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2010年12月29日 (水)

角田光代の「空の拳」・第11回(12/28)まで

第10回

鉄槌ジムは地下にあるらしく窓がありません。においがこもっているし、頭がガンガンするようなやかましい音楽が絶えず流れています。さらに熱気と湿気も充満しています。空也は原因のわからない圧迫感(=全体の雰囲気が醸しだしている圧迫感)から鉄槌ジムを出たくてたまらなくなってきました。それでも一応取材で来ているわけだし、イヤになったからといって帰るわけにもいきません。

「望がマスやるんで見てったらどうスか」と、有田に言われ、有田といっしょに空也はいやいやリング下にはりついた。

「マス」というのは「マスボクシング」の略です。「シャドウボクシング」や「スパーリング」という言葉は一般の人でも知っています。しかし「マスボクシング」は実際にジムで練習したことのある人でないと知らないと思います。もちろん空也は知りませんでした(わたしも知りませんでした)。

「はてなキーワード」は、この「マスボクシング」を次のように解説しています。

ボクシングにおける練習方法の1つ。試合形式をとりながらパンチを当てずに打ち合う。通常は14オンスのグローブを着用して行う。技術の確認やタイミングのとり方、距離感などを身体に覚え込ませる。スピードや正しいボクシングフォーム、動態視力などを養うのに最適。「マス」「目慣らし」とも言う。

マスボクシングの何たるかを知ろうと思って調べていたら、YOU TUBEでかわいい(?)女の子がマスボクシングをやっている動画を見つけました。

マスボクシングで寸止めにするつもりのパンチが当たってしまったり、スパーリングで当てるつもりのパンチがよけられてしまったり、素人目にはマスボクシングなのかスパーリングなのか、ちょっと分かりにくい感じがします。

なぜ「マス」というのかについては、「mathematical」の略ではないかという説があります(「mathematical」には「数理的な」という意味のほかに「正確無比な」という意味がある)。でも、本当のところはよくわかりません。

ほかの男たちがリングを下り、なかには立花望ともうひとり、ランニング姿の男が残される。

いよいよマスボクシングの始まりです。

ランニングの腕がのびると、望は踊るようによけてパンチを出す、相手が後じさり、望が追いかけ、望の右腕を相手がよける。たしかにパンチは当たらない。特殊なダンスをしているように空也には見える。望とランニングシャツと、どちらが強いのか、どう違うのか、まるでわからない。

人間はわからないものを見ていると退屈して飽きがくるものです。眠くなったり、心ここにあらずで関係のないことを考え出したりします。

延々と繰り返されるマスボクシングを見飽きた空也は、リングに背を向けて壁に並んでいる名札をぼんやり眺めはじめました。名札は階級別に分かれていました。ボクシングの階級は、プロが17種類、アマチュアが13種類あります。

ボクシングの階級 → http://www.h3.dion.ne.jp/~toomo/html/n-kaikyu.html

空也はライト級のところにタイガー立花の名札を見つけました。そのとき突然空也は変なことを思い出しました。タイガー立花が着ていたTシャツにはディズニーのキャラクターがプリントされていました。シマリスのチップとデールのうちデールのほうです。チップとデールの見分け方は「チョコ(チップ食べて、鼻血()がデール」です。つまり鼻が黒いのがチップで、鼻が赤ければデールです。空也はディズニーのキャラクターにはけっこう詳しいみたいです。

第11回

空也はマスボクシングを見るのに飽き飽きしてもう帰りたくてしょうがなくなってきました。そんなときです。トレーナーの有田正宗が飲みに誘ってくれました。

 「那波田さん(空也のこと)、ぼく、八時であがりなんですけど、よければ軽く、いきませんか」
 有田がにっと笑って、グラスを傾けるジェスチャーをした。助かった、と思った。

こういうのを地獄で仏というのでしょうか。空也は、臭くて、うるさくて、熱気と湿気が充満している地下のジムからようやく解放されました。

今は6月下旬か7月上旬です(たぶん)。そろそろビールがうまくなる季節です。有田が連れていってくれた店は、空也が学生時代によく通っていた馴染みの焼き鳥屋でした。安くてうまい店です。

ビールを飲みながら、有田は空也にしばらくジムに通うことを勧めてくれました。この有田正宗というトレーナーは本当に優しくていい人です。気安くなんでも訊けるし、訊けば親切に答えてくれます。新米の空也がしばらく通っていろいろ質問をするにはとても貴重な存在です。本来なら「よろしくお願いします」と頭を下げるところなんですが、空也は内心鉄槌ジムを嫌がっています。

どうせ通うなら「地上階にあって、窓が広くて、陽がさんさんと入って、くさくなくて、もっと静かで、和気藹々としたジムがいい」などと、有田が聞いたら気を悪くしそうなことを考えていました。

空也はボクサーの望(タイガー立花)についていろいろ質問しようとしました。有田によれば、望はこれからどんどん強くなりそうな筋のいい選手らしいです。しかしボクシングの専門的なことを説明されても空也にはまだわかりません。そこで質問の矛先を変えて鉄槌ジムのオーナーの小暮修造について訊いてみることにしました。

 「さっきの、小暮さんって、ジムのオーナーですよね。やっぱりボクサーだったんですか」

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2010年12月27日 (月)

西東京市議会議員選挙 開票結果(開票率100%)

民主、西東京市議選で惨敗

2010年12月27日(月)5時47分配信 共同通信 

 来春の統一地方選の前哨戦として注目された西東京市議選は26日、投開票され、現有5議席を上回る7人を擁立した民主党は3議席獲得にとどまり、現職の4人が落選した。11月の千葉県松戸市議選、今月12日の茨城県議選に続く惨敗で、菅直人首相の政権運営は厳しさを増しそうだ。西東京市議選は定数28に34人が立候補。民主は現職5人のうち4人が落選、新人2人が当選。3議席とも得票数は当選者の下位にとどまった。

西東京市議会議員選挙 開票結果(開票率100%)

 得票数  党派名      候補者名
5426.802  無所属      森 てるお
3468.000  自由民主党   浜中 のりかた
2462.000  無所属      保谷 なおみ
2111.000  公明党      藤田 みちこ
2092.579  自由民主党   酒井 ごう一郎
2067.000  自由民主党   遠藤 源太郎
2063.000  公明党      おばた 勝己
1959.000  みんなの党    森田 いさお
1955.000  無所属      納田 さおり
1939.000  公明党      佐々木 順一
1936.000  公明党      青山 としや
1910.000  公明党      佐藤 公男
1892.000  みんなの党    こみね 和美
1864.000  自由民主党   浅野 たかし
1862.000  公明党      大林 みつあき
1825.000  自由民主党   田中 のりあき
1801.000  西東京・生活者ネットワーク  大友 かく子
1754.000  日本共産党   保谷 清子
1730.000  自由民主党   いながき 裕二
1726.516  西東京・生活者ネットワーク   石田 ひろこ
1704.000  日本共産党   藤岡 ともあき
1651.000  民主党      石塚 まちこ
1616.483  みんなの党   石田 しこう
1543.000  無所属      小林 たつや
1518.420  民主党      坂井 かずひこ
1516.000  民主党      桐山 ひとみ
1469.000  日本共産党   倉根 康雄
1416.000  日本共産党   安斉 慎一郎
…………………………………………………当選ライン
1390.000  社民党      相馬 和弘
1334.197  民主党      森 信一
1332.000  民主党      二木 たかゆき
1182.000  民主党      山崎 英昭
1116.000  自由民主党   塩月 哲朗
0909.000  民主党      望月 伸光

有効投票数 63541
無効投票数   733
投票総数   64274

党派別当選者数
自民党   6
公明党   6
共産党   4
みんな   3
民主党   3
生活ネ   2
無所属   4
 計     28

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2010年12月26日 (日)

角田光代の「空の拳」・第9回(12/25)まで

「あしたのジョー」の実写版映画が来年の2月11日に公開されます。矢吹丈が山下智久、丹下段平が香川照之、力石徹が伊勢谷友介、白石葉子が香里奈という豪華キャストです。しかも主題歌は宇多田ヒカル。

公式サイト → http://www.ashitano-joe.com/index.html

公式サイトの予告編を観てるだけで何だか感動してしまいます。香川照之がしっかり丹下段平になっているし、伊勢谷友介の力石徹も雰囲気出ています。「SPACE BATTLESHIP ヤマト」もそうですが、昔の名作マンガや名作アニメに実写版で挑戦するというのが最近の流行なのかもしれません。

ボクシングをテーマにしたマンガには、「あしたのジョー」(高森朝雄/ちばてつや)をはじめとして「がんばれ元気」(小山ゆう)や「はじめの一歩」(森川ジョージ)など、数々の名作と呼ばれいてる作品があります。1989年に週刊少年マガジンで連載が開始された「はじめの一歩」はいまだに連載が続いていて、単行本の発行部数はすでに8000万部(2008年時点)を超えているそうです(詳しくは → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%AE%E4%B8%80%E6%AD%A9)。ところが、小説となると、ボクシングを題材にした名作というのはほとんど聞いたことがありません。

