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2010年12月18日 (土)

角田光代の「空の拳」・第4回(12/18)まで

日経新聞の夕刊で角田光代の「空の拳」という連載小説が始まりました。タイトルの読み方は「くうのこぶし」です(たぶん)。

この小説の主人公は那波田空也という名前です。最初、私は「ななみだくうや」と読んでいました。もしかすると「なはだくうや」かもしれません。あるいは「なはだそらなり」かもしれません。

気になってネットで検索したら、那波田目という姓がヒットしました。「なばため」と読むそうです。「なばため」の漢字表記は、青天目・青田目・那波多目・那波田目・天生目・生畑目・天女目・矢生目・生天目・名畑目など、いろいろあります。すべて読みは「なばため」です。「那波田」は「なばた」と読むのかもしれません。

  那波田空也(なばたくうや)

勝手に決めました。これが主人公の名前です。小説にこういう一般的でない姓を使うときは、その読み方をその場で教えてくれないと困ります。あとからこう読むんだと言われて、それが自分の読み方と違っていたりすると調子狂います。
 
 
ところで、平安時代に空也上人という浄土教の有名なお坊さんがいました。念仏を唱えれば極楽往生できると最初に言い出した人です。空也上人像の写真が今でも歴史の教科書には載っています(たぶん)。「空」という字は、空海、空也、円空など、お坊さんに縁があります。色即是空とか(意味不明)。

この小説の主人公の両親は自分の子供にどうして空也などという名前をつけたのでしょうか。こんな名前だと、将来食うや食わずの人生を送ることになるかもしれません。
 
 
さて、小説の中の現在は、今から10年前の西暦2000年です。西暦2000年は元号では平成12年です。この年の3月4日にソニーの家庭用ゲーム機プレーステーション2(PS2)が発売されました。ゲーム関係者は数字の並びで縁起を担ごうとする傾向があります。見かけによらず(?)信心深いのかもしれません。平成12日……考え抜かれた発売日です。ちなみに、マイクロソフトのXboxの発売日は0022日です。XboxもPS2に負けてなるものかと頑張りました(発売日で遊ぶな!)。

それから、ポルノグラフィティのファーストアルバム『ロマンチスト・エゴイスト』がリリースされたのも2000年です(3月8日)。
 
空也がテレビのニュースで見ていた「九州のバスハイジャック事件」や「愛知県で起きた殺人事件」というのは現実に2000年5月に起きた事件です。この辺は史実(?)に忠実です。

2000年5月1日
【17歳少年が主婦殺害】
愛知県豊川市の主婦(64)が自宅で刺された。2日、同県内の高校3年男子生徒(17)が出頭、殺人容疑で逮捕された。「人を殺す経験をしようと思った」と供述した。

2000年5月3日
【バス乗っ取り】 佐賀市を出発し九州自動車道を走行中の高速バスが、午後1時30分頃に福岡県の太宰府IC付近で少年(17)に乗っ取られた。本州にはいって山陽自動車道を東上、山口県の下松〔くだまつ〕SAでバスが停止したが、山口県警は封鎖を解除した。動き出したバスから男性乗客が飛び降り保護されたが、直後に乗客の女性(68)が刃物で刺され、後に死亡した。広島市の奥屋PAで女性3人が解放されたが、バスは再び東に向かい、午後10時ごろ、東広島市の山陽自動車道小谷SAで止まり給油した。4日午前5時過ぎに捜査員がバスに突入して犯人を逮捕、乗客ら人質10人を救出した。

詳しくは → http://www001.upp.so-net.ne.jp/fukushi/year/2000.html

那波田空也は文芸(小説)が好きで、1年留年の後、出版社に就職しました。しかし文芸の編集部というのは狭き門らしく、なかなか希望通りにはいきません。空也の3年目の配属先はなんとボクシング雑誌『ザ・拳』の編集部になってしまいました。文学青年(?)の空也にとっては悪夢です。
 
