアンケート調査で、日本テレビ系の「Mother」がダントツの第1位になりました。

満足度ベスト5は以下の通りです。

1. 14805 Mother
2.  7905 新参者
3.  7706 月の恋人~Moon Lovers~
4.  6761 怪物くん
5.  5034 臨場

詳しくは → http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/quiz/quizresults.php?poll_id=5554&wv=1&typeFlag=2

   

「Mother」はそれほど視聴率の高いドラマではありませんでしたが、毎週楽しみにしていた熱心な視聴者が多かったのだと思います。
  

近年のテレビドラマの傾向として、原作もののドラマの増加が言われています。その結果として脚本家の独創性の衰退という「異変」が指摘されています(6月12日付日経新聞)。なるほど満足度ベスト5のうち「Mother」以外はすべて原作ものです。
  
 マンガや小説が原作のテレビドラマが増える
    ↓
 脚本家は独創性を発揮しにくくなる
    ↓
 才能ある人が脚本家になろうとしなくなる
    ↓
 脚本家全体のレベルが低下する
    ↓
 ますます原作もののテレビドラマが増える

日経新聞の記事によれば、テレビドラマの脚本界は近年こうした悪循環に陥っているそうです。そして、とうとう2009年は、(優れたテレビドラマの脚本家に贈られる)向田邦子賞の受賞者がいなくなりました。「該当作なし」は、向田邦子賞創設(1982年)以来初めてのことです。

最近十年間の向田邦子賞受賞作品

第19回(2000年) - 大森寿美男 『泥棒家族』(日本テレビ)、『トトの世界』(NHK)
第20回(2001年) - 岡田惠和 『ちゅらさん』(NHK)
第21回(2002年) - 倉本聰 『北の国から2002遺言』(フジテレビ)
第22回(2003年) - 木皿泉 『すいか』(日本テレビ)
第23回(2004年) - 大森美香 『不機嫌なジーン』(フジテレビ)
第24回(2005年) - 遊川和彦 『女王の教室』(日本テレビ)
第25回(2006年) - 井上由美子 『マチベン』(NHK)
第26回(2007年) - 坂元裕二 『わたしたちの教科書』(フジテレビ)
第27回(2008年) - 古沢良太 『ゴンゾウ 伝説の刑事』(テレビ朝日)
第28回(2009年) - 該当作なし

詳しくは → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%91%E7%94%B0%E9%82%A6%E5%AD%90%E8%B3%9E

   

今のテレビドラマ業界(?)は、「脚本家はつらいよ」の時代なのかもしれません。

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2010年6月26日 (土)

小池真理子の「無花果の森」・第184回(6/26)まで

最近こんな「事件」がありました。

成田空港に到着した際、覚せい剤1㌔弱を持ち込んだとして、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)と関税法違反の罪に問われていた男(59)の裁判で、6月22日に千葉地裁が無罪の判決を言い渡しました。国民が審理に参加する裁判員裁判で、被告が全面無罪となったのはこれが初めてだそうです。

争われたのは、チョコレート缶の中に入っていた覚せい剤について、その存在を被告が知っていたかどうかでした。

被告本人が知らなかったと主張して容疑を否認していたため、検察側は覚せい剤の存在を被告が知っていたとする決定的な証拠を示さなくてはなりませんでした。しかし、どうもそれがうまくいかなかったみたいです。判決理由で裁判長は、「被告が、違法薬物が隠されていることを知っていたとまでは認められない」と指摘しました。

検察側は「懲役12年、罰金600万円」を求刑していましたが、検察が起訴したということは状況証拠は限りなくクロに近かったはずです。有罪か無罪かは紙一重だったと思います。裁判員制度が始まる前であれば、ひょっとしたら有罪になっていたかもしれません。

   

さて、「無花果の森」の塚本鉄治も覚せい剤取締法違反(覚せい剤の不法所持)であやうく現行犯逮捕されるところでした。もし、逃げないで素直に捕まっていたらどうなっていたでしょうか。

特に前科もなく、日ごろから真面目な生活を送っている善良な市民であれば、「話せば分かる」という選択肢もあったかもしれません。しかし、鉄治は職業柄裏社会とのつながりがまったくなかったわけではありません。鉄治のことを兄貴といって慕っていた元暴力団員もいました。

鉄治の場合、職業柄いざ疑われてしまうとその疑いを晴らすのは至難の業です。それに、もし、暴力団と警察が裏でツルんでいて、すでに鉄治を罠にハメるシナリオが出来上がっていたとしたら、その罠をのがれるのはほとんど不可能です。逃げて正解だったかもしれません。

ところで、もし鉄治が捕まって起訴されたとしたら、量刑はどれくらいになったでしょうか。覚せい剤取締法違反でも単なる所持(または使用)なら懲役1~2年程度で執行猶予がつく例がほとんどです。

ただ、営利目的の輸入には日本でも殺人罪並みの重い刑罰が科せられています。死刑こそないものの、押収した覚せい剤が800㎏などというとんでもない事件では、求刑、判決ともに無期懲役(プラス罰金など)という判例もありす。
  

覚せい剤取締法違反などの量刑例

 → http://www.geocities.jp/masakari5910/column_drug_kei.html

  

薬物の取締りに関する中国の刑法は日本よりもはるかに厳しく、「覚せい剤50グラム以上の密輸は懲役15年か無期懲役、または死刑」です。

冤罪が起きる可能性が大きい覚せい剤の取締りで死刑まであるというのはどうかと思いますが、中国社会では「人生に冤罪は付きもの。冤罪に巻き込まれたら交通事故だと思って諦めなさい」ということになっているのかもしれません。
 

さて、麻布署の刑事を振り切った鉄治は、タクシーを拾って歌舞伎町に逃げ込みました。いざ逃げるとなると逃走に必要なのはなによりも現金です。鉄治はコンビニのATMでありったけの現金をおろしました。給料日前だったため、残高はわずか(数万円程度?)しかありませんでした。

 その晩は、それ以上動きまわるのは危険だと判断し、歌舞伎町の個室ビデオ店で過ごした。どうすれば、自分の無実を明らかにし、三浜作次郎を告発してやることができるだろうか、と考えをめぐらせたが、頭が混乱しすぎていて、名案は何も思い浮かばなかった。

第139回(5/1)で鉄治はこんなことを言っていました。

 「僕の中である方法が編み出せれば」と彼はつぶやくように言った。「こんなふうに隠れている必要はなくなるんです。寝ても覚めても、いつもそのことを考えています。

 「方法?」

 「全容をつかんでいるのは僕だけなので、その方法を編み出せるのも僕しかいない。そういう意味です。……ああ、こんなふうに言っても、禅問答みたいで、何もわからないでしょうね。申し訳ない」