小説が好きでさらにボクシングも好きという人は珍しいと思います。小説の好きな人というのは、だいたい内向的で運動神経が鈍く、ボクシングに限らずスポーツは苦手という人が多いと思います。それなのにあえてボクシングを題材として小説を書くというのは勇気のいることです。ただでさえ少ない(?)小説の読者に背を向けていることになります。いい根性しています。そんなわけで、「空の拳」というこの異色作(?)を是非応援したいと思います。

第8回

この小説は次から次へと登場人物が出てきます。また二人出てきました。鉄槌ジムのオーナーとトレーナーです。

小暮修造 鉄槌ジムのオーナー
五十歳前後。彫りが深い顔をしている。無口。何となくこわい。

有田正宗 鉄槌ジムのトレーナー
三十代。短髪を茶色に染めている。人なつこい顔をしている。性格も人なつこいみたいだ。

取材で鉄槌ジムを訪れた空也は、事務室で小暮修造と有田正宗を前にして、質問をしました。まず最初に何を聞いたかというと、

 「あの、このジムって何人くらいいるんですか」

第一声がこれです。何だか素人丸出しです。有田正宗は「こいつ、新米だな」と思ったのに違いありません。それでも睨みつけるでもなく優しく丁寧に答えてくれました。

 「会員数は全部で二百五十ぐらいですかねえ、プロは、ライセンス持っているのって意味ですけど三十二人です、ぜんぜんきてないヤツもいますけどね」
 「ってことはほかの方はプロを目指しているのではなくて、運動不足解消みたいなことできているのですかね、年配の方や女性の方もいらっしゃいますけど」

ますます素人丸出しです。大丈夫なんでしょうか。

 第9回

空也は編集長の鹿野五郎から聞いた鉄槌ジム所属のタイガー立花(タイガー立石ではない!)というプロボクサーの名前を出したのですが、タイガー立花はリングネームで本名(?)は立花望だ言うことを知らずにとんちんかんな受け答えをしてしまいました。それでも、トレーナーの有田正宗は笑いながら懇切丁寧にタイガー立花=立花望であることを説明してくれました。しかし、オーナーの小暮修造は痺れを切らせたのでしょうか、突然「おまえ、通え」と言い出しました。

 「えっ?なんですか?」
 「だから、通えここに。なんにも知らずに記事なんか書けんだろう。通え」

鉄槌ジムは入会金一万五千円、月会費が一万円です。ボクシングジムも経営環境は厳しいらしく、プロボクサーの養成だけでは経営が成り立ちません(たぶん)。ボクシングによる体力増進やダイエット効果をアピールして年配者から女性や子供まで幅広く会員を集める努力をしているようです。

オーナーから「通え」と迫られた空也は、通うつもりはなくても即座に断る勇気もありません。とりあえず「考えてみます」と、その場しのぎの返事をしました。

 その日、空也はスーツ姿のまま、ジムを見学した。六時を過ぎてから人が増えはじめ、熱がこもる。

ボクシングジムの練習システムというのは月会費一万円払えば毎日通ってもいいみたいです。練習時間は約一時間。もし、二百五十名の会員がドッと押し寄せたらジムがパンクしてしまいます。まあ、座席があるわけではないのでピーク時に多少混雑するぐらいで何とか大丈夫なんだと思います。それに会費だけ払って練習に来ない幽霊会員もかなりいると思われます。

最初の一ヵ月間は熱心に通って、そのうち会費だけ払って通わなくなって、半年か一年後に退会するといったパターンが多いのではないでしょうか。プロを目指している人は、「俺の練習代を幽霊会員が払ってくれているんだ」と思って熱心に練習したほうがいいです。

タイガー立花(立花望)という選手は鉄槌ジムの有力選手らしいです。でもまだどれくらいのレベルの選手なのかはわかりません。

リングには四、五人の男たちが上がっている。それぞれやはり別の方向を向いて、ひとり黙々と動いている。「あれが望」と有田が指したのは、リングで動いているひとりだった。リスの絵が背中に描かれたTシャツに膝丈のジャージ、髪は有田よりさらに明るい茶色に染めている。リングの下に立って空也はしばらく彼の姿を目で追った。

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2010年12月23日 (木)

角田光代の「空の拳」・第7回(12/22)まで

角田光代という小説家は人間の心の闇をえぐり出すような暗い小説を書く人だと思っていました。何でそう思ったのかというと、テレビドラマ「八日目の蝉」の影響です。あのドラマの陰々滅々とした印象から原作の小説もそうなんだろうと思っていました(NHKの「八日目の蝉」は笑える要素が皆無でした)。

でも、同じ角田光代の小説でもこの「空の拳」は雰囲気が違います。明るく楽しい感じの小説です(たぶん)。角田光代の笑いのセンスはなかなかのものです。久しぶりにニヤニヤしながら読んでいます。

 第5回

ボクシング誌『ザ・拳』は隔月刊です。雑誌というのは時間をかければいいものが作れるとは限りません。たとえ隔月刊誌でも週刊誌のつもりで仕事をすれば、2カ月のうち1週間だけ働ければいいことになります。締め切りの1週間前まで、ずーーーーっと遊んでいられます。毎日が日曜日です。まったりできます。空也は落ち込んでいますが、『ザ・拳』の編集部は怠け者には天国です。江野正なら羨ましがる職場ではないでしょうか。

『ザ・拳』の編集部も一応世間並みに新しく配属されてきた空也の歓迎会をしてくれました。そういうこととは無縁の部署かと思っていましたがなかなか気が利いてます。でも『ザ・拳』の編集部のメンバーは空也を入れて4人だけです。

鹿野五郎(しかのごろう) 不器用系  
編集長。巨漢のため大五郎と勘違いされていたが本当の名前は五郎だった。1970年代からずっと『ザ・拳』の編集部にいる。いつ編集長になったかは不明。年齢も不明。(五十歳前後か)。空也がおでんの卵に箸をのばそうとしたら「それはやめとけ(俺が食べる)」とたしなめました。卵が好きらしい。

橋爪雅人(はしづめまさと) ナルシスト系  
見てくれは二十代だが実は三十代後半。黒縁眼鏡をかけている。よく見るとすごい美男子である。文芸志望の空也を「そのうち(文芸の編集部に)行けるから」と慰めてくれた(内心ではこいつもここに骨を埋めることになるのか、と思っているかもしれない)。

倉田真喜(くらたまき) オカン系 
三十代前半。女性。美人かどうかは不明。空也が真喜に勧められたおでんをおいしいといったら、「でしょでしょー」と言ってグーにした両手を口元にあて、身をよじって嬉しがった。たしかにいます、こういう人。バカそっくり。

この小説は登場人物がまとめてドバッと出てきます。混乱しないように整理しておいたほうがいいです。

1.空也と同期入社 → 弓恵、正、芙美。
2.『ざ・拳』のメンバー → 五郎、雅人、真喜
3.人事部長 → ニンニン、  B級グルメ → 鞠絵
 

 第6回
 
空也の歓迎会は十一時過ぎにお開きになりました。雅人はタクシーを拾って、真喜は地下鉄でサッサと帰ってしまいました。空也もJRで帰ろうとしたのですが、編集長の鹿野五郎から「もう一軒いくぞ」と、すごむような声で言われてしまいました。

空也も内心は帰りたかったのですが、ここで逆らってその後の人間関係がおかしくなってもいけません。素直に従うことにしました。

五郎が空也を連れていったのは、荒木町の路地裏にある細長い店だった。

この小説はどうして地名が出てこないのだろうと不思議に思っていましたが、いきなり荒木町が出てきました。東京の荒木町といえば新宿区の荒木町です。

荒木町の地図 → http://www.arakicho.com/map.html

この荒木町の店で空也は五郎に説教されてしまいました。編集長はそうとうストレスが溜まっているようです。

「今は人気ねえんだ、懸命とかがむしゃらってことがみっともないって時代なんだ、でもそんなかっこつけた薄っぺらい時代はなあ、すぐ終わるんだよ馬鹿野郎、男なら拳だ、球だの棒だの使うんじゃない、身ひとつで勝負なんだよ、わかったかこのクネクネ野郎!」

おそらく「紫乃」というおでん屋(?)が四ッ谷駅付近にあって、五郎と空也はそこから荒木町の店に移動したものと考えられます。空也の就職した出版社があるのもおそらく四ッ谷駅付近です。

中央線の時刻表によれば、荻窪から八時三十五分発の中央線の快速に乗ると四ッ谷駅に八時五十三分に着きます。九時出勤でも勤務先まで徒歩五分ならギリギリで間に合います。空也のアパートはどんなに遠くても荻窪が限界です。荻窪より遠くなると、八時三十五分の電車では九時出勤に間に合いません。

 
 第7回
 
さて、いよいよ空也の取材活動が始まりました。まずは鉄槌ボクシングジムでの取材です。

 鉄槌ボクシングジムは、空也の通った大学と最寄の駅が同じだった。JR駅の改札を出て、大通りを右にまっすぐ20分ほど歩くと大学だが、大通りから垂直にのびる細い商店街のなかにジムはあった。