 
空也が就職した出版社には空也と同期入社の社員が三人います。

1.入社時から女性誌志望の川口弓恵。二十代の働く女性をターゲットにした女性誌に配属。

2.仕事より私生活を重視する江野正。移動なし。ずっと営業部で満足らしい。何で出版社に就職したのかは不明。

3.上司と不倫関係という噂のある田中芙美。翻訳部署に移動。この移動は身体で勝ち取ったらしい。

空也はこれまで同期の社員から飲み会に誘われても断っていました。しかし、ボクシング雑誌『ザ・拳』への移動がよほどショックだったのか、日ごろ無視していた同期の三人と飲みに行くことにしました。さすがの空也も酒でも飲まなければやってられない気分になったようです。

飲み会での噂話では人事に絡んで次のような人が話題になりました。

鹿野大五郎 ← これから空也がお世話になる『ザ・拳』の編集長。偏屈な人らしい。

服部(ニンニン) ← 人あたりも面倒見もいい53歳の人事部長(定年まであと七年)。好きな音楽はポルノグラフィティ。やさしい感じだけど陰険らしい。忍者ハットリくん+人事部長でニンニンというあだ名になった(たぶん)。空也がポルノグラフィティをバカにしたのでニンニンが報復人事を断行した可能性がある。

鞠絵ちゃん ← 入社8年目の先輩社員。B級グルメ雑誌『こってり!』編集部に所属。入社した時はモデルのような美人だったらしい。でも、B級グルメの実地取材が祟って30キロも太ってしまった。鞠のようにまんまるに太っているから鞠絵……こういう命名は名前とイメージがすぐに一致するので好きです(本名ではないかもしれない)。鞠絵ちゃんもニンニンの報復人事の犠牲者らしい。
 
 
同期社員との飲み会の翌日、空也は二日酔いで出勤しました。

 やめようか会社。信号待ちのとき、一瞬そんな考えが浮かぶ。無理無理無理。あと七年。七年の我慢。もしかしたら三年ですむかもしれない。二年かも。青信号で思いなおし、空也は今日も、いつもと同じ八時三十五分発の上り電車に体を押しこむ。

八時三十五分の電車に乗るのに、空也は目覚まし時計を六時三十分に合わせていました。ちょっと早起きすぎるのではないでしょうか。空也のアパートから最寄の駅までは徒歩八分です。

それにしても、クーちゃん(空也のあだ名)の思考回路は非常にポジティブです。七年どころか一生希望の部署には配属されないかもしれないとは考えようとしません。落ち込んでもすぐに立ち直ります。七年、三年、二年……人生を前向きに考えようとするところは、何となく「ライオンのごきげんよう」に出ていた中尾明慶(←この人、面白いです)とイメージが重なります。

中尾明慶は、事の成り行きで元世界チャンピオンの薬師寺保栄と3ラウンドのスパーリングをやることになったそうです。もちろんボッコボコにされました。3ラウンドの途中まで何とか持ったのは、それなりに手加減してくれたのだと思われます。
    ↓
 http://ameblo.jp/nakaoakiyoshi/entry-10564562390.html

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コメント

躍動感とは程遠いストーリーに前半は戸惑いました。
読後はこれまでと全く違う作品を描き切った著者の勢いを感じました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。

投稿: 藍色 | 2014年10月 3日 (金) 13時22分

藍色さん、コメントありがとうございます!!!!
  
このブログはお客さんがほとんどきません。本人もやる気を失っていてめったに覗かないものですから藍色さんのコメントを見逃していました。大変申し訳ありませんでした。
  
「空の拳」は途中で挫折してしまいましたが最後まで読めばよかったですかね。今度まとめて読んでみたいと思います。
  
角田光代さんの小説の世界というのは、(いい意味で)正常な感覚から少しずれた独特の世界観どの作品にも漂っているような気がします。
  
なにはともあれコメント本当にありがとうございました。

投稿: むぎ | 2014年10月25日 (土) 21時26分

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