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2010年12月26日 (日)

角田光代の「空の拳」・第9回(12/25)まで

「あしたのジョー」の実写版映画が来年の2月11日に公開されます。矢吹丈が山下智久、丹下段平が香川照之、力石徹が伊勢谷友介、白石葉子が香里奈という豪華キャストです。しかも主題歌は宇多田ヒカル。

公式サイト → http://www.ashitano-joe.com/index.html

公式サイトの予告編を観てるだけで何だか感動してしまいます。香川照之がしっかり丹下段平になっているし、伊勢谷友介の力石徹も雰囲気出ています。「SPACE BATTLESHIP ヤマト」もそうですが、昔の名作マンガや名作アニメに実写版で挑戦するというのが最近の流行なのかもしれません。

ボクシングをテーマにしたマンガには、「あしたのジョー」(高森朝雄/ちばてつや)をはじめとして「がんばれ元気」(小山ゆう)や「はじめの一歩」(森川ジョージ)など、数々の名作と呼ばれいてる作品があります。1989年に週刊少年マガジンで連載が開始された「はじめの一歩」はいまだに連載が続いていて、単行本の発行部数はすでに8000万部(2008年時点)を超えているそうです(詳しくは → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%AE%E4%B8%80%E6%AD%A9)。ところが、小説となると、ボクシングを題材にした名作というのはほとんど聞いたことがありません。

小説が好きでさらにボクシングも好きという人は珍しいと思います。小説の好きな人というのは、だいたい内向的で運動神経が鈍く、ボクシングに限らずスポーツは苦手という人が多いと思います。それなのにあえてボクシングを題材として小説を書くというのは勇気のいることです。ただでさえ少ない(?)小説の読者に背を向けていることになります。いい根性しています。そんなわけで、「空の拳」というこの異色作(?)を是非応援したいと思います。

第8回

この小説は次から次へと登場人物が出てきます。また二人出てきました。鉄槌ジムのオーナーとトレーナーです。

小暮修造 鉄槌ジムのオーナー
五十歳前後。彫りが深い顔をしている。無口。何となくこわい。

有田正宗 鉄槌ジムのトレーナー
三十代。短髪を茶色に染めている。人なつこい顔をしている。性格も人なつこいみたいだ。

取材で鉄槌ジムを訪れた空也は、事務室で小暮修造と有田正宗を前にして、質問をしました。まず最初に何を聞いたかというと、

 「あの、このジムって何人くらいいるんですか」

第一声がこれです。何だか素人丸出しです。有田正宗は「こいつ、新米だな」と思ったのに違いありません。それでも睨みつけるでもなく優しく丁寧に答えてくれました。

 「会員数は全部で二百五十ぐらいですかねえ、プロは、ライセンス持っているのって意味ですけど三十二人です、ぜんぜんきてないヤツもいますけどね」
 「ってことはほかの方はプロを目指しているのではなくて、運動不足解消みたいなことできているのですかね、年配の方や女性の方もいらっしゃいますけど」

ますます素人丸出しです。大丈夫なんでしょうか。

 第9回

空也は編集長の鹿野五郎から聞いた鉄槌ジム所属のタイガー立花(タイガー立石ではない!)というプロボクサーの名前を出したのですが、タイガー立花はリングネームで本名(?)は立花望だ言うことを知らずにとんちんかんな受け答えをしてしまいました。それでも、トレーナーの有田正宗は笑いながら懇切丁寧にタイガー立花=立花望であることを説明してくれました。しかし、オーナーの小暮修造は痺れを切らせたのでしょうか、突然「おまえ、通え」と言い出しました。

 「えっ?なんですか?」
 「だから、通えここに。なんにも知らずに記事なんか書けんだろう。通え」

鉄槌ジムは入会金一万五千円、月会費が一万円です。ボクシングジムも経営環境は厳しいらしく、プロボクサーの養成だけでは経営が成り立ちません(たぶん)。ボクシングによる体力増進やダイエット効果をアピールして年配者から女性や子供まで幅広く会員を集める努力をしているようです。

オーナーから「通え」と迫られた空也は、通うつもりはなくても即座に断る勇気もありません。とりあえず「考えてみます」と、その場しのぎの返事をしました。

 その日、空也はスーツ姿のまま、ジムを見学した。六時を過ぎてから人が増えはじめ、熱がこもる。

ボクシングジムの練習システムというのは月会費一万円払えば毎日通ってもいいみたいです。練習時間は約一時間。もし、二百五十名の会員がドッと押し寄せたらジムがパンクしてしまいます。まあ、座席があるわけではないのでピーク時に多少混雑するぐらいで何とか大丈夫なんだと思います。それに会費だけ払って練習に来ない幽霊会員もかなりいると思われます。

最初の一ヵ月間は熱心に通って、そのうち会費だけ払って通わなくなって、半年か一年後に退会するといったパターンが多いのではないでしょうか。プロを目指している人は、「俺の練習代を幽霊会員が払ってくれているんだ」と思って熱心に練習したほうがいいです。

タイガー立花(立花望)という選手は鉄槌ジムの有力選手らしいです。でもまだどれくらいのレベルの選手なのかはわかりません。

リングには四、五人の男たちが上がっている。それぞれやはり別の方向を向いて、ひとり黙々と動いている。「あれが望」と有田が指したのは、リングで動いているひとりだった。リスの絵が背中に描かれたTシャツに膝丈のジャージ、髪は有田よりさらに明るい茶色に染めている。リングの下に立って空也はしばらく彼の姿を目で追った。

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