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2011年1月10日 (月)

角田光代の「空の拳」・第16回(1/8)まで

「空の拳」という小説は場面転換が頻繁に起きます。角田光代という人の小説にもともとこうした特徴があるのか、それとも新聞の連載小説であることを意識して場面転換を多くしているのか、詳しいことはよくわかりません。とにかく今まで読んだことのないユニークな小説です。印象としてはマンガを読んでいるような感じです。

この小説のもうひとつの特徴は夥しい数の登場人物(の名前)が出てくることです。場面が変わるごとに新しい登場人物が出てきます。中には二度と登場しない人もいるかもしれません。今のところ確実に重要と思えるのは主人公の那波田空也とトレーナーの有田正宗です。

 

さて、第13回からです。空也は練習生として鉄槌ジムに通うことになりました。有田がいい人だったので、とりあえずくさいのとうるさいのは我慢することにしたみたいです。

そして練習の初日です。バンテージの巻き方を教えてもらってから、まずは縄跳びです。空也は十日ぐらい前に入会した坂本秀志路という小柄な青年と知り合いになって、並んで縄跳びを始めました。

ところがです。空也は信じられないくらい運動神経が鈍く、縄跳びを始めたとたんに縄が足に絡まって転んでしまいました。隣でそれを見ていた坂本秀志路が、うふふ、とかすかに笑いました。精神のバランスを保つためには、ときには自分を合理化するための言い訳も必要です。

ぼくはべつにプロとか目指してないから。あまりの恥ずかしさのために空也は胸の内で言い訳をした。ただ取材しにきているだけだから。ふつうの編集者は、ここまでやんないから。

縄跳びに続いて、サンドバッグ打ちやパンチングボール、ダブルパンチングボールを習いました。でも、空也が満足にこなせるメニューはひとつもありませんでした。あまりのひどさにトレーナーの有田は空也を見捨てて(?)坂本だけに熱心な指導をするようになりました。
 
 
ボクシングの基本はジャブとストレートです。ジャブについて、Wikipedia は次のように解説しています。

腰の回転を使わず腕の瞬発力をもって放つため、相手に与えるダメージは比較的大きくない。ジャブはダメージを与えることに主眼を置かず、相手を牽制し間合いを計ることで試合をより有利にコントロールすることを目的としている。特に近代格闘技においてその意味合いが強く、突進してくる相手の出鼻を挫く、正確に当て続けることでポイントを稼ぐなど、試合の中でジャブが有効とされる局面は非常に多い。

しかしいかに力を抜いた軽いパンチといえども、訓練を積んだ競技者が放つジャブを被弾し続ければ体力の消耗は免れない。元WBC世界ライト級チャンピオンのガッツ石松は「世界レベルの選手が放つジャブは効く」と発言している。またカウンターのタイミングでのジャブは、ダウンを奪うことも出来る。

ボクシングの格言に「左を制する者は世界を制する」という言葉がある。これはボクシングにおいてジャブがいかに大切であるかということを指し示している。

威力を犠牲にしてスピードを極限まで高める特性から、しばしば格闘技における最速の打撃技とも称される。

これを読んだだけでもボクシングにおいてジャブがいかに重要であるかがわかります。

「あしたのジョー」で、丹下段平が少年鑑別所のジョーに送った「あしたのために」(葉書)は、その1がジャブ、その2が右ストレートでした。

あしたのために その1 【ジャブ】
攻撃の突破口を開くため、或るいは敵の出足を止める為、左パンチを小刻みに打つ事。
この際、肘を脇の下から離さぬ心構えで、やや内角を狙い、えぐり込む様に打つべし。
正確なジャブ3発に続く右パンチは、その威力を3倍にするものなり。

あしたのために その2 【右ストレート】
左ジャブで敵の体制を崩し、突破口を見出せば、すかさず右ストレートを打つべし。
これ拳闘における基本なり。
右ストレートは、右拳に全体重を乗せ、まっすぐに目標をぶちぬく様に打つべし。
この際、打ったコースと同じ線上を同じスピードで引き戻す事。
一発でKOを生む必殺パンチなり。

 

空也は坂本をまねて、鏡の前でリズミカルに、ジャブ、ジャブ、ストレート、ジャブ、ジャブ、とやってみた。うん、いいんじゃない、と思ったとき、盛大な笑い声が聞こえた。鏡の前でほかの練習生を指導していたトレーナーが、空也を見て笑い転げていた。

……残念無念です。おそらく空也のはボクシングというよりもタコ踊りみたにいなっていたのだと思います。こういうのって、笑っちゃいけない、笑っては失礼だと思うとよけいおかしくなってきて大爆笑になってしまいます。決して悪気はないんです……何だか「春菜の写真」みたい。

ボクシングをやっている人を基準にすれば、空也は頭がいいほうです(たぶん)。身体で覚えるのが無理なら、頭を使って(=本を読んで)ボクシングを理解しようと考えました。練習の帰り道、空也はボクシングの本を購入しました。

今日習ったジャブ、ストレート、フックを、書かれた言葉を頼りにひととおりやってみた。パンチを出す方向に体重を移動させるとか、力を逃がさないようにして右肩を前に押し出すとか、読めばすぐわかるのに、思うように体が動かないのがもどかしかった。

一般的には、(スポーツというのは)言葉で説明されてもわからないけど体が勝手に動いてしまう、というのが普通だと思います。ところが空也の場合はまったく逆です。読めばすぐわかるのに、体が思うように動きません……なんだか前途多難です。

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