空也の通った大学というのは早稲田大学です(勝手に決める)。JR駅は高田馬場駅で、大通りは早稲田通りです。鉄槌ボクシングジムのある細い商店街がどこかは不明です。
 

空也のようにボクシングに興味がない人でも「サンドバッグ」とか「シャドーボクシング」という言葉は何となく知っています。こうしたボクシング用語をいつ覚えたのか訊かれても、いつ覚えたかまでは記憶にありません。いつのまにか知っているのです。ちょうど野菜のトマトやキューリの名前を知っていても、いつどこで覚えたかまでは記憶にないのと同じです(フーテンノ寅さんのような理屈ですみません)。
 
 
さて、鉄槌ボクシングジムを訪れた空也は事務室に通されました。

 勧められ、空也はソファに腰掛けた。茶髪の男と、彼よりは老けた男が、空也の前に座った。

老けた男とはひどいじゃないか。年配の男と言いなさい(意味は同じか)。

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2010年12月22日 (水)

二宮和也の「フリーター、家を買う。」・最終回を観る

誠一(竹中直人)が頭金を出して、後は二世代ローンということで武家は家を買って引越すことになりました。最初からそうしていればよかったのにね。実質的には「フリーターの父親、家を買う。」でした。

12月14日(火)の日経新聞に「瀕死の社会保障」という特集記事があって、次のような事例が紹介されていました。

大手小売業に勤める高橋宏太(仮名、32)は釈然としない。宏太の年収は390万円。退職し企業年金も含め504万円の年金を受け取る父(69)よりも少ない。

武家でも(将来誠一が定年退職したとして)誠一の年金収入のほうが誠治の勤労収入よりも多かったりするかもしれません。ふざけた話です。こんなことで二世代ローンなどもってのほかです。誠一に年金で住宅ローンを払い続けてもらおうではありませんか。

同じ日経新聞の記事で、年金や医療の社会保障制度について次のようなことが書かれていました。

40年前は10人で1人を支えていた。少子高齢化で今では3人で1人。10年後は1人で2人を支えなくてはならなくなる。

とんでもない話です。要するに、社会保障の水準を現状のまま維持しようとすれば、現役世代の負担が10年後には現在の6倍になるということです。計算上そうなるとしても、そんなことが現実問題として実現可能であるとは思えません。そのうち耐え切れなくなった現役世代が暴動を起こすのではないでしょうか。

  

話が横道にそれてしまいました。「フリーター、家を買う。」はそういう社会問題をテーマにしたドラマではありません。ひとりのフリーターの成長物語です。

誠治(二宮和也)は大悦土木の職長(大友康平)に見込まれて、正社員として大悦土木に就職することになりました。大悦土木は大手ゼネコンの喜嶋建設の下請け企業です。社長が職長を兼ねているような零細企業で、正社員といっても(たぶん)給料は安いし将来性も期待できません。

建設業はすでに斜陽産業です。今後公共事業が削減されていく中で、大悦土木のような零細企業が淘汰されずに生き残っていくことは至難の業です。それでも誠治は自分を一番必要としてくれている大悦土木に就職することに決めました。尊敬する職長のパートナーとして力一杯仕事のできる大悦土木を選んだのです。

 「仕事にはお金より大切なものがある」

とはいっても、現実はそんなに甘くはありません。でも、ドラマだからいいことにします。

これで誠治の就職も決まったし、ローンで家も買いました。後は引越しをして寿美子(浅野温子)のうつ病がよくなればめでたしめでたしです。でも、何か忘れているような気がします。そうです。千葉真奈美(香里奈)です。

真奈美はせっかく誠治が大悦土木に就職したのに、和歌山の技術センターに転勤してしまいます。2年間は帰ってきません。誠治は真奈美と別れる前にどうしても伝えておきたい事がありました。

誠治は引越しの整理を途中で抜け出して、バスで和歌山に向う真奈美を見送りに行きました。時刻通りに発車してしまう鉄道よりも、「ちょっと待って」といえば待ってくれるバスのほうが別れの場面には適しています。それにしても、優柔不断でぼそぼそ話す煮え切らない若者を演じさせたら二宮和也は最高です。

誠治   「あ、あのさ、やっぱ、送ってもらおうと思って」
真奈美 「えっ?」
誠治   「みかん……和歌山のみかん」
真奈美 「……それだけ?」
誠治   「いや、あの、それと……言っておきたいことがあって……」
真奈美 「……」
誠治   「あっち行っても、不倫、とか、すんなよ」
真奈美 「……じゃあね」

真奈美は馬鹿じゃないのと言わんばかりに誠治を無視して立ち去ろうとします。その真奈美の背後からとうとう誠治は言ってしまいました。

誠治   「好きだから」

誠治はこのひと言を言うのが精一杯でした。

真奈美 「みかん、もう送んないから。食べに来て……じゃあね」

真奈美は素直じゃないです。食べに来てではなく会いに来てでしょうが。真奈美はバスの運転手(?)に誠治のことを「彼氏」と言って話していました。それでも何だか余裕綽々です。切ながっている誠治を掌の上でころがして楽しんでいるみたいな感じです。普通の女性ならここは泣いて別れを惜しむところなんですけど……笑っていました。誠治はほとんど泣きべそ状態だったのに。

誠治が就職先として大悦土木を選ぶことも、土壇場で見送りに来ることも、見送りついでに「好きだ」と言い出すことも、真奈美には全部読まれていたみたいです。真奈美が誠治と結婚したら間違いなくかかあ天下(でんか)になります。

結局真奈美は誠治の家族とは誰とも会わないままドラマが終わってしまいました……。

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2010年12月18日 (土)

角田光代の「空の拳」・第4回(12/18)まで

日経新聞の夕刊で角田光代の「空の拳」という連載小説が始まりました。タイトルの読み方は「くうのこぶし」です(たぶん)。

この小説の主人公は那波田空也という名前です。最初、私は「ななみだくうや」と読んでいました。もしかすると「なはだくうや」かもしれません。あるいは「なはだそらなり」かもしれません。

気になってネットで検索したら、那波田目という姓がヒットしました。「なばため」と読むそうです。「なばため」の漢字表記は、青天目・青田目・那波多目・那波田目・天生目・生畑目・天女目・矢生目・生天目・名畑目など、いろいろあります。すべて読みは「なばため」です。「那波田」は「なばた」と読むのかもしれません。

  那波田空也(なばたくうや)

勝手に決めました。これが主人公の名前です。小説にこういう一般的でない姓を使うときは、その読み方をその場で教えてくれないと困ります。あとからこう読むんだと言われて、それが自分の読み方と違っていたりすると調子狂います。
 
 
ところで、平安時代に空也上人という浄土教の有名なお坊さんがいました。念仏を唱えれば極楽往生できると最初に言い出した人です。空也上人像の写真が今でも歴史の教科書には載っています(たぶん)。「空」という字は、空海、空也、円空など、お坊さんに縁があります。色即是空とか(意味不明)。

この小説の主人公の両親は自分の子供にどうして空也などという名前をつけたのでしょうか。こんな名前だと、将来食うや食わずの人生を送ることになるかもしれません。
 
 
さて、小説の中の現在は、今から10年前の西暦2000年です。西暦2000年は元号では平成12年です。この年の3月4日にソニーの家庭用ゲーム機プレーステーション2(PS2)が発売されました。ゲーム関係者は数字の並びで縁起を担ごうとする傾向があります。見かけによらず(?)信心深いのかもしれません。平成12日……考え抜かれた発売日です。ちなみに、マイクロソフトのXboxの発売日は0022日です。XboxもPS2に負けてなるものかと頑張りました(発売日で遊ぶな!)。

それから、ポルノグラフィティのファーストアルバム『ロマンチスト・エゴイスト』がリリースされたのも2000年です(3月8日)。
 
空也がテレビのニュースで見ていた「九州のバスハイジャック事件」や「愛知県で起きた殺人事件」というのは現実に2000年5月に起きた事件です。この辺は史実(?)に忠実です。

2000年5月1日
【17歳少年が主婦殺害】
愛知県豊川市の主婦(64)が自宅で刺された。2日、同県内の高校3年男子生徒(17)が出頭、殺人容疑で逮捕された。「人を殺す経験をしようと思った」と供述した。

2000年5月3日
【バス乗っ取り】 佐賀市を出発し九州自動車道を走行中の高速バスが、午後1時30分頃に福岡県の太宰府IC付近で少年(17)に乗っ取られた。本州にはいって山陽自動車道を東上、山口県の下松〔くだまつ〕SAでバスが停止したが、山口県警は封鎖を解除した。動き出したバスから男性乗客が飛び降り保護されたが、直後に乗客の女性(68)が刃物で刺され、後に死亡した。広島市の奥屋PAで女性3人が解放されたが、バスは再び東に向かい、午後10時ごろ、東広島市の山陽自動車道小谷SAで止まり給油した。4日午前5時過ぎに捜査員がバスに突入して犯人を逮捕、乗客ら人質10人を救出した。

詳しくは → http://www001.upp.so-net.ne.jp/fukushi/year/2000.html

那波田空也は文芸(小説)が好きで、1年留年の後、出版社に就職しました。しかし文芸の編集部というのは狭き門らしく、なかなか希望通りにはいきません。空也の3年目の配属先はなんとボクシング雑誌『ザ・拳』の編集部になってしまいました。文学青年(?)の空也にとっては悪夢です。
 
