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2011年2月 7日 (月)

角田光代の「空の拳」・第37回(2/3)まで

 試合観戦の二日後、仕事を終えて空也がジムにいくと、すでに立花望はリングでシャドーをしていた。はじめての試合観戦で、文字どおり泣くほど興奮した空也にとって、試合などなかったかのようないつも通りのジムの風景は、なんだかもの足りなかった。

試合観戦の二日後といえば8月25日です。25日はサラリーマンにとっては給料日です。給料泥棒(?)の空也にも8月分の給料が振り込まれているはずです。練習後、空也は立花望といろいろ話がしたいと思って、望を食事に誘いました。もちろん空也のおごりです。

横で話を聞いていたトレーナーの有田正宗が、望と空也を二人だけにしてはまずいと思ったのか、「おれもいっしょにいく」と言い出しました。有田は空也の書く原稿をチェックしたがっているし、どうもなにかよからぬこと(?)をたくらんでいるみたいです。

早稲田通り(勝手に決めた)の料金の異様に安い焼肉屋で空也と有田と望の三人は七輪を囲みました。給料日なんだからもっと豪華なところに招待すればいいのにね。せめてしゃぶしゃぶにすればよかったのに(空也はケチです)。

空也が望に何を訊いても答えるのは有田でした。有田は望の経歴から鉄槌ジムに入会した経緯まで、立て板に水のごとくしゃべりまくります。望にはしゃべらそうとしません。望はただあいまいに笑っているだけです。

有田正宗の話しによると、立花望は1974年9月生まれの25歳、四国の愛媛県出身で高校卒業後上京して二年前の夏から鉄槌ジムに通うようになったとのことです。ボクシングにはなぜか少年院がつきものですが、立花望も少年院に入っていた経験があるらしいです(真偽の程は定かではない)。

立花望は、大阪弁特有の「~やから」という話し方をします。明らかに関西人です。愛媛県出身というのは怪しいです。作者の設定ミスでなければ、この矛盾は有田正宗がウソをついていることを示唆しています。

空也は立花とは直接話をさせてもらえずに有田に煙にまかれてしまった感じです。何だか釈然としないまま空也は帰路に着きました。

善良な小市民(?)の空也からすれば、立花望は