小池真理子の「無花果の森」・第219回(8/7)まで
第214回(8/2)
「名前や住所がなくなっても。過去を捨てても。未来が見えなくなっても。生きようと思ったら、どんなことをしてでも生きていけるんだ、っていうこと、初めて知りました」
「住めば都」とは昔の人はうまいことを言ったものです。泉にとって、廃墟のような岐阜大崖の街も今となっては住めば都です。
人生というのは基本的に、食べて糞して寝る、これの繰り返しです。人間にとって、身体が健康で日々「食べて糞して寝る」を繰り返せることが一番の幸せです。あとはおまけのようなものです。人はすべてを失ったときに、初めてこのことに気がつくのかもしれません。
「人生は生きてるだけで丸儲け」(明石家さんま)という意見があります。しかし、生きていても病気や怪我で死んだほうがマシだと思うくらいに痛かったり苦しかったりしている人もいます。そういう人に「生きてるだけで丸儲けだと思え」と諭しても説得力がありません。「人生は健康なだけで丸儲け」というべきです。健康っていいよね。
第215回(8/3)
塚本鉄治は、若いころはロックミュージックが好きだったそうです。四十二歳の鉄治が若いころ(1985年前後)に流行っていたロックミュージックといえば、おそらくボン・ジョヴィです(勝手に決める)。ボン・ジョヴィは米国よりも日本で先行して人気が出てしまった不思議なロックバンドです。サウンドが日本人好みだったのかもしれません。今でも根強い人気があります。毎年のようにコンサートが開かれていますが、今年は11月30日(火) と 12月1日(水) に東京ドーム公演があります。
Bon Jovi - Runaway
Bon Jovi - You Give Love A Bad Name
Bon Jovi - Livin' On A Prayer
第216回(8/4)
冷奴のいろいろです。
①ピリ辛ツナきゅうりの冷奴
絹豆腐、ツナ、すり胡麻、味噌、トウバンジャン、きゅうり
②アボカド冷奴
絹豆腐、アボカド、青ねぎ、醤油、ゴマ油、ブラックペッパー
③おくら冷奴
絹豆腐、おくら、きゅうり、鰹節、めんつゆ
④トマトの冷奴
絹豆腐、ミニトマト、すりゴマ、醤油、砂糖、ごま油
⑤明太子の冷奴
絹豆腐、辛し明太子、ゴーヤー、醤油
⑥アメリカ人の冷奴
絹豆腐、苺ジャム
⑦我が家の冷奴(スタンダード)
絹豆腐、ショウガ、長ねぎ、鰹節、醤油
泉が腕によりをかけて作った冷奴は次のようなものでした。
買ってきたミョウガとキュウリと大葉を細く千切りにし、さらに茄子をみじん切りにしてキヌゴシ豆腐の上に載せた。そこにパック入りのカツオブシをまぶし、醤油をかけた。
かなり凝った冷奴です。いかにもうまそうです。ただ、よくわからないのは茄子(なす)のみじん切りです。茄子は、漬物にするか、天ぷらにするか、焼くか、炒めるか、煮るかして食べるものだと思っていました。
みじん切りにしたのはおそらく漬物の茄子ではないかと思いますが、もしこれが生の茄子だったら泉さんの冷奴はかなりユニークです(試してみねばなるまい)。
第217回(8/5)
女性を絶望のどん底に突き落す簡単な方法があります。料理にケチをつけることです。
「ちょっと味が薄いんじゃないの」
この一言で十分です。「不味くて食えない」とまで言う必要はありません。ほんの少しケチをつけるだけで一生恨まれるほどのダメージを与えることができます。
逆に良好な関係を築きたいと思ったら料理を褒めるのが一番です。「うまい」というだけで好感度アップです。
鉄治は「おいしい」「うまい」と繰り返しながら、夏野菜を大盛りにした冷や奴をつつき、威勢のいい音をたてて、焼そばをすすった。彼の顔には、これまで見たことのない、平和な、安堵しきったような表情が拡がっていた。
ほんとうにうまかったのか単なるお世辞かはわかりません。でも、鉄治の豪快な食べっぷりが泉を幸せな気分にさせたのは確かなようです。
第218回(8/6)
「サクラさんの骨折の具合はどうなりました?」
泉と鉄治はサクラのうわさ話を始めました。骨折はもうすっかり治っているはずなのに、サクラはギブスを外そうとしません。お店を鉄治に手伝ってもらっている言い訳にギブスが必要らしいです。そんなに無理しないで「いい男だから雇っているんだ」と素直に認めて開き直ってしまったほうが楽なのにね。
還暦のサクラが同性のヒロシ(鉄治のこと)を好きという場合、どこまで本気なのかわかりません。でも、あまりギラギラした感じではないと思います(思いたい?)。相手にその気がないのに無理やり変なことはしないでしょう。いい男が近くにいるだけで幸せといった感じではないでしょうか。
第219回(8/7)
サクラの本名は梅川肇というのだそうです。
第219回は一生懸命生きているサクラさんが気の毒なのでパスします。とても笑う気になれません。悲しいお話です。
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