 
空也が就職した出版社には空也と同期入社の社員が三人います。

1.入社時から女性誌志望の川口弓恵。二十代の働く女性をターゲットにした女性誌に配属。

2.仕事より私生活を重視する江野正。移動なし。ずっと営業部で満足らしい。何で出版社に就職したのかは不明。

3.上司と不倫関係という噂のある田中芙美。翻訳部署に移動。この移動は身体で勝ち取ったらしい。

空也はこれまで同期の社員から飲み会に誘われても断っていました。しかし、ボクシング雑誌『ザ・拳』への移動がよほどショックだったのか、日ごろ無視していた同期の三人と飲みに行くことにしました。さすがの空也も酒でも飲まなければやってられない気分になったようです。

飲み会での噂話では人事に絡んで次のような人が話題になりました。

鹿野大五郎 ← これから空也がお世話になる『ザ・拳』の編集長。偏屈な人らしい。

服部(ニンニン) ← 人あたりも面倒見もいい53歳の人事部長(定年まであと七年)。好きな音楽はポルノグラフィティ。やさしい感じだけど陰険らしい。忍者ハットリくん+人事部長でニンニンというあだ名になった(たぶん)。空也がポルノグラフィティをバカにしたのでニンニンが報復人事を断行した可能性がある。

鞠絵ちゃん ← 入社8年目の先輩社員。B級グルメ雑誌『こってり!』編集部に所属。入社した時はモデルのような美人だったらしい。でも、B級グルメの実地取材が祟って30キロも太ってしまった。鞠のようにまんまるに太っているから鞠絵……こういう命名は名前とイメージがすぐに一致するので好きです(本名ではないかもしれない)。鞠絵ちゃんもニンニンの報復人事の犠牲者らしい。
 
 
同期社員との飲み会の翌日、空也は二日酔いで出勤しました。

 やめようか会社。信号待ちのとき、一瞬そんな考えが浮かぶ。無理無理無理。あと七年。七年の我慢。もしかしたら三年ですむかもしれない。二年かも。青信号で思いなおし、空也は今日も、いつもと同じ八時三十五分発の上り電車に体を押しこむ。

八時三十五分の電車に乗るのに、空也は目覚まし時計を六時三十分に合わせていました。ちょっと早起きすぎるのではないでしょうか。空也のアパートから最寄の駅までは徒歩八分です。

それにしても、クーちゃん(空也のあだ名)の思考回路は非常にポジティブです。七年どころか一生希望の部署には配属されないかもしれないとは考えようとしません。落ち込んでもすぐに立ち直ります。七年、三年、二年……人生を前向きに考えようとするところは、何となく「ライオンのごきげんよう」に出ていた中尾明慶(←この人、面白いです)とイメージが重なります。

中尾明慶は、事の成り行きで元世界チャンピオンの薬師寺保栄と3ラウンドのスパーリングをやることになったそうです。もちろんボッコボコにされました。3ラウンドの途中まで何とか持ったのは、それなりに手加減してくれたのだと思われます。
    ↓
 http://ameblo.jp/nakaoakiyoshi/entry-10564562390.html

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2010年12月16日 (木)

小池真理子の「無花果の森」・最終回(12/14)まで

最終回はネタバレになっています。単行本が出たらまとめて読もうと思っている人は注意してください。

天坊八重子の告別式会場で泉を待っていたのはサクラでした。サクラは泉から連絡を受けて岐阜大崖からはるばる上京してきました。

少し遅れて塚本鉄治も告別式に駆けつけました。天坊八重子は一応有名人です。鉄治は新聞に掲載された八重子の訃報を見たのだと思います。

鉄治は冤罪が晴れて釈放された後、泉を訪ねて岐阜大崖の天坊八重子の長屋に行きました。しかしそこにはもう八重子も泉もいませんでした。どこに引っ越したのかは不明です。鉄治は泉の電話番号を控えていなかったため電話連絡もできません。困ったことになりました。鉄治のほうからは泉に連絡する方法がありません。

鉄治は『週刊時代』の編集部に、こういう女性から電話があったら連絡先を訊いておいてくれと頼んでありましたが、泉からはいっこうに連絡がありませんでした。

そんなわけで、泉と鉄治が運命の再会を果たすことになるのは、天坊八重子の告別式まで待たなければなりませんでした。なるほどうまくセッティングしたものです。新聞小説らしく(?)ハッピーエンドでした。でも、何だか強引に終わらせてしまったような感じもします(長編小説は終わり方が難しい?)。
 
 
最後に何か言いたいことがあったらしく天坊八重子が蘇りました。煙草が吸いたいというので、1本渡して火をつけてあげると、老いた画家は煙を深く吸い、吐き出した後、ひと言、「なかなか悪くない小説じゃないか」と言いました。「芝居がかっているところなんざぁ、あたし好みだね」

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2010年12月15日 (水)

二宮和也の「フリーター、家を買う。」・第9話を観る

このドラマは、アルバイトをしながら就職活動を続けている心優しきダメ男の物語です。

誠治(二宮和也)は酔い潰れた真奈美(香里奈)をマンションまで送っていきました。誠治にとっての真奈美は、優しくて、頼もしくて、タメ口で何でも話せるかけがえのない女友だち(?)です。つまり誠治は真奈美のことが好きです。その真奈美にあそこまで言われて、普通なら何か起きても不思議はありません。しかしこのドラマはそういうドラマではなかったです。

翌日、あかり(岡本玲)から「ねえ、どうなのどうなの」(山岸美亜か?)と訊かれても、誠治はめんどくさそうに「知らねえよ」と言っていました。本当に何もなかったみたいです。
 

誠治は就職が決まれば大悦土木を辞めていきます。真奈美は酔ったふりをして(たぶん)誠治の気持を確かめました。鈍感な誠治は真奈美の思いに気がつきません。いや、気づいていてもどうにもならないと諦めていたのかもしれません(身分が違うから?)。

 どれだけ別れが寂しくても
 どれだけ大切に思っていても
 なかなか思いはうまく届かない

 でも、いつだって願っている
 大切な人が幸せでいてくれることを

 

真奈美は気持の整理をして喜嶋建設の設計部門に移る決心をしました。事故のことも、先輩社員の山賀(眞島秀和)のことも、ちょっと気になる誠治のことも、すべて吹っ切って再スタートです。

誠治も医療機器メーカーの最終面接に臨むことになりました。しかし、大切な面接があるときに限って誠治には必ず何かが起きます。

寿美子(浅野温子)は霊感商法のセールスマンに、印鑑だの表札だの水晶玉(?)だのを買わされていました。その代金がきっかり100万円です。クーリングオフの期間はすでに過ぎています。誠治が引越しのために貯めた100万円は、霊感商法の支払で消えてしまいました。おまけに採用試験の最終面接もパーです。

うつ病の寿美子のために誠治は踏んだり蹴ったりの目にあいます。就職も貯金もスタートからやり直しです。しかし、誠治は決して寿美子を恨んだりはしません。ダメな自分を認めてくれて、母親としていつも優しく見守ってくれていた寿美子を今度は自分が守ってあげたいと考えています。100万円は悪徳セールスマンへの縁切り金です。

さらに誠治は、好戦的な(?)姉の亜矢子(井川遥)を差し置いて、隣りの西本家のババア(坂口良子)に宣戦布告(?)をしました。誠治にしては思い切ったことをしたものです(でも、ウソはいかんです)。

 遺書書いていたんですよ、今までのこと全部。 ← ウソ

さて、このドラマのタイトルは「フリーター、家を買う。」です。来週が最終回ですが、このままでは宝くじにでも当たらない限り、誠治に家を買うのは無理です。どういう結末になるのでしょうか。

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2010年12月13日 (月)

菅首相は免許皆伝です!!

釣り師の。釣り師としては達人の域に達しています。

菅首相の「仮免」発言を批判=野党

時事通信 12月13日(月)0時48分配信

 自民党の小坂憲次参院幹事長は12日夜、菅直人首相が「これまでは仮免許だった」と発言したことについて、「仮免許で政権を運営されてはかなわない。一日も早く政権を明け渡すべきだ」と批判した。
 公明党の山口那津男代表は「むしろ鳩山内閣時代の副総理の期間が仮免許だったのではないか」と述べた上で、「仮免許で国益がどんどん損なわれたのであれば、即刻免許を返上すべきだ」と強調した。また、みんなの党幹部も首相発言について「失笑してしまう。語るに落ちた話だ」と指摘した。 

よくもまあ次から次へと突っ込みどころ満載の発言をしてくれるものです(愉快犯か?)。

思いつきで発言するはやめて、誰かに発言する内容をチェックしてもらってからしゃべったほうがいいのではないでしょうか。事前にチェックしてもらえば、数々の暴言、失言、妄言、寝言など、そんなこと言っちゃアカン(これシャレです)と必ずストップがかかるはずです。

しかし、仮免の人に事故の責任は問えません。仮免での事故は教官の責任です。ところが隣に座っている教官は仮免どころか全くの無免許だったりして。

 「しまった、また釣られちゃった……」

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2010年12月11日 (土)