ここまで詳しい話を聞いても「ある方法」というのが何のことなのかよくわかりません。依然として禅問答みたいです。鉄治は何を考えているのでしょうか……。

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2010年6月24日 (木)

脚本・坂元裕二の「Mother」・最終話を観る

「Mother」もついに最終回です。最終回は望月葉菜(田中裕子)がいつ倒れるのかとドキドキしながら観ていました。今この瞬間にも倒れるのではないかと気が気ではありませんでした。

葉菜はあと二、三日の命です。奈緒(松雪泰子)は葉菜を退院させて、葉菜との残り少ない時間を親子水入らずで過ごすことにしました。病院のベッドで看取るよりもスミレ理髪店の畳の上で看取りたかったのだと思います。

そのスミレ理髪店に、突然、室蘭から継美(芦田愛菜)がやって来ました。無断で養護施設を抜け出して来たのです。たったひとりで、はるばる室蘭から東京まで、よく迷子にならなかったものです。何か目に見えない力が継美を東京のスミレ理髪店に呼び寄せたのかもしれません。
  

余命いくばくもない葉菜には墓場まで持っていかなくてはならない秘密がありました。

  30年前の殺人事件と放火事件には娘の奈緒が絡んでいる

奈緒にはそのときの記憶が失われています。その後、忘れていたおぞましい記憶が蘇ったかどうかわかりません。でも雑誌記者の藤吉駿輔(山本耕史)は取材によって真相に気づいただろうと思います。もっとも葉菜は口が裂けても本当のことはいいません。ただにっこりと笑っているだけです。

葉菜は、奈緒と継美の三人で神社の朝市に行こうと約束した日の朝、目覚めることなく息を引き取っていました。

奈緒は、生みの母の葉菜を亡くし、継美も室蘭の養護施設に帰してしまい、たったひとり残されてしまいました。でも、鈴原家の藤子(高畑淳子)や二人の妹が奈緒を暖かく迎えてくれます。三十五歳という人生の折り返し地点で、奈緒にとって、葉菜や継美と過ごした日々の思い出は貴重な心の支えです。葉菜のあの言葉を奈緒に贈っておきたいと思います。

 1日あればいいの。
 
 人生には、1日あれば……
 
 大事な大事な1日があれば……
 

12年の歳月が流れました。室蘭の施設に戻った継美が、その後どんな人生を歩んだかは不明です。

二十歳になった継美は、思い出の喫茶店で奈緒と再会していました。奈緒は、生みの親でも育ての親でもないのに、遠い日の記憶によって継美にとってはれっきとした母親です。再会したふたりの手元にはあの「すきなものノート」が置かれていました。ノートには12年前に次の1ページが書き加えられていました。

  うっかりさん

望月葉菜……オヤジギャグが得意だった継美のおばあちゃんです。このドラマの本当の主役は実はうっかりさんだったのではないかと思います。

さて、最終回ということで、鈴原家の次女・芽衣(酒井若菜)と三女・果歩(倉科カナ)のその後についても少し書いておきます。

次女の芽衣は、葉菜が亡くなったちょうどその日に長男を出産しました。フィアンセだった圭吾(音尾琢真)も無事に(?)戻ってきました。お坊っちゃんの圭吾にも芽衣のウソを見抜く程度の洞察力はありました。根はいい人だったようです。

三女の果歩は、ボーイフレンドの耕平(川村陽介)にこんなことを言っていました。

 「子どもは三人がいいかな。男の子と、女の子と……大きい子ども」

なんのことはない、耕平へのプロポーズでした。果歩ちゃんかわゆい。
 

世の中には真相を暴くことよりもそっと蓋をしておいたほうがいいこともあります。雑誌記者の藤吉駿輔は、印税で儲けようとしていたケチな根性に嫌気がさしたのか、ドキュメンタリーの原稿をゴミ箱に投げ捨ててしまいました。その後、駿輔が奈緒と結ばれたかどうかはわかりません。あるいはキューピット役に徹して、兄の健輔(田中実)と奈緒をゴールインさせるために尽力したかもしれません。まあ、立派なジャーナリストにはなれたのではないでしょうか。

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2010年6月22日 (火)

小池真理子の「無花果の森」・第179回(6/21)まで

「(事実かどうかはともかくとして)関係者の話によるとこうだ」と、関係者(?)が話した内容をそのまま紹介して、あとは憶測で話の内容を面白おかしく脚色してから、事実かどうかは読者の判断に委ねます、といったような記事が週刊誌には多いです。

しかし、鉄治は、きちんとした記事を書きたかったらしく、グラビアアイドルの水沢なつみから聞いた話の裏をしっかり取ろうとしました。暴力団との絡みもはっきりさせなくてはなりません。

水沢なつみの話を要約すると、「三浜プロ社長の三浜作次郎(63)とトップアイドルの大道ひな(26)はともに覚醒剤中毒でこのふたりには肉体関係がある」というものでした。

『週刊時代』の記者だった鉄治は、「立志伝を連載で書かせてもらいたい」と偽って、三浜作次郎に取材を申し込みました。

 「まず断られるだろうと覚悟していたんですが、意外にも引き受けてもらえた」

鉄治の隠された目的を三浜作次郎は察知していたかもしれません。海千山千の男です。無防備に近づいてくる鉄治を逆に利用してやろうと考えたとしても不思議はありません。
  

芸能プロダクションにも政府の官房機密費のような工作資金があるのかどうかわかりませんが、いざというときのために、マスコミ関係者は金と女と酒で懐柔しておくのが得策だと思います。できればひとりひとりの弱みを握っておいて、「変な記事を書くとあのことをバラすぞ」と、脅しが出来る状態にしておくと好都合です。もっとも全マスコミを抑え込むには、政府の官房機密費のような巨額の資金を使わないと無理かもしれません。

 

三浜作次郎は、鉄治の取材が終わってから、鉄治を銀座の(高級?)クラブにつれていきました。二十数年前、三十代半ば過ぎの若さで海で溺れて亡くなったという作次郎の弟に鉄治が似ているんだそうです。その後、三浜作次郎は頻繁に鉄治を飲み会やパーティなどに誘うようになりました。

 「高級カラオケクラブのVIPルームに誘われた時、そこに後から大道ひなが来て、紹介された……で、三浜は、僕の前で、その大道ひなとわざとらしく親しげにふるまうんです。そこに至って、何かが変だ、っていう不信感を持つべきだった。迂闊でした」

鉄治は長々と三浜作次郎や大道ひなとの出会いについて泉に話しました。でも、泉には依然として何が何だかよくわかりませんでした。

さらに鉄治の話は続きます。

今年(2009年)の5月23日のことです。しばらく(三ヶ月くらい)音沙汰のなかった水沢なつみから鉄治に電話がかかってきました。なつみは結婚することになったらしく、その報告の電話でした。相手はひとまわり年上の実業家です。なつみが(自称)二十三歳ですから相手は三十五歳くらいです。

