小池真理子の「無花果の森」・第207回(7/24)まで
第203回(7/20)
華やかな美しい女は、いつか男を裏切る。存在感あふれる魅力的な女も、いつか男を裏切る。
こう考えた新谷吉彦は、「素顔に不幸せな雰囲気の漂う、華やかさの欠落した」泉と結婚しました。そして今、吉彦は次のような結論に達しています(たぶん)。
すべての女は、いつか男を裏切る。
でもね。女が男を裏切るかどうかは男次第という意見もありますぞ。
第204回(7/21)
新谷泉の容貌の描写です。
病気でもないのに、いつも血色が悪く、色白というよりは、青みがかった顔をしていた。顔型は丸かったが、頬にふっくらとした肉がついておらず、くちびるも鼻も目も小さめだったせいか、いつも人に儚げな印象を与えた。子供のころは、病弱か発育不全か、と思われることもしばしばだった。
丸顔かどうかは判定が難しいですが、頬がこけているといえば男性なら玉木宏です。男性の場合はイケメンの人で頬がこけいてる人は多いです。
それでは女性の場合はどうでしょうか。女性で頬がこけている人といえば、真っ先に思い浮ぶのは才女・光浦靖子です。新谷泉は光浦靖子に似ているのでしょうか……。
第205回(7/22)
(八重子は)両方の眉を大きく上げて、じろじろと泉の全身を眺め回しながら、「なんだか」と言った。「やけにめかしこんでいるじゃないか」
「いえ、そんなことないです」
「めかしこんでいるよ。どうしたんだい」
なるほどこのようにして日ごろ真面目な人が浮気をするとすぐにバレてしまうのですね。鉄治もサクラに感づかれて「あんた、最近様子が変だよ。あたしに内緒でいい人でもできたんじゃあないのかい」なんて疑われているかもしれません。
第206回(7/23)
八重子は居眠りをしているようだった。時折首がかくんと揺れた。揺れるたびにもぞもぞと身体を起こす。またしばらくすると、首が落ちる。無花果の下でちんまりと丸くなっている八重子の寝姿を、油蝉の鳴き声がけだるく包んでいた。
天坊八重子は売れない詩人の詩集を抱いたまま無花果の木の下で眠るように死んでしまうのだろうと思っていましたが、予想がはずれました。ただ居眠りをしていただけでした。まだまだしぶとく生き続けるようです。
泉は八重子に気づかれないように、食材の入ったスーパーの袋を持って、鉄治との「逢いびき」にでかけました。
この日、きっと鉄治に抱かれることになるだろうと、泉は90%ぐらいの確率で予想(期待?)していたと思います。こういうのって以心伝心でなんとなくわかるものです。
第207回(7/24)
泉が鉄治のマンションを訪れる時間は、4時半か5時かそのころということで、はっきり何時と決めたわけではありません。
鉄治は4時ごろからそわそわしだして、部屋の中をわけもなく歩き回ったり、ドアを開けて外の様子をうかがったり、何かと落ち着かなかったことと思います。頭の中は1週間前からエロい妄想でいっぱいだったに違いありません。
泉が手すりのついた階段を上がろうとした時だった。
階段上の朱色のドアがゆっくりと開かれた。蝶番がわずかに、ぎい、と鳴った。ドアの向こうから、鉄治の顔が覗いた。
何か音がするたびに、鉄治はドアを開けて様子を伺っていました。10分に1回はドアを開けていたのではなかろうか。
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