二宮和也の「フリーター、家を買う。」・第8話を観る

誠治(二宮和也)はバイトで100万円貯まったら引越しをするつもりでいました。100万円で家を買うのは無理ですが、引越しならできます。何ヶ月かかったのか、土木工事のバイトで誠治はすでに70万円の貯金をしています。あと30万円です。

今どきパソコンのない事務所というのも珍しいですが、大悦土木の事務所にはパソコンがありません。パソコン操作ができる誠治は大悦土木の職長(大友康平)に過去の経費の整理を頼まれました。職長は事務作業でも土木工事と同じ時給を払うと言ってくれます。しかも、誠治が家に書類を持ち帰って仕事をしても、家での作業時間を申告すればその分の時給も払うというのです。しめたものです。今月は誠治にとって稼ぎ時です。

大悦土木の飲み会の席で、自分の父親を馬鹿にしたような誠治の態度に、職長が激怒しました。誰も頼ってくれない辛い職場でも父親は家族を養うために我慢して仕事を続けてきました。家族のために耐え難きを耐えて頑張ってきた父親に感謝の気持を持たないのはけしからんというわけです。中年オヤジの辛さが同年代の職長には我がことのようにわかるみたいです。

翌日、職長が誠治に言いました。

「誠治、お前が頼ってやれよ。オヤジっていうのはなあ、それが一番嬉しいんだよ」

職長の大悦貞夫は、ときには厳しいことも言いますが、誠治を自分の息子のように可愛がってくれます。誠治も職長を慕っていて、怒られても怒鳴られても職長の言葉には素直に耳を傾けます。誠治は就職活動について父親の誠一(竹中直人)にアドバイスを頼むことにしました。

たしかに、息子から頼られるというのは父親として悪い気はしないものです。誠一は就職活動に際しての履歴書の書き方から面接のの受け方についてまで、親身になって誠治にアドバイスをしてくれました(もっとも口調はいつものけんか腰でしたけど)。

誠治はナミキ医療技研という医療機器メーカーの採用試験に応募することにしました。なぜ誠治がこの会社を選んだのかは不明です。ただ、この会社は誠治にはハードルが高すぎるみたいでした。ハローワークの職員が誠治を見下したように言いました。

「まあ、思いつきでも何でもチャレンジするのは悪くないですけどね。応募するのは誰でもできますから」

それでも誠治は誠一のアドバイスのおかげでこの会社の一次面接に合格することができました。この一次面接の合格は誠治よりも誠一のほうが嬉しかったみたいです。連戦連敗だった(?)誠治の就職活動にも少し希望の光が見えてきました。
 
 
大悦土木の給料日がやってきました。誠治の今月の給料は324000円です。ずいぶんと稼いだものです。これで目標の100万円に到達しました。おそらく誠治がお金を貯めていることを知った職長が、気を利かせてわざと稼がせてくれたのだと思います。大悦職長って、怖いけど優しい人です。

給料日には誠治が真奈美(香里奈)に奢ることになっています。誠治の一次面接の合格祝いです。

誠治にとっても真奈美にとっても大悦土木は仮の職場です。誠治は就職が決まれば辞めることになるし、真奈美もやがては現場を離れて設計部門に移ることになります。誠治がいまの職場で働き続けているのは真奈美がいるからだし、真奈美が今の職場に留まっているのもおそらく誠治がいるからです。

真奈美は酔った勢いで不穏なことを口走っていました。

「辞めんなよ……誠治があたしに言ったんでしょ。何それって感じ。誠治はいつか辞めていくくせに……辞めんなよ、辞めんなよ、誠治」

女性の気持に鈍感な誠治に、真奈美が何を言っているのか理解できたでしょうか。

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2010年12月10日 (金)

二宮和也の「フリーター、家を買う。」・第7話を観る

第7話のサブタイトルは「怖さとつきあって、みな生きてる」です。土木工事にまつわる事故の話です。

大怪我をして病院に担ぎ込まれた豊川哲平(丸山隆平)は意識は回復しましたが、重症です。これからリハビリが大変です。医者からは、職場復帰の前に、まずは日常生活が送れることを目標に頑張って欲しいといわれてしまいます。哲平はひょっとしたらもう肉体労働(=土木工事の仕事)は無理かもしれないと考えてひどく落ち込んでしまいます。この人、ほかに出来ることがないんです。でも、あかり(岡本玲)に励まされてすぐに元気を取り戻しました。これからはあかりといっしょにリハビリを頑張るつもりみたいです。

喜嶋建設から大悦土木に出向(?)している千葉真奈美(香里奈)は現場の安全管理の責任者です。哲平の事故を防げなかったことに責任を感じてこれまた落ち込んでしまいました。事故の原因は突風で資材が倒れてきたことによるもので、運が悪かったとしか言いようがないです。誰の責任でもありません。それでも真面目で責任感の強い真奈美は、責任を感じて自分を責めます。ずるい人だと逆に怪我した人の不注意を責めるんですけどね。

真奈美が安全管理を担当していて事故が起きたのはこれで二度目です。また事故が起きるのではないかと考えると、真奈美は怖くなって仕事ができなくなってしまいました。しかし、土木工事の男臭い職場に紅一点の真奈美は貴重な存在です(あかりは女とみなされていない)。このまま真奈美に辞められてしまっては一大事です。根性なしの誠治(二宮和也)が土木作業にやりがいを感じてここまで頑張ってこれたのも真奈美のおかげです。

誠治は真奈美に辞めないようにと説得しますが、真奈美のことを心配していたのは誠治だけではありません。しばらくは迷っていた真奈美でしたが、現場で働く仕事仲間のラブコールに励まされて何とか職場に復帰することができました。そのとき、「私は何かを持っています。それは仲間です」と言ったかどうかはわかりません。
 
 
第7話は一話完結型のドラマみたいになっていて、ストーリー展開上、特にコメントする内容がありません。いったいフリーターに家はいつ買えるのでしょうか。
 
 
これまであまり触れてこなかった登場人物について少し書いておきます。

まず、長年、寿美子(浅野温子)にいやがらせをしてきた武家の隣りに住んでいる意地悪ババアの西本幸子(坂口良子)です。幸子は罰が当たったのか、怪しげなセールスマンに騙されて30万円もする印鑑を買わされてしまいました。息子との関係がうまくいってないことにつけ込まれたのです。簡単に引っかかるのでこいつはカモだと思われたのか、今度は表札を売りつけられようとしています。この幸子もどこか精神を病んでいるような雰囲気があります。まだ耄碌するほどの年ではないのにね。

次回はこの悪徳セールスマンが武家にもやって来る気配です。寿美子が狙われています。どうなるのでしょうか。
 

次に誠治の姉です。誠治には7年前に開業医と結婚した亜矢子(井川遥)という姉がいます。実に逞しい姉です。嫁ぎ先の病院では、イヤ味な姑や「出来ちゃった婚」の亜矢子を院長夫人として認めようとしない嫉妬深い看護師を相手に悪戦苦闘しています。でも、芯がしっかりしているので挫けることはありません。亜矢子は別に院長夫人の座を狙って開業医と結婚したわけではありません。好きだった人がたまたま開業医だったというだけのことです。

亜矢子は思ったことは遠慮しないで何でもはっきりと言うタイプの女性です。誠治といっしょに父親の援助交際相手が住んでいるアパートに乗り込んだときも、あまりにもストレートに言いにくいことを言うので、思わずのけぞってしまいました。だれに似たのでしょうか?
 
このまま誠治と真奈美が接近していくと、誠治は将来的に真奈美と結婚することになるかもしれません。真奈美が誠治を見る目線は亜矢子のそれとよく似ています。真奈美と亜矢子は知り合えばすぐに意気投合すると思います。二人で誠治をいじめて(=愛のムチ)盛り上がるのではないでしょうか?

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2010年12月 9日 (木)

二宮和也の「フリーター、家を買う。」・第6話を観る

武誠一(竹中直人)と見知らぬ若い女性(玄里)の関係は「肉体関係なしの援助交際」でした。

喫茶店で偶然知り合って、若い女性から頼られたことが嬉しくて、誠一のほうから金銭的な援助を申し出たようです。女性は勉強時間を削ってアルバイトをしながら公認会計士を目指している受験生でした。誠一は会社では部下から見下され、家では息子が反抗期(?)でことごとく親に反抗してきます。本当は寂しかったみたいです。誠治(二宮和也)にたいする高圧的態度も寂しさの裏返しです。

最初は浮気ではないかと疑っていた誠治も、ある程度事情が分かると誠一の気持も理解できたようです。気持の上で誠一に少し歩み寄るようになりました。一度は家を出てカプセルホテルで暮らしていた誠一も寿美子(浅野温子)の退院に合わせて家に戻ってきました。

息子の誠治のような真面目だけど気の弱い男が結婚して子どもが出来たりすると、一家のあるじとしての使命感を感じて、よせばいいのにやたらと頑張り出すものです。そういうとき、気合が入りすぎると、父親の誠一のように押し付けがましい頑固オヤジになってしまうのかもしれません。この親子は似ていないようでいて実はよく似ているのかもしれません。