 「だんな様になる人のこと、鉄治さんにもきちんと報告したいと思っていたの。急だけど、今夜、ちょっとだけ出て来られない?」
 結婚が決まったばかりという若い女から、明るい声で電話がかかってきて、正式な報告かたがた会いたいと言われ、警戒しなければならない理由は何もなかった。

鉄治は六本木にあるホテルのバーでなつみに会うことにしました。鉄治は何か新しい情報でも聞き出せるのではないかと内心期待していました。しかし、なつみからは「通俗的で退屈な、馬鹿げた結婚の報告話」を、うんざりするほど聞かされただけでした。

 結婚することになったという男について、ロマンス小説のヒロインのごとく褒めちぎっているなつみがどこか憐れにも思えた。結婚するという相手は、いかにも、なつみのような女が簡単になびきそうな男だった。

このときの鉄治は真面目で誠実なイメージとはちょっと違っています。何だかウラオモテがあるようで嫌な感じです。鉄治も「バカな女」には思いっきり冷淡なところがあるのでしょうか。悪人とまでは言いませんが、なつみに対してはかなり上から目線です。

「あたしの結婚にケチつけるつもり。焼いているんでしょ」などと非難されてもいいから、言うべきことはきちんと言っておいてあげたほうがいいのではないでしょうか。結婚詐欺かもしれないし……。

バーでは、同じような話を別の角度から繰り返すような退屈な会話が続きました。そのうちなつみが時計を気にするようになったのをしおに、鉄治はバーを出ることにしました。

鉄治が会計を済まそうとしたそのとき、故意か偶然か、鉄治のケータイに電話がかかってきました。

 ディスプレイには「非通知設定」とあった。何かいやな感じがした。
 「ちょっと待ってて」となつみに言い、鉄治はスツールから下りた。「すぐ戻るから。釣りが来たら受け取っておいて」
 バーから早足で出て、警戒心をこめた固い口調で「もしもし」といった。電話をかけてきたのは三浜作次郎だった。

三浜は鉄治に何か特別の用があったわけではなく、今日が死んだ弟の命日とかで、ふと鉄治の声が聞きたくなったんだそうです。三浜からの電話は唐突な感じで切れました。まるで鉄治に席を外させるためにかけてきたかのようです。

鉄治がバーに戻ると、なつみが鉄治のジャケットを抱えて佇んでいました。

 「はい、これ」と言って、釣り銭を彼(鉄治)に手渡してから、ジャケットを拡げ、着せてくれようとした。
 そんなことをする娘ではなかったので、不思議に思いながらも、彼(鉄治)は「ありがとう」と言い、着せかけられたジャケットの袖に腕を通した。

なんだかいかにも怪しいです。ジャケットのポケットに何か入れられていないか確かめたほうがいいです。とろい女だと思っていた水沢たなつみが実は三浜作次郎の回し者だったかもしれません。

 水沢なつみの人生訓
     ↓
有名になるためだったら、あたし、何でもやります。脱ぎます。寝ます。チクリます。裏切ります。寝返ります。二重スパイも任せてね。これがあたしの生きる道……でも、シャブはやらないの。

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2010年6月21日 (月)

溝端淳平・桜庭ななみ・南沢奈央

テレビドラマ「赤い糸」の卒業生は今どうしてるでしょうか?

敦史役だった溝端淳平は「赤い糸」以来、恐るべき強運(?)によって、まるで狙いすましたように「BOSS」、「ブザー・ビート」、「新参者」と高視聴率番組への出演ガ続きました。トーク番組などで見せる2枚目半的なキャラも非常に好感が持てます。あの頼りなさが母性本能を刺激するのかも知れません。淳平くんをペット(?)としてそばに置いておきたいと思っているお姉さん(?)も多いのではないでしょうか。いかにも年上の「大人のお姉さん」にかわいがられそうなタイプです。

溝端淳平 × マツコ・デラックス

 

沙良役だった桜庭ななみは、なっちゃんオレンジのCMで6代目のなっちゃんに選ばれました。映画「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」でも活躍しています。ローカルニュースとしては、厚木市防火安全協会のポスターにも登場していました。桜庭ななみのポートレートに「厚木市防火安全協会」とだけ書かれたポスターです。あの写真、まさか無断使用だったのではないでしょうね(冗談)。

なっちゃんオレンジのCM

   

「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」のインタビュー

 

芽衣役だった南沢奈央はどうしているのか最近あまり見かけません。学校が忙しいのでしょうか。あんまり露出が少ないと忘れられてしまいそうです。それでも、ハピコム(イオングループが展開するナショナルドラッグチェーン)のCMで久しぶりに南沢奈央を見ました。キャンペーンガールになったのでしょうか。近所のハックドラッグには、南沢奈央の等身大(?)のパネルがありました。盗難事件が起きそうです。

ハピコムのCM

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2010年6月19日 (土)

脚本・坂元裕二の「Mother」・怜南の父親は生きていた!!

「Mother」の感想を書くとき、勘違いや事実誤認がないかけっこう注意しているつもりなんですが、それでもうっかり見落としていることがよくあります。

第8話(6/2)では、道木仁美(尾野真千子)と怜南(芦田愛菜)の7年間の回想シーンが描かれていました。その第8話でドラマ開始から33分ぐらいのところです。レストランから幸せそうな4人の親子連れが出てくるシーンがありました。楽しいお食事会が終わって車で帰宅しようかというシーンです。小さな女の子を抱いて出てきた男は、なんと天国にいるはずの怜南の父親でした。

自分もそうですが、ぼんやりしていて気がつかなかった人も多かったのではないでしょうか。

怜南の父親は病死でも事故死でもなく生きていました。仁美は怜南が産まれてから何らかの事情で離婚したようです(または怜南はもともと私生児だった)。仁美が遺影や仏壇を用意していたのは、怜南に「パパは天国にいる」と思わせるための偽装工作だったようです。

  怜南の父親は生きている!!

