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2010年12月23日 (木)

角田光代の「空の拳」・第7回(12/22)まで

角田光代という小説家は人間の心の闇をえぐり出すような暗い小説を書く人だと思っていました。何でそう思ったのかというと、テレビドラマ「八日目の蝉」の影響です。あのドラマの陰々滅々とした印象から原作の小説もそうなんだろうと思っていました(NHKの「八日目の蝉」は笑える要素が皆無でした)。

でも、同じ角田光代の小説でもこの「空の拳」は雰囲気が違います。明るく楽しい感じの小説です(たぶん)。角田光代の笑いのセンスはなかなかのものです。久しぶりにニヤニヤしながら読んでいます。

 第5回

ボクシング誌『ザ・拳』は隔月刊です。雑誌というのは時間をかければいいものが作れるとは限りません。たとえ隔月刊誌でも週刊誌のつもりで仕事をすれば、2カ月のうち1週間だけ働ければいいことになります。締め切りの1週間前まで、ずーーーーっと遊んでいられます。毎日が日曜日です。まったりできます。空也は落ち込んでいますが、『ザ・拳』の編集部は怠け者には天国です。江野正なら羨ましがる職場ではないでしょうか。

『ザ・拳』の編集部も一応世間並みに新しく配属されてきた空也の歓迎会をしてくれました。そういうこととは無縁の部署かと思っていましたがなかなか気が利いてます。でも『ザ・拳』の編集部のメンバーは空也を入れて4人だけです。

鹿野五郎(しかのごろう) 不器用系  
編集長。巨漢のため大五郎と勘違いされていたが本当の名前は五郎だった。1970年代からずっと『ザ・拳』の編集部にいる。いつ編集長になったかは不明。年齢も不明。(五十歳前後か)。空也がおでんの卵に箸をのばそうとしたら「それはやめとけ(俺が食べる)」とたしなめました。卵が好きらしい。

橋爪雅人(はしづめまさと) ナルシスト系  
見てくれは二十代だが実は三十代後半。黒縁眼鏡をかけている。よく見るとすごい美男子である。文芸志望の空也を「そのうち(文芸の編集部に)行けるから」と慰めてくれた(内心ではこいつもここに骨を埋めることになるのか、と思っているかもしれない)。

倉田真喜(くらたまき) オカン系 
三十代前半。女性。美人かどうかは不明。空也が真喜に勧められたおでんをおいしいといったら、「でしょでしょー」と言ってグーにした両手を口元にあて、身をよじって嬉しがった。たしかにいます、こういう人。バカそっくり。

この小説は登場人物がまとめてドバッと出てきます。混乱しないように整理しておいたほうがいいです。

1.空也と同期入社 → 弓恵、正、芙美。
2.『ざ・拳』のメンバー → 五郎、雅人、真喜
3.人事部長 → ニンニン、  B級グルメ → 鞠絵
 

 第6回
 
空也の歓迎会は十一時過ぎにお開きになりました。雅人はタクシーを拾って、真喜は地下鉄でサッサと帰ってしまいました。空也もJRで帰ろうとしたのですが、編集長の鹿野五郎から「もう一軒いくぞ」と、すごむような声で言われてしまいました。

空也も内心は帰りたかったのですが、ここで逆らってその後の人間関係がおかしくなってもいけません。素直に従うことにしました。

五郎が空也を連れていったのは、荒木町の路地裏にある細長い店だった。

この小説はどうして地名が出てこないのだろうと不思議に思っていましたが、いきなり荒木町が出てきました。東京の荒木町といえば新宿区の荒木町です。

荒木町の地図 → http://www.arakicho.com/map.html

この荒木町の店で空也は五郎に説教されてしまいました。編集長はそうとうストレスが溜まっているようです。

「今は人気ねえんだ、懸命とかがむしゃらってことがみっともないって時代なんだ、でもそんなかっこつけた薄っぺらい時代はなあ、すぐ終わるんだよ馬鹿野郎、男なら拳だ、球だの棒だの使うんじゃない、身ひとつで勝負なんだよ、わかったかこのクネクネ野郎!」

おそらく「紫乃」というおでん屋(?)が四ッ谷駅付近にあって、五郎と空也はそこから荒木町の店に移動したものと考えられます。空也の就職した出版社があるのもおそらく四ッ谷駅付近です。

中央線の時刻表によれば、荻窪から八時三十五分発の中央線の快速に乗ると四ッ谷駅に八時五十三分に着きます。九時出勤でも勤務先まで徒歩五分ならギリギリで間に合います。空也のアパートはどんなに遠くても荻窪が限界です。荻窪より遠くなると、八時三十五分の電車では九時出勤に間に合いません。

 
 第7回
 
さて、いよいよ空也の取材活動が始まりました。まずは鉄槌ボクシングジムでの取材です。

 鉄槌ボクシングジムは、空也の通った大学と最寄の駅が同じだった。JR駅の改札を出て、大通りを右にまっすぐ20分ほど歩くと大学だが、大通りから垂直にのびる細い商店街のなかにジムはあった。

空也の通った大学というのは早稲田大学です(勝手に決める)。JR駅は高田馬場駅で、大通りは早稲田通りです。鉄槌ボクシングジムのある細い商店街がどこかは不明です。
 

空也のようにボクシングに興味がない人でも「サンドバッグ」とか「シャドーボクシング」という言葉は何となく知っています。こうしたボクシング用語をいつ覚えたのか訊かれても、いつ覚えたかまでは記憶にありません。いつのまにか知っているのです。ちょうど野菜のトマトやキューリの名前を知っていても、いつどこで覚えたかまでは記憶にないのと同じです(フーテンノ寅さんのような理屈ですみません)。
 
 
さて、鉄槌ボクシングジムを訪れた空也は事務室に通されました。

 勧められ、空也はソファに腰掛けた。茶髪の男と、彼よりは老けた男が、空也の前に座った。

老けた男とはひどいじゃないか。年配の男と言いなさい(意味は同じか)。

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