 
公式サイトの相関図を見ると武誠一は55歳で中堅商社の経理部長ということになっています。信じられません。中堅商社でも部長クラスなら年収は1000万円を超えているはずです(ちなみに、大手総合商社・三菱商事は、従業員の平均年齢が42.9歳で平均年収は1301万円です)。

武家はローンがあるわけではなく、家賃は社宅(?)で月5万円です。しかも、ふたりの子供はすでに成人していて教育費もかからなくなっています。誠一は何も高級マンションに贅沢なおねだりをする愛人を囲っていたわけではありません。学生との援助交際で多少散在したからといって武家の家計はビクともしません。援助交際のせいで武家の家計に余裕がないという理屈はおかしいです。誠一はギャンブルをするわけでもなく、援助交際以外に無駄金はほとんど使っていないと思います。そうだとすれば、武家には困るくらいお金が溜まっていても不思議はありません。キャッシュで家の一軒ぐらい買えてもよさそうです。武家の家計はいったいどうなっているのでしょうか。
 
 
第6話は、武家のゴタゴタと同時に千葉真奈美(香里奈)の失恋が大きなテーマとなっていました。真奈美は、先輩社員の山賀亮介(眞島秀和←「ゲゲゲの女房」では「週刊少年ランド」の編集長だった)に憧れています。山賀はすでに結婚しているため、憧れ以上の感情を抱いて真奈美が突っ走れば不倫になります。真奈美が山賀に憧れていることは、大悦土木の作業員はみんな知っています。

山賀に対する真奈美の態度に、誠治が嫌な顔をして、不倫はやめろと言わんばかりに「家族の気持、ちゃんと考えろよ」とわが身の辛さを真奈美に訴えていました(このときはまだ誠治は父親の誠一が不倫をしていると思い込んでいた)。

それにしても山賀亮介はストイックな男です。一時の感情に駆られて肉欲に溺れたりはしません。真奈美と二人だけになって、真奈美に思いを打ち明けられても、キッパリと断ってしまいました。優しいんだか冷たいんだか……。

突然ですが、昔、「お座敷小唄」という歌がありました。

 ♪好きで好きで 大好きで
  死ぬほど好きな お方でも
  妻という字にゃ 勝てやせぬ
  泣いて別れた 河原町

最初、この歌は、男に死ぬほど好きな女がいて、でもその女はすでに結婚していて人妻だったという歌だと思っていました。久しくそのように思い込んでいたのですが、最近そうではないことに気がつきました。正しくは、女に死ぬほど好きな男がいて、でもその男はすでに結婚していて妻がいたという歌でした。この歌詞は女性が歌うパーツです。歌詞の意味を女性の立場で解釈しなくてはいけません(失恋した真奈美が歌うのにふさわしい歌です)。

 

さて、真奈美が「不倫女」なら星野あかり(岡本玲)は「騙され女」です。あかりは合コンで知り合った弁護士の西本和彦(横尾渉)に一度遊ばれただけで捨てられてしまいました。でも、あかりには、和彦のようなワルではなくて、本気であかりのことを思ってくれている相手がいました。土木作業員の豊川哲平(丸山隆平)です。明るく陽気な哲平は何度断られてもめげることなくあかりを食事に誘ってきます。女は押しの一手に弱いものです。あかりも最後は根負けして哲平の誘いを受け入れてくれました。あかりは「幸せ」に対する考え方を変えたみたいです(それにしても、「星野あかり」とは、いかにも幸が薄そうな名前です)。

せっかくあかりといっしょに食事ができることになったのに、哲平が喜んだのもつかの間でした。哲平は現場の事故で瀕死の重症を負ってしまいます(鉄骨が倒れてきたらしい)。こういうのを「好事魔多し」というのでしょうか(ちょっと違うかな?)。

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2010年12月 8日 (水)

小池真理子の「無花果の森」・第319回(12/8)まで

この小説は、想像力を働かせて次ぎの展開を予想するとだいたいはずれます。上と思えば下、右と思えば左、前と思えば後、とにかくよくはずれます。「そりゃないだろう」と思っても小説の世界は作者が神様です。神様の御宣託には従わなくてはなりません。残念無念です。

 住んでいる場所が特定されないよう、仕事が休みの日に、川崎から東京都内まで電車で出て、秋葉原駅近くのポストに封書を投函した。

この文章を素直に読めば、泉はJRの川崎駅から東海道線(または京浜東北線)に乗って秋葉原に行ったと解釈するしかありません。川崎市多摩区説は却下です。封書を投函したのがなぜ秋葉原だったのかは不明です。何か買いたい家電があったのかもしれません。

ポストに投函された封書には、泉が署名捺印をした離婚届が入っています。あとは吉彦が署名捺印をして区役所に提出すれば離婚が成立します。でも、吉彦のことですから、めんどくさがってほったらかしにするかも知れません。
 
 
かつて泉が住んでいた新谷吉彦の自宅は東京の目黒区にあります。最寄の駅は東横線の都立大学駅です。JRの川崎駅からは、直線距離にして15km程度しか離れていません。泉が川崎に長く住んでいれば、どこかで知り合いとバッタリ出くわしてしまう可能性はかなり高いです。
 
失踪直後、東京から遠く離れた名古屋駅でさえ知り合いに出くわすのではないかとビクビクしていた泉です。川崎で暮らすというのはかなり辛いと思います。気が休まらないのではないでしょうか。天坊八重子も因果な場所を紹介してくれたものです。
 
 
さて、「終章」に入ってからというものこの小説も小説内の時間の流れが速くなってきました。時は流れて(2010年の)3月3日(桃の節句)です。三浜プロの三浜作次郎と人気歌手の大道ひなが覚せい剤取締法違反で逮捕されました。大道ひなは三浜プロのトップアイドルです。連日テレビや新聞、週刊誌がこぞってこの衝撃的ニュースを報道しました。号外が出たかもしれません。

それからきっかりひと月後、『週刊時代』に「三浜プロをめぐる薬物汚染の驚くべき真相」と題された特集記事が大々的に掲載された。

副題には「裏で取材にあたった本誌記者も被害者に」とあった。

週刊誌の記事というのはタイトルは衝撃的でも、読んでみるとたいしたことなかったりすることが多いです。しかし、この記事は違っていました。泉は何度も繰り返して記事を読みました。それは明らかに鉄治が書いた記事でした。

だとすると鉄治の冤罪はすでに晴れているのでしょうか。どうして泉に連絡してこないのでしょうか。泉の方からだって連絡の方法はあります。泉はどうして『週刊時代』の編集部に問い合せないのでしょうか。こういうときに、ただ淋しがっているだけで何もしないのが泉の悪い癖です。
 
  
さらに時は流れました。光陰矢のごとしです。春が過ぎて夏が過ぎて早くも晩秋となりました。11月です。言い忘れましたが、泉の誕生日は10月です。強引に作者の誕生日と同じということにすれば10月28日です。免許証を更新した日から逆算するとだいたいそんな感じになります。去年(2009年)の10月に39歳の誕生日を迎え、今年の10月には40歳になっています。

  

11月半ばのことです。その日は冷たい雨が降っていました。いつものようにクリーニング店で働いていた泉のところに、天坊八重子が亡くなったという知らせがありました。一昨日、絵の制作中に八重子は急死したそうです。今夜が通夜で明日が告別式です。

 到着の少し遅れた泉が、係りの男に案内されて入った天坊八重子の告別式会場は、線香の香りと花の香りが混ざり合って、むせ返るほどだった。

この天坊八重子の告別式に鉄治が現れるのではないでしょうか(たまには予感が当たってほしいものです)。

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2010年12月 7日 (火)

二宮和也の「フリーター、家を買う。」・第5話を観る

ドラマのタイトルが「フリーター、家を買う。」となっているので、フリーターの誠治(二宮和也)がどうやって家を買うのだろうかと注目していたのですが、目標にしただけでいっこうに家を買う話が出てこなくなってしまいました。どうなっているのでしょうか?
 