この事実が、最終回の展開を占うヒントになるのではないかと……全然関係ないかもしれません。

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2010年6月17日 (木)

脚本・坂元裕二の「Mother」・第10話を観る

「Mother」の第10話はラストがあまりにも感動的だったために、もう最終回だと勘違いした人もいたのではないでしょうか。でも、まだ来週があります。本当の最終回は来週です。

  

鈴原奈緒(松雪泰子)は、道木怜南(芦田愛菜)を誘拐したことをあっさりと認めてしまいました。奈緒は誘拐罪で起訴されますが、奈緒にとって状況はそれほど悪くありません。

室蘭では、怜南を虐待していた浦上真人(綾野剛)だけでなく、母親の道木仁美(尾野真千子)も保護責任者遺棄罪で逮捕されました(「老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する」)。

   
雑誌記者の藤吉駿輔(山本耕史)によれば、「鈴原奈緒の罪は道木怜南に母性を抱いたこと(=母親になろうとしたこと)」です。そこで、奈緒が母親になろうとしたわけではなく虐待から怜南を救いたかっただけだと主張すれば、あるいは不起訴になる可能性もあったかもしれません。しかし、検察の描いているシナリオに逆らうと、逃亡する際に遭難の偽装工作をしたことを追及されたり、なぜ伊豆にいたのかなどを問い詰められたりして、悪質極まりない大犯罪をでっち上げられてしまう恐れもあります。素直に罪を認めておとなしくしていれば、検察官だって人の子です。気の毒に思って余罪については見て見ぬふりをしてくれることもあろうかと思います。

奈緒が母性を抱いたことを否認しないでその罪を素直に認めてしまったことがかえって裁判では功を奏したかもしれません。判決は「懲役1年、執行猶予3年」という比較的軽いものでした。
  

奈緒は鈴原家でしばらくは謹慎です。奈緒の事件で、鈴原藤子(高畑淳子)は社長を退任、就活中の三女の果歩(倉科カナ)も内定取り消しです。でも、鈴原家は次女の芽衣(酒井若菜)も含めて、奈緒を暖かく迎えてくれました。

  「あなたを誇りに思います」

これが長女・奈緒に対する鈴原家の総意です。
   

  
奈緒の生みの親である望月葉菜(田中裕子)は、心労からか病気が再発して入院することになりました。見舞いに訪れた鈴原藤子は諦めないで治療することを葉菜に勧めましたが、葉菜は治療はしないで残りの人生を健やかに生きることをすでに選んでいました。

葉菜は奈緒と継美と三人で遊園地の観覧車に乗った思い出を藤子に話しました。

 1日あればいいの。

 人生には、1日あれば……

 大事な大事な1日があれば……

 もうそれで十分。

葉菜はすでに人生の最期を受け入れたようです。あとは奈緒に看取られて死んでいくだけです。欲をいえば、優しかった継美(怜南)ともお別れがしたいと思っているかもしれません。
  

 
さて、室蘭に連れ戻された道木怜南は、「道南白鳥園」という児童養護施設に引き取られました。怜南は施設の生活にもすっかり馴染んで元気一杯です。虐待のことも逃亡生活のこともすっかり忘れてしまったかのようです。

雑誌記者の藤吉駿輔は道南白鳥園を訪れて、怜南の元気な様子を隠し撮りします。怜南は駿輔に気づきました。隠し撮りされていることにも気づいたかもしれません。

怜南にとっての駿輔は、逃亡中の怜南を問い詰めてウソを暴こうとした怖いオジさんです。駿輔が全面的に奈緒の味方になっていることを怜南はまだ知りません。いつもそうなのか、それとも駿輔の目を意識したのか、その日の怜南は底抜けに明るく元気でした。
  

駿輔は養護施設で元気に生活している怜南の様子を撮影して奈緒に届けました。動画です。怜南の元気な様子を見て奈緒はどう思ったでしょうか。

自分がいなくても明るく楽しそうにしている怜南の姿を見るのは、母性に目覚めてしまった奈緒にとって相当辛かったと思います。奈緒は内心寂しそうにしている継美の姿を期待していたと思います……残念でした。
 
 
ところで、奈緒のケータイには、非通知設定の電話が何度も何度も何度も何度もかかってきていました。夜の9時を過ぎるとほとんど毎日です。いったい誰がかけていたのでしょうか。ある日、奈緒はその電話に出てしまいます。

電話の主はなんと継美(怜南)でした。やっとお母さん(奈緒)と話ができた継美は、施設での生活を楽しそうに話しました。新しい友だちのことや優しい先生のことや……でも、継美が本当に奈緒に伝えたかったことはそんなことではありませんでした。

 お母さん、いつむかえにるの? 継美、まってるよ。

継美は突然泣き出しました。継美はこっそり荷物をまとめて奈緒が迎えに来てくれるのを待っていたのです。

 お母さん、早くむかえにきて。 継美、まってるのに。

 お母さん、もう一回誘拐して!!

    

第10話はここまでです。来週はいよいよ最終回です。最終回は15分拡大スペシャルです。このドラマはどういう結末になるのかまったく予想が出来ません。焦らし作戦で視聴率を上げようと考えているのか、そりゃないだろうというくらい予告編が短かったです(ないのと同じ)。

続きは →  http://mugigicat.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/mother-06ba.html

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2010年6月14日 (月)

小池真理子の「無花果の森」・第172回(6/12)まで

カメラマンだった曾我一郎について鉄治はそれなりに知ってはいましたが、その後の消息まではわからなかったようです。

 「きっと、しっかりどこかで生きていますよ」

これが鉄治の答えでした。なんだかブッキラボーです。

 鉄治は手にしていたたばこを灰皿でもみ消すと、おもむろに言った。「ビールでも飲みませんか」
 「え?」
 「冷えているのがあります。よければ」

だから言わんこっちゃあないです。気を利かせて鉄治がビールを用意してくれていました。

   

鉄治は、なぜ逃亡して大崖の街に潜伏するようになったのかについて、「ある取材をしていて罪を着せられた」ということだけしか泉には話していません。泉がもっと詳しく知りたがってもそれ以上のことは話そうとしませんでした。

しかし、泉を呼び出しておいて、いつまでも本題を避けているわけにもいきません。泉だって夫・吉彦のDVについて、相手を信頼していなければ話せないような踏み込んだ告白(?)をしています。今度は鉄治が告白する番です。鉄治ようやく覚悟を決めたようです。

 「発端は去年の秋です」

ここで「去年の秋」というのは2008年の秋です。小説の中の現在は2009年7月です。連載が始まって半年以上が経過しているために何だかややこしくなっていますが、そういうことにしておきます。

鉄治は『週刊時代』の記者として芸能分野を担当していました。何を思ったのか、鉄治は「泉さん、大道ひな、って知っていますか」と、唐突に泉に聞いてきました。

大道ひな……何だかしょぼくれた名前です。まるで売れないお笑い芸人の名前みたいです。改名をしないと売れないのではなかろうかと思いきや、この大道ひなは、世間で「ひな現象」と呼ばれている社会現象を巻き起こすほどのカリスマ歌姫でした。

大道ひな(26)は小説上の架空の人物ですが、三十八歳の泉でも知っているくらいですから、宇多田ヒカルか浜崎あゆみクラスの大物歌手です。

その大道ひなと鉄治が寝たという話なら大事件です。しかし、そうではなかったです。鉄治が寝たのは水沢なつみ(23?)というほとんど無名のグラビアアイドルでした。芸能担当の記者は取材のために、ときにはそういうことも必要らしいです。因果な商売と考えるか役得と考えるかは微妙なところです。

鉄治から「グラドルと寝た」などという話を聞かされて泉はどう思ったでしょうか。

 悲しいような、残念なような気持にかられた。何故、この種の話をしている時に、そんな気持になってしまうのか、不思議だった。

いや、少しも不思議はありません。ごく自然な感情です。まあ、軽い嫉妬のようなものです。もっとも軽い嫉妬を感じたのは鉄治のほうが先だったかもしれません。泉が曾我一郎の話をしたときです。「曽我さんは確かにいい人で、大好きでしたけど、彼に恋愛感情を抱いたことは一度もないんです」などと泉が力説(?)したとき、鉄治はちょっと不愉快になったと思います。根拠もなく「怪しいものだ」と思ったかもしれません。

鉄治はグラドルの水沢なつみから芸能界の覚醒剤汚染の話を提供されました。水沢なつみによれば、カリスマ歌姫の大道ひなはシャブ中になっていて、彼女をシャブ中にしたのは大道ひなの所属事務所(三浜プロ)の社長、三浜作次郎(63)だというのです。

百戦錬磨の芸能記者なら、提供された情報がウソかホントかを、二、三の質問をすることによって、瞬時に見抜いてしまうと思います。ある意味で容疑者を追い詰めていく辣腕刑事(デカ)と同じです。鉄治は水沢なつみから提供された覚醒剤汚染の情報はかなり信憑性が高いと判断したようです。

 三浜プロが裏で暴力団とつながつていることが取り沙汰され、作次郎が暴力団組長の娘の結婚式に出席したことが、マスコミに大きく取り上げられて批判されていたのも、そのころである。

鉄治の頭の中では、「大道ひな」と「暴力団」と「三浜作次郎」が、「覚醒剤汚染」というキーワードでしっかりと結びつけられていたと思います。

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2010年6月10日 (木)

脚本・坂元裕二の「Mother」・第9話を観る

望月葉菜(田中裕子)は、奈緒(松雪泰子)と継美(=怜南・芦田愛菜)の新しい戸籍を手に入れるため、スミレ理髪店を売却してしまいます。戸籍の購入代金は580万円です。ある口座に580万円を振り込んでから、伊豆の市役所(町役場?)に行って戸籍謄本の申請をすると、新しい戸籍が手に入るらしいです。ひょっとすると詐欺かもしれません。でも、ここはもう信じるしかありません。

葉菜と奈緒と継美の三人は戸籍を手に入れるために家族旅行(?)も兼ねて泊りがけで伊豆にでかけることにしました。どうやら熱川温泉のようです。海がきれいです。何も知らない継美は大喜びです。しかし、奈緒の胸中は複雑でした。奈緒は、伊豆に来る前に、葉菜の主治医の珠美(市川実和子)から葉菜の病気について聞いていました。急性骨髄性白血病です。今度発作が起きたら命の危険があります。それでも「目の前に死を実感して、あんなに元気な人初めて見ました」と主治医の珠美があきれてしまうほど葉菜は元気でした。

伊豆の旅館で、葉菜が不吉な咳をしたりすると奈緒は気が気ではありません。自分が重い病気であることを隠して、奈緒と継美のために献身的に振舞おうとする葉菜に、奈緒は「どうしてこんなにまでして……」と訊かざるを得ませんでした。

葉菜は「それはあなたも知っているでしょ」としか答えません。奈緒が「罪滅ぼしですか?」と再度訊きます。この言葉にはまだ若干の悪意が込められていたかもしれません。分からないなら教えてあげます、とは言いませんでしたが、葉菜はゆっくりと次のように話し始めました。

 「違うわ。今が幸せだからよ。幸せって、誰かを大切に思えることでしょ。自分の命より大切なものがほかに出来る、こんな幸せなこと……ある?」

葉菜の言葉はまさしく奈緒の心境そのものだったと思います。この瞬間に奈緒は思わず初めて葉菜のことを、

 「おかあさん」

と呼んでしまいました。ざまあみろ。
  

東京では室蘭の警察が鈴原家にやって来ていました。継美=怜南の失踪を誘拐事件として捜査を始めたのです。奈緒のゆくえを探していました。

鈴原藤子(高畑淳子)も次女の芽衣(酒井若菜)も三女の果歩(倉科カナ)も、鈴原家は全員がもう覚悟を決めていました。奈緒の「養子離縁届」は提出しないまま破棄です。もし奈緒が誘拐犯として逮捕されたとしても、奈緒はあくまでも鈴原家の一員です。奈緒の逮捕によって鈴原家が世間的にどんな制裁を受けようとも全員が甘んじてそれを受けるつもりでいます。

芽衣は婚約者だった加山圭吾(音尾琢真)に「お腹の子、あなたの子じゃないの。ごめんなさい、ウソついていて」と、嘘をついて婚約指輪を返してしまいました。鈴原家は一家そろってなにか吹っ切れてしまったようです。
  

奈緒を捜して警察の捜査は伊豆にまで及んできました。奈緒は戸籍を手に入れる前に捕まってしまいます。手錠がなかったので、まだ犯人としてではなく参考人として任意同行を求められたのかも知れません。これが継美との永久(とわ)の別れとなってしまうのでしょうか。

来週は誘拐を認めた奈緒が(正式に?)逮捕されて、裁判の判決も下されるようです。

未成年者略取誘拐罪の量刑は3ヶ月以上7年以下の懲役です。未成年者略取誘拐罪は「親告罪」とされています。「親告罪」というのは、公訴提起に「告訴」を必要とする犯罪です。つまりこのドラマの場合、被害者である道木仁美(尾野真千子)が告訴しなければ、犯罪は成立しません。また、被誘拐者(つまり怜南=継美)の同意がある場合にどうなるかについては見解が分かれています。この同意がある場合について、ウィキバーシティの「自由に対する罪1」では、次のような解説がされていました。

被拐取者(略取と誘拐をあわせて拐取という)の同意がある場合についてどう考えるかについては見解が分かれており、未成年者の同意は違法性を阻却(≒帳消し)しないとする見解や、同意能力のある者の真摯な同意がある場合には違法性が阻却(≒帳消し)されるという見解などが主張されます。多くは、未成年者であるといっても、十分な判断能力が認められる年齢に達しているような場合には、その同意があれば未成年者略取・誘拐罪の成立を否定します。

詳しくは → http://ja.wikiversity.org/wiki/%E8%87%AA%E7%94%B1%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E7%BD%AA1

  

いくら「同意があれば」といっても小学生の同意では無効でしょうかね。

続きは → http://mugigicat.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/mother-70ee.html

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2010年6月 8日 (火)