 
誠治の父親の誠一(竹中直人)は、不器用な頑固オヤジです。その頑固オヤジがどういう風の吹き回しか、ワインを買ってきてうつ病の妻・寿美子(浅野温子)に飲ませてしまいました。

いつもは優しさのカケラもない誠一ですが、そのワインは誠一が遠い昔に寿美子にプロポーズしたときのワインでした。誠一の気遣いが嬉しかったのか、寿美子は何も言わずにワインを飲んでしまいました。

うつ病の薬を飲んでからお酒を飲むと、お酒と薬の相互作用でうつ状態が悪化するらしいです。で、どうなったからというと、寿美子は朦朧とした意識の中で自傷行為をしてしまいます。リストカットです。首を吊ったりしたら大変ですが、リストカットなら死ぬことはないので大丈夫です。寿美子が手首から血を流して倒れているところ発見したのは誠治です。とりあえず寿美子を入院させて様子を見ることにしました。

誠治は「なんでお母さんにワインなんか飲ませたんだ」と誠一をなじります。誠一は寿美子のうつ病を認めようとはせず、主治医の話を聞いていなかったため、うつ病の薬にお酒はよくないということを知りませんでした。頑固オヤジがたまに気を利かせるとこういうことになります。

誠一と誠治は口を開けばすぐに罵り合いの喧嘩です。誠一は父親の威厳を保とうと考えているのか、誠治に対しては常に高圧的な話し方をします。それが誠治の勘に障ります。だんだん売り言葉に買い言葉になってきてヒートアップしてきます。でも、いくらヒートアップしたからといって、息子が「父親がオヤジなら生まれてこなくてもよかった」などと言い出すのは反則です。いくら親が憎くてもこんなこと言ってはいけません。どんなバカ息子でも二十歳を過ぎればこういうことは言わなくなるものですよ。

誠治は真奈美(香里奈)から、いつも本音で喧嘩ができる誠治の家庭がうらやましいと思われています。真奈美に「ねえ、今度お父さん(飲みに)誘ってみなよ」と勧められました。誠治が言うことには「誘ったところで、お前、熱でもあんのかって言われて終わりだよ」だって。何とも虚しい親子です。

公式サイトの相関図を観ると、誠治と真奈美は二人とも25歳という設定になっています。しかし、どうみても真奈美のほうが誠治よりも5歳ぐらい年上に見えます(貫禄あるし)。恋愛ドラマではなさそうなので、この二人が好きだのどうだのということにはなりそうもありませんが、そういうのもいいかもしれません。この二人を見ていると、こういう(色気抜きの)男女関係(姉と弟のようなお友達)も悪くないな、という気がしてきます。
 
 
さて、誠治は、誠一が寿美子に飲ませたワインがプロポーズのときの思い出のワインであったことを知って、「オヤジもいいとこあるじゃん」と思ったのか、一大決心をして誠一を飲みに誘おうと考えるようになります。

ある日、誠治は誠一の会社の近くで誠一を待っていました。慣れないことなのでどういうふうに声をかけようかと誘いのセリフをいろいろ考えてるところに、退社した誠一がやってきました。誠治は誠一に声をかけようとしますが、その時です。誠一はやって来た見知らぬ若い女性と楽しそうに話をしながら行ってしまいました。誠治が近くにいたことにはまったく気がついていません。誠治はオヤジの知られざる一面を見てしまったようで愕然とします。

誠一と若い女性の関係は何となく援助交際のように見えます。しかし不器用な誠一に援助交際などという気の利いたことができるとは思えません。なにか事情がありそうです。隠し子かな?

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2010年12月 5日 (日)

小池真理子の「無花果の森」・第316回(12/4)まで

泉は天坊八重子のはからいで、ワンルームマンションを「相場の半額以下」で借りられるようになりました。やはり亀の甲より年の功です。八重子は泉が極貧生活に陥らないように家賃の心配までしてくれていました。家賃が相場の半額以下で済めば薄給でもビールぐらいは飲めそうです。

泉が住むことになるワンルームマンションは、空室になる前は横浜の大学に通う男子学生が住んでいました。この「横浜の大学」とはどこのことでしょうか。一般的に考えれば、横浜国立大学か横浜市立大学です。でも、これだと泉のアルバイト先を川崎市多摩区とするのは無理です。同じ川崎市でも、もっと多摩川の下流のほうでないと通学に不便です。

しかしです。横浜市には桐蔭横浜大学という大学もあります。桐蔭横浜大学だって(所在地が)横浜市の大学であることに変わりはありません。桐蔭横浜大学なら川崎市の多摩区からでも楽に通学できます。向ヶ丘遊園(または生田)から小田急線の下り各駅停車に乗って柿生で降ります。柿生からバスに乗れば桐蔭横浜大学に行けます。通学時間は乗り継ぎを考慮しても40分程度です(柿生からはバスで約20分)。

まあ、全国的に広く流布している川崎市のイメージというのは、東京と横浜に挟まれた京浜工業地帯といったところだと思います。また、特に断りがなければ、川崎市=JRの川崎駅周辺と考えるのが普通です。泉のアルバイト先について「川崎市多摩区説」は残念な結果(つまりはずれ)になってしまう可能性が濃厚になってきました。

 泉が引っ越し先を訊ねても、八重子は頑として教えようとはしなかった。
 残り少ない人生を、無駄な人間関係に邪魔されながら生きるつもりはない、あたしは絵を描くことだけに時間を使う、というのがその理由だった。

八重子が引っ越し先を頑として教えなかったのは、「調べて訪ねて来い」という意味です。泉が訪ねて行けば、「どこで調べたんだい、まったく。邪魔するんじゃないよ」などと言いながら、内心では嬉しくてしょうがなかったりします。へそ曲がりの本音を知るには、言っていることの反対を考えるといいです。本当は泉が訪ねてきてくれるのを首を長くして待っているんですよ、きっと。

だいたい無駄な人間関係に邪魔されたくなかったら、身の回りの世話を泉にまかせて岐阜大崖で暮らすのが一番です。画廊の主・白木正夫の勧めで東京に引っ越してしまえば、白木正夫の家族といっしょに暮らすことになります。これまでのように言いたい放題の憎まれ口を叩くことも難しくなります。まさにわずらわしい人間関係に身を投じるようなものです。「お寒うございます」とか「今日はよいお天気で」とか、めんどくさい挨拶もしなくてはいけなくなります。絵を描くことに専念するどころか余計なストレスを抱え込むことになるのではないでしょうか。天坊八重子のストレス解消とリフレッシュのためにも泉には是非訪ねていってあげて欲しいです。そして天坊八重子の罵詈雑言をニコニコしながら聞いてやってください。

 一人で大晦日を過ごし、正月を迎え、三日の朝から早速、大型スーパーの中にあるクリーニング店での仕事を始めた。

いよいよ泉の川崎での生活が始まりました。それにしても気になるのは鉄治のその後です。冤罪が晴れていればとっくに釈放されているはずです。そうでなくても泉に何の連絡もないのはおかしいです(鉄治は泉の携帯の電話番号を知っている)。

たとえば、覚せい剤取締法違反で逮捕された酒井法子のケースを考えてみます。

2009年 8月 4日 任意同行を拒否して失踪
      8月 8日 出頭
      8月28日 覚せい剤取締法違反(所持)で起訴
      9月11日 覚せい剤取締法違反(使用)で追起訴
      9月17日 保釈(保釈金500万円)
     10月26日 初公判
     11月 9日 判決(懲役1年6月 執行猶予3年)

酒井法子のケースでは、8月8日に出頭して11月9日にはすでに判決が出ています(検察側・弁護側とも控訴せず刑が確定)。出頭から判決まで約3ヶ月です。鉄治の場合、冤罪が晴れなかったとしても、4ヶ月も5ヶ月も勾留されたままというのは変です。もし保釈になっているとしたら、泉にまったく連絡がないというのはどういうことなんでしょうか。

1.泉のことはもう忘れてしまった
2.泉に迷惑がかかるのでわざと連絡してこない
3.なんらかの理由でまだ勾留されている

いくつかの可能性が考えられますが、泉は鉄治についてどうして「週刊時代」の編集部に問い合せないのでしょうか。嘱託とはいえ鉄治は「週刊時代」の記者でした。編集部が鉄治の消息について何も知らないということはないと思います。

一月末の或る朝のことです。三浜プロ所属のタレント、水沢なつみが逮捕されたというニュースがテレビのワイドショーで流れました。覚せい剤取締法違反の容疑です。

鉄治が警察に事情を説明していれば、その段階で水沢なつみは参考人として警察の取調べを受けているはずです。水沢なつみは政治家の秘書みたいに根性がありません(たぶん)。警察で厳しく取調べられれば簡単に本当のことをしゃべってしまいそうな気がします。それでも一月末まで無事でいられたということは、案外根性があったのかもしれません。逆にいうと鉄治の冤罪は晴れなかったということです。

二月になった。鉄治に関する噂は相変わらず何も耳に入ってこなかったが、仕事にもなれ、生活は少し落ち着いてきた。泉は意を決し、携帯を非通知設定にしてから、新谷の携帯に電話をかけた。

泉は電話に出た吉彦に離婚したい旨を告げました。あんなに恐れていた吉彦に泉のほうから電話をするとは意外です。離婚の申し出は当然ですが、泉はなにか重大な決意をしたのに違いありません。

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2010年12月 4日 (土)

実写版宇宙戦艦ヤマト「SPACE BATTLESHIP ヤマト」の楽しみ方

実写版宇宙戦艦ヤマト「SPACE BATTLESHIP ヤマト」が話題になっていますが、長く続いているシリーズには熱狂的ファンというのがいるものです。この熱狂的ファンというのは「宇宙戦艦ヤマトはこうでなければならぬ」という思い込みが激しく、新作がちょっとでも自分のイメージに合わないと「こんなのヤマトじゃない!!」と烈火のごとく怒り出します。

しかし、最新技術を駆使したCG映像で「宇宙戦艦ヤマト」を21世紀のこの時代に超話題作として蘇らせてくれたことに、ヤマトファンは感謝しなくてはいけません。こういう映画は広い心で鑑賞することが大切です。今まさに日本の「宇宙戦艦ヤマト」が世界の「宇宙戦艦ヤマト」になろうとしています。

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」について毀誉褒貶の激しいユーザーレビューを流し読みしていたら、誰かがうまいことを言っていました。

    感謝の気持のない人間に感動はない!!