水木しげる入門・アシスタントの話

これは1960年代後半の話です。水木さんの仕事は殺人的に忙しくなっていました。なにしろ毎日が締切日といった感じで、膨大な仕事量をこなすために水木さんはなんと7、8人ものアシスタントを雇っていたそうです。

ところがこのアシスタントというのがクセ者で、「面接して十秒以内に即決する」という採用のしかたをしていたため、力量のある即戦力のアシスタントばかりとは限りませんでした。

1.仕事中にけたたましく笑い出すアシスタント
2.仕事をしないでこっそり自分のマンガを描いているアシスタント
3.そもそも仕事場にやってこないアシスタント
4.態度がでかくて新入りのくせに雑用をしないアシスタント
5.絵を描くのをいやがるアシスタント
6.階段がうまく上れないアシスタント
7.つげ義春先生にもタメ口をきく生意気なアシスタント

などなど、とにかく奇人・変人が多かったそうです。こうした風変わりなアシスタントについて水木さんは「ねぼけ人生」(水木しげる著・ちくま文庫)の中で次のように述べています。

 奇人・変人も面白いが、アシスタントとして使うにはかなりつかれるのである。
 しかし、折にふれて彼らに聞いてみると、どうやら、社会に受け容れられない人が流れ流れて僕のアシスタントになりにきていることが多いようだった。だから、彼ら自身としては必死だったわけだ。
 その必死さが、かえって奇妙な行動になったのかもしれない。

なんという優しいお言葉でしょうか。でも、奇人・変人に優しくしているとオヤカタの身が持ちません。同じ奇人・変人でも、つげ義春のように仕事だけはきちんとやってくれる人もいました。寡作でめったに自分のマンガを描かないつげ義春も水木さんのところでは腱鞘炎になるほど仕事をしていたといいますから驚きです。でも、そういう人に限って放浪癖があったりします(フラッといなくなってしまう)。

ヤリ手のマンガ家の中には、アシスタントをうまく訓練して、チーフというのを育て、チーフに陣頭指揮をとらせているらしいが、我が水木プロは、オヤカタ自らが陣頭指揮をとらねばならない。オヤカタがアシスタントの何倍も仕事をして、その上、アシスタントがなまけたがるのを監視し、さらには、時には、アシスタントをおこらなければならない。おこるというのは楽しいことではないから、これがまたこたえるのである。

水木先生は、あまりの忙しさに、いっそ思いきって仕事をやめてしまおうかと考えたこともあったそうです。でも、また以前の貧乏生活に逆もどりすることを考えると、貧乏に追われるドキドキ生活の苦しさよりも締め切りに追われるドキドキ生活の苦しさのほうがまだマシだったようで、「今が人生の収穫の秋なのだ、今、後に退いてはいけないのだ、そう思って、必死にがんばった」そうです。

 

ところで、NHKの連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」には河合はるこ(南明奈)という少女マンガ家が出てきます。水木先生を尊敬していて、水木先生の仕事の手伝いをするシーンもありました。この河合はるこという少女マンガ家はだれがモデルなのかわかりませんが、実際に水木さんのところには女性のアシスタントがいたそうです。

貸本マンガ界の超売れっ子だった佐藤まさあきの自叙伝『「劇画の星」をめざして』(佐藤まさあき著・文芸春秋)に水木しげるの次のようなエピソードが紹介されています。昭和三十七、八年ころの話です。

 (佐藤プロダクションの)事務所で、あるとき水木はこんな会話を交わしていた。
「佐藤さん、こんど自分は女のアシスタントを一人入れたんですよ」と嬉しそうに云う。「ほう、そうですか」と私(佐藤まさあき)が答えると、「それがあなた、仕事をしているときにヒジとヒジがチョイとくっついたりして、これがなかなか楽しいもんです、イッヒッヒッ……」と、例の奇妙な笑い声をもらして水木は帰っていった。

このまま帰ってしまえば水木さんも軽い変態ということで終わったのですが、奇人・変人ぶりを発揮するのはここからです。何を考えたのか水木さんが戻ってきました。

 それからしばらく、十分もたったころだろうか、事務所の階段をドタドタと駆け上がってくる足音がする。
 誰かな?と思っていると、バターン!とドアが開いてそこに水木がハアハアとあえぎながら立っているのだ。
 何か忘れものでもしたのかな?と思っていると、くだんの水木が「ねっ、佐藤さん、女性はやっぱり美人に限りますよね、イッヒッヒッ……」と、また例の奇妙な笑い声をたてると、「じゃ、サイナラ!」と云うが早いか、再びドタドタと階段を駆け下りていってしまった。

どうやら「女性は美人に限る」というのを言い忘れたらしく、その一言を言うために急きょ引き返してきたようでした。

シャイな人にはよくあることですが、言いたいことが言い出せなくて、咄嗟の思いつきで変なことを言ってしまうことがあります。このときの水木さんも、本当は原稿料の前借(または借金の申し込み)がしたかったのかもしれません。

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2010年6月 7日 (月)

小池真理子の「無花果の森」・第166回(6/5)まで

 鉄治はたばこの煙を吐き出すと、泉に向かって静かに笑いかけた。「核心から逸らすような話し方ばかりするな、早くはっきり物を言え、って思っているんじゃないのかな」
 その通りだった。だが、泉は曖昧に微笑を返すにとどめた。

泉は自分から積極的に話をするよりも相手の話をじっくり聞くタイプの女性だと思います。いわゆる聞き上手です。ところが鉄治が相手だと、泉はどうでもいいような話題でもなぜか自分のほうからペラペラとしゃべってしまいます。鉄治がモジモジしていてあまり話したがらないからです。泉がしゃべらないと気まずい沈黙が流れてしまいそうです。

こういうときは、「あなたがしゃべらないならわたしもしゃべりません」ということにして、何を聞かれても「別に(沢尻エリカ調)」と言って天井でも眺めているといいんですけどね。

やがて鉄治は覚悟を決めたのか、ポツリポツリと自分自身のことを話し始めました。

鉄治は東京の大学を卒業して小さな新聞社に就職しました。タブロイド紙を出している新聞社です。日本のタブロイド紙といえば、「夕刊フジ」と「日刊ゲンダイ」があります。まあ、「無花果の森」はフィクションなので、「夕刊フジ」と「日刊ゲンダイ」を足して二で割ったような架空のタブロイド紙を出している架空の新聞社があったことにしておきます。「違法行為すれすれのめちゃくちゃな取材をして、めちゃくゃな記事を載せている」という点に関しては「夕刊フジ」と「日刊ゲンダイ」はいい勝負だと思います。

「芸能スキャンダルや風俗業界のシモネタばっかりを追いかけて、読者を煽るような言葉を並べた記事を書いて。嫌気がさしてくるのも早かったです」

鉄治は三十歳になった年にその新聞社を辞めてしまいました。その後、雑誌記者としてしばらくフリーで仕事をしてから、『週刊時代』の嘱託(契約社員)になったようです。

次に鉄治は、『週刊時代』の記者として新谷監督のDV疑惑を取材するようになった経緯について話し始めました。鉄治は新谷監督の件に関してはデスクに申し出て取材の一任を取り付けていたようです。

 「新谷監督本人に向けた、記者としての純粋な興味、っていうところかな。彼が公の場で口にする言葉から受ける印象なんかじゃなくて。もともと、あの人は人格的に何かが大きく欠落しているような気がしてましたから」

新谷監督に関する鉄治の見解は、泉にとって、ほとんど異論の余地がないほど正確でした。

 「本当は線が細い人なんでしょうね」と泉は言った。「臆病で自意識過剰で。私もいろいろ、彼については私なりに分析しました。でも、何であっても、私には耐えられなかったんです。ただ、ただ、恐ろしくて、逃げることしか考えられなくなっていましたから」

泉が話すまでもなく、泉が吉彦の暴力に耐えて長い間なぜ失踪を躊躇していたのかについて、泉の苦悩を鉄治は信じられないくらい正確に理解していました。この人はなんでこんなにも私の気持がわかってしまうのだろうと思ったとき、泉の鉄治に対する警戒心は一気に消え去ったと思います。

 眉をひそめて自分を見つめ、案じてくれる鉄治に、泉は忘れてしまっていたはずの、人間の優しさを感じた。それは胸が熱くなるほどの幸福な感覚の奔流となって、泉の中にあふれ返った。

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2010年6月 5日 (土)

新首相、郵政法案成立に全力

2010年6月4日(金)21時2分配信 共同通信

 菅直人新首相は4日夕、首相選出後初めての記者会見で、今国会で焦点となっている郵政改革法案に関し「成立を期すとした3党合意に沿って全力を挙げたい」と明言、米軍普天間飛行場移設問題に関しては「日米間の合意をふまえ、沖縄の負担軽減を重視し、腰を据えて取り組む」と強調した。政府や党の人事に関しては「官邸の一体性、内閣の一体性、党の全員参加を可能にする人事をつくる」と強調した。

郵政改革法案は次の3つのうちどれを目的とした法案でしょうか。

 1.JP労組の既得権を強化するための法案
 2.JP労組の既得権を温存するための法案
 3.JP労組の既得権を廃止するための法案

民主党は事業仕分けで傷口に絆創膏を貼るような無駄撲滅作戦(=パフォーマンス)を展開していながら、その一方でバケツの底に大穴を開けるような郵政改革法案を強行採決しようとしています。

郵政改革法案をどうするかは菅政権の試金石だと思います。廃案にしたからといって参院選で勝てるかどうかわかりませんが、参議院でも強行採決をすれば確実に負けると思います。国民が眉をひそめている民主党の体質が依然として変わっていないことが証明されることになるからです。

1.小沢一郎と鳩山由起夫の証人喚問には応じない(たぶん)。
2.米軍普天間飛行場移設問題は日米合意を踏襲する。
3.郵政改革法案はまともな審議もしないまま参院で強行採決する(たぶん)。
4.国会の良識ある運営よりも3党合意を優先する。
5.国民全体の利益よりも支持母体の利益を優先する。

以上が菅内閣の方針だとすれば鳩山内閣とどこが違うのでしょうか。まさしく表紙を換えただけではありませんか。

   選挙が終わればノーサイド

この選挙というのは参院選のことですね。

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2010年6月 3日 (木)

脚本・坂元裕二の「Mother」・第8話を観る

第8話では道木仁美(尾野真千子)と怜南(芦田愛菜)のこれまでの7年間が丁寧に描かれていました。

母性愛などといっても現実の子育てはそれほど楽ではありません。子どもは基本的にわがままだし、いつでもどこでも素直とは限りません。「こんなに我慢して苦労しているのに親の気持も知らないで!!」と、ついイライラして怒鳴ったりひっぱたいたり(頭はダメよ)したくなるのも人情というものです。子育てに疲れてストレスが溜まってくるとつい不吉なことを考えてしまったりもします。

事故死なのか病死なのか不明ですが、道木仁美の夫は仁美が怜南を産んでからまもなくして死んでしまいました。夫を亡くした仁美は女手ひとつで怜南を育てようとしますがうまくいきません。

やがて仁美に恋人が出来ます。浦上真人(綾野剛)です。有り体に言えば、仁美は母親であることよりも女であることを選んだといえます。恋人が出来て、その恋人に捨てられることを恐れて恋人が怜南を虐待しても見て見ぬふりをするようになります。それどころか仁美も虐待に加担するようになります。それでもなお仁美は怜南がまだ自分を愛していると思い込んでいます。

  

室蘭から東京にやって来た仁美は、スミレ理髪店の二階で怜南と対面します。そのとき、怜南が仁美に言いました。

 あのね、ママ。

 怜南はもういないの。天国にいったんだよ。

 わたしの名前は継美だよ、鈴原継美。

怜南が生みの母親を拒絶した瞬間です。残酷な言葉が続きます。

 あのね、好きでもきらいでもないよ。

 もうママじゃないからね。

恋人に捨てられ、わが子にも拒絶された仁美が呆然としてスミレ理髪店を立ち去ったあと、微笑みかけようとする継美に奈緒(松雪泰子)がいいました。

  泣いていいのよ。

継美は、それまでこらえていた悲しみが溢れ出してきて号泣してしまいます。いくら憎んでいても、いくら恨んでいても、産みの母との絆がそう簡単に断ち切れるものではありません。奈緒は継美の中に自分自身を見ていただろうと思います。

奈緒は、仁美のもとで継美(怜南)が幸せになれるなら、怜南(継美)を仁美に返そうと考えます。奈緒は半分人生を捨てているようなところがありますから、誘拐犯として裁きを受けることぐらいすでに覚悟ができています。

公園で呆然としている仁美に奈緒が語った言葉が印象的でした。

 子どもは親を憎めない生き物だから……

しかし、仁美はすでに怜南(継美)を諦めていました。傷心のまま怜南を残して室蘭に帰ってしまいます……。

    

この「Mother」というドラマは、予定通りだと6月23日の第11話が最終回です。残りはあと3回です。いったいどんな結末になるのでしょうか。来週はいよいよ警察の捜査の手が鈴原奈緒に迫ってくるようです。

続きは → http://mugigicat.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/mother-3045.html

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2010年6月 1日 (火)

小池真理子の「無花果の森」・第161回(5/31)まで

日経新聞夕刊に連載されている小池真理子の「無花果の森」は、登場人物が少ないし物語の展開もゆったりしています。いわゆる「私」が主人公の小説ではありませんが、印象としては「私」の手記を読んでいるような感じです。

ちょっと長くなりますが、この小説の第125回(4/14)からの流れを復習しておきます。

第125回
新谷泉(38)は廃墟のような塚本鉄治(42)のマンションを訪れた。鉄治は「お入りください。傘はそのへんに。あ、靴は脱がなくてもいいですから」と言った。

第126回
鉄治はこのマンションをゲイバーの経営者であるサクラ(60)から借りていた。鉄治は「(サクラが)ここに来る心配はない」と泉に言った。サクラは別のところに住んでいた。

第127回
泉は鉄治とテーブルを挟んで斜向いに座った。鉄治は何から話していいかわからなかった。泉は自分の失踪についての報道がどうなっているのかを鉄治に訊いた。

第128回
泉が映画監督である夫の暴力を恐れて失踪したことは、すでにマスコミで話題になっていた。鉄治は、「(マスコミは)新谷監督のことを追いまわしている感じです」と言った。

第129回
泉の夫である新谷監督(48)から詳しい話を聞けないせいで、泉が自殺目的で失踪したとか、重度の鬱病を患っていたとか、根も葉もない憶測が流れているらしかった。

第130回
泉は、この大崖の街に辿り着いて画家の天坊八重子(80)のところで家政婦をするようになったこれまでの経緯(いきさつ)を鉄治に話した。

第131回
鉄治は泉よりも早く5月末に大崖の街に来ていた。二人が同じ街に辿り着いて、しかもゲイバーの『ブルー・ベルベット』でバッタリ出会ったのはまったくの偶然だった。

第132回
雑誌記者の鉄治は、「ある取材をしていて……罪をきせられたました」と言った。それがこの街に潜伏している理由だった。鉄治はそれ以上具体的なことは話したがらなかった。

第133回
泉は詳しい事情を知りたがった。しかし、知りすぎると泉にも危害が及ぶ恐れがあった。鉄治はどうしてもそれ以上は話そうとしなかった。

第134回
鉄治はサクラと出合って『ブルー・ベルベット』で働くようになるまでの経緯を語った。「事件」とは直接関係のない話だった。

第135回
画家の天坊八重子がワケアリと知りながら泉を家政婦として雇ってくれたように、鉄治もワケアリと知りながらおかまのサクラに雇ってもらっていた。

第136回
泉は鉄治に関して何の情報も持っていなかった。鉄治は泉と会って「お互いの事情をお互いに他言はしない」という固い約束をしておきたかった。

第137回
改めて見ると、鉄治は整った面差しをした男だった(塚本鉄治のイメージとしては高橋克典がピッタリです)。

第138回
鉄治は「この街(大崖)の名前は、あんまり今の情況にぴったりで、笑ってしまいます……よりによって、こんな名前の街に隠れることになったなんて」と言った。

第139回
これからどうするかについて、鉄治は「まだ決めていません」と言った。泉も「今は(天坊八重子のところで)家政婦を続けていくこと以外、考えていません」と言った。

第140回
四時になろうとしていた。「そろそろ、失礼しなくちゃ」と泉は言った。泉は鉄治に「友情に似たもの」を覚えていた。

第141回
泉は来週の日曜日もここで鉄治と会う約束をした。鉄治の誘いだった。泉は、屈託のない笑みが自分の口もとに浮かぶのを感じた。

第142回
鉄治の部屋から帰ってしばらくの間、泉は放心していた。泉にとって鉄治は、この世で唯一、親しくかかわり、真実を語ることのできる相手と言えた。

第143回
再び鉄治に会いに行く日曜日がやってきた。朝方、珍しく何日かぶりの晴れ間が出たが、昼近くになると、再び小雨がぱらつき始めた。

第144回
一時過ぎには長屋を出発する必要があったが、まだ時間がたっぷりあった。泉は、失踪する前の数日間のことが、順を追うように思い出されていた。

第145回
泉は新谷吉彦という人間について、日頃考えていたことを言いたい放題にまくしたてた。「うるせえんだよ、バイタ」と吉彦は言った。あとは殴る蹴るの暴行であった。

第146回
それまでは謂れのない暴力に泣き、嗚咽し、あやまる必要もないのにあやまり続け、嵐が過ぎ去るのを待っているだけだったが、その時の泉は違った。

第147回
泉は、逃げよう、と思った。新谷はそれ以上、泉に手出しはしてこなかった。外出したのである。

第148回
その晩、新谷は帰って来なかった。翌日の昼ころ、事務所の若い女から電話があった。女は「(新谷の着替えを)私がご自宅まで取りに行くようにと言われました」と言った。

第149回
事務所の女の話によれば、新谷は今日と明日、沖縄で二泊して、明後日に羽田着の予定だった。しばらく新谷は帰ってこない。泉が家を出るには絶好のチャンスだった。

第150回
泉は事務所の女に新谷の着替えを入れたボストンバッグを手渡した。女が去ってから、泉は家の中の整理を始めた。家出の準備である。

第151回
泉は新谷が戻ってくる前に家を出ておかなければならなかった。逃げるのだ、と思った。逃げて逃げて、この世の果てまで逃げて、別の人生を生きるのだ、と思った。
  

第152回
泉は父のことを思い出していた。父は予備校の講師をしていた。家庭では母と二人の娘に暴言と暴力を繰り返していた。

第153回 
泉が高校に入学した年の晩秋にその父が自殺した。福島の山間部にある村はずれの廃墟で、梁にロープを巻きつけて縊れていた。

第154回 
父は自殺することでしか自らに決着をつけることができなかったのではないか、と泉は考えていた。

第155回
泉はなぜ忌まわしい過去を次から次へと思い出すのだろうか。まるで、鉄治に過去を打ち明けるための心の準備をしているかのようであった。

第156回
泉は父と夫の吉彦を比較した。父と夫では精神性に大きな違いがあった。父の心に吹いていたはのは虚無の風だが、吉彦の心には肥大化した自尊心の砂嵐が吹いていた。

  
第157回
外は雨だった。泉は先週同様傘をさして歩いていくことにした。近くのコンビニで手土産を買って鉄治のマンションに向った。

第158回
泉は歩きながら心配になってきた。鉄治がいなくなっているのではないかと不吉な考えが頭をよぎった。

第159回
泉は鉄治のマンションに着いた。ドアを三回ノックした。鍵を外す金属音がして、ドアが開けられた。鉄治はいた。泉の心配は杞憂だった。

第160回
一週間前と同じ部屋の同じテーブルで、泉と鉄治はまた斜向かいに座った。一週間前の続きが始まった。

第161回
泉と鉄治は緑茶を飲みながら四方山話を始めた。泉がよく買い物をするスーパーが話題になった。そのスーパーにはスポーツ紙まで置いてある雑誌コーナーがあった。

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