 

ところで、「SPACE BATTLESHIP ヤマト」のエンディング曲は、エアロスミスのスティーヴン・タイラーが起用されているみたいですが、これは海外進出を視野に入れての人選だと思います。

過去の「宇宙戦艦ヤマト」シリーズには主題歌のほかにいろいろ挿入歌がありました。劇場用アニメ映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」(1978)のエンディング曲「ヤマトより愛をこめて」は、なんと沢田研二が歌っていました。アニメ版にこの歌をかぶせても何となくシックリきませんが、実写版なら違和感はないと思います。実写版・宇宙戦艦ヤマトのどこかにこの歌を挿入して欲しかったです(無理か?)。

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2010年12月 3日 (金)

「政治とカネ」(海部俊樹著・新潮新書)を読む

ホリエモンこと堀江貴文氏は「徹底抗戦」(集英社文庫)という告白本の中で次のように述べています。

 この本に書かれたことは、私側からみたライブドア事件の「真実」である。当然私が書いているわけだから、どうしても我田引水的な内容は多くなる。そのことをできるだけ自重したつもりではあるが、広い心で読んでいただきたいと思う。

こういう言わずもがなのことを正直に言ってしまうところがホリエモンの欠点でもあるし長所でもあります。何ごとにも正直なんですね。

確かに、回顧録とか告白本というのは、どんなに自重しても自己正当化の心理が働いてしまうものです。元内閣総理大臣・海部俊樹の「政治とカネ」という回顧録も、ほとんどが我田引水的な自慢話です(本人はそうではないと言い張っている)。したがって最後まで読み切るには少し敬老精神が必要になります。広い心で読みましょう。
 

この「政治とカネ」という回顧録の中で、唯一ためになったのは、小沢一郎に言及している部分です。海部俊樹も小沢一郎には相当頭にきていたらしく、その怒りのほどが伝わってきます。
 
小沢一郎が新進党の党首だったころ、「小沢氏との確執で、党員たちが櫛の歯が抜けるように離党していった」そうです。

離党者が続出したのは、小沢一郎の「問答無用のやり方、会議に出ないこと、密室政治、人を呼び出す傲慢さ、反対派への報復人事」、これらへの反発が原因だったとされています。「黙って俺の言うことを聞け」と言わんばかりの小沢一郎のやり方や態度というのは今もそれほど変わっていないような気がします。良識のある政治家なら誰でも小沢一郎とは距離を置きたくなるのではないでしょうか。

現在小沢一郎を強く支持している民主党の議員というのは、小沢一郎を利用しようとしている「悪人」かあるいは良識の欠如した「善人」かのどちらかです。
 

   「担ぐ御輿は、軽くてパーなヤツが一番いい」

これは小沢一郎が海部内閣の幹事長だったときの言葉です。「軽くてパーなヤツ」というのは時の内閣総理大臣・海部俊樹のことです。人づてにこの件を聞いた海部俊樹が激怒して(?)小沢一郎に問い質したところ、小沢一郎は「言った憶えは断じてない」と答えたそうです。要するに「言ったかもしれないが、記憶にありません」ということですね。

小沢一郎のこういう考え方も今もそれほど変わっていないと思います。民主党の代表選で小沢一郎に支持されたら、小沢一郎から「軽くてパーなヤツ」と思われているということです。間違っても自分を評価してくれる理解者だと思ってはいけません。

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2010年12月 2日 (木)

小池真理子の「無花果の森」・第313回(12/1)まで

銀座にはうんざりするほどたくさんの画廊があります。いったい何軒ぐらいの画廊あるでしょうか。

①約100軒   ②約150軒   ③約200軒   ④約250軒   

答えは④の約250軒です。銀座というところは画廊の密集地帯ですね。

銀座の画廊 → http://www.ginzanogaro.com/content/view/42/61/

さて、しばらく凪状態が続いていた「無花果の森」ですが、塚本鉄治が出頭してしまってからというもの、展開が急になってきました。何か不吉なことが起きそうな予感がします。

長年岐阜大崖で暮らしてきた天坊八重子が東京に引越すことになりました。八重子の作品を独占的に扱っている白木画廊の主(あるじ)・白木正夫の勧めで、アトリエを東京に移すことにしたのです。天坊八重子は足腰が弱っていて要介護状態です。ヘルパーとして泉もいっしょに連れて行くのかと思ったら、泉は年内いっぱいで暇を出されてしまいました。

このままでは泉は路頭に迷ってしまいます。でも、天坊八重子もそこまで無慈悲ではありません。ちゃんと次ぎの仕事を用意してくれていました。川崎市内の大型スーパーに併設されているクリーニング店での仕事です。泉も岐阜大崖を離れなければなりません。廃墟のような街でも住めば都です。いざ離れるとなると名残惜しいのではないでしょうか。

  

天坊八重子はすでに泉が有名な映画監督である新谷吉彦の妻であることを知っています。それでも、泉がその身元を伏せて高田洋子(泉の偽名)のままで働けるように取り計らってくれました(いいとこあるじゃないか)。

朝九時から夜八時までの時間帯で、自由な勤務時間を選ぶことができた。週休二日。アルバイト扱いなので、給料はさすがに少なかったが、泉にとっては充分だった。

泉は考えが甘いです。アルバイトの収入だけで、部屋を借りて家賃を払って食べていくとなったらそりゃあ大変です。住み込みの家政婦で家賃も食費も必要ないのとはわけが違います。おそらく給料の半分は家賃で消えていきます。食べていくのが精一杯でビールも飲めなくなるのではないでしょうか。極貧生活ですよ。

  

ところで、あくまでも推測ですが、

1.天坊八重子が世話になる白木正夫のマンションは調布市にある
2.「東京郊外にある公立斎場」も調布市にある
3.泉の新しいアルバイト先のスーパーは川崎市多摩区にある

こう考えると、泉のアルバイト先がなぜ川崎市なのか謎が解けます。東京方面から見ると、多摩川を挟んで調布市の対岸が川崎市多摩区です。天坊八重子に何かがあったとき、泉はすぐにでも駆けつけることができます。いや、アルバイト先が多摩区でも調布市から通うことだってできます。

天坊八重子はけっこう泉が気に入っていて、東京に引越しても近くにいて欲しかったのかもしれません。ただ、どうやら亡くなったのは天坊八重子の線が濃厚になってきました。大作が完成して命の火が消えてしまったのか、住み慣れた土地を離れて寿命を縮めてしまったのか……。

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2010年12月 1日 (水)

政党支部否認の法理

会社法には「法人格否認の法理」というのがあります。その意義と内容は以下の通りです。

意義と内容

法人格否認の法理とは、法人制度の目的に照らして、ある会社の形式的独立性を貫くことが正義・衡平の理念に反すると認められる場合、または会社という法形態が法人格の目的をこえて不法に利用されている場合に、その会社の存在を全面的に否定するのではなく、その法人としての存在を認めつつ、特定の事案の妥当な解決のために必要な範囲で、一時相対的に、法人格の機能(会社と社員の分離)を否定して、会社と社員(支配株主等)を同一視する法理。

詳しくは → http://www.law.okayama-u.ac.jp/~ryusuzu/022a02.htm

たとえば、会社と社員(支配株主等)は別だと主張しても(時と場合によっては)そういう屁理屈は通用しませんよ、ということです。次のような判例があります。

昭和44年最高裁判決(最判昭44.2.27民集23.2.511)

事案:複雑なので省略

判旨:「…法人格が全くの形骸にすぎない場合、またはそれが法の適用を回避するために濫用されるが如き場合においては、法人格を認めることは、法人格なるものの本来の目的に照らして許すべからざるものというべきであり、法人格を否認すべきことが要請される場合を生じるのである。…会社という法的形態の背後に存在する実態たる個人に迫る必要を生じるときは、会社名義でなされた取引であっても、相手方は会社という法人格を否認して恰も法人格がないのと同様、その取引をば背後者たる個人の行為であると認めて、その責任を追及することを得、そして、また、個人名義でなされた行為であっても、相手方は商法504条を俟つまでもなく、直ちにその行為を会社の行為であると認め得る…」

詳しくは → http://www.law.okayama-u.ac.jp/~ryusuzu/022a02.htm

どういう場合に法人格が否認されるかというと、その要件は以下の通りです。

法人格否認の要件

(1)法人格の濫用事例
 A支配の要件=法人格がその背後にあって支配している者により単なる道具として意のままに支配されていること。
 B目的の要件=法人格を違法・不当な目的のために利用するという目的。

(2)法人格の形骸化事例
 法人とは名ばかりで実質的には個人営業又は親会社の営業の一部門にすぎない場合。

詳しくは → http://www.law.okayama-u.ac.jp/~ryusuzu/022a02.htm

この「法人格否認の法理」というのはなかなか示唆に富んでいます。これと同じような考え方で、政治資金に関しても、迂回献金のような悪質な脱法行為を取り締ることはできないでしょうか。たとえば、政治団体同一の法理とか、政党支部否認の法理(政党支部と個人の資金管理団体を同一とみなす)とか。

会社法には形式よりも実態を重視する法人格否認の法理という考え方が厳然として存在しているのに、政治資金に関しては形式さえ整っていれば何でもありのデタラメ振りが横行しています。どうも納得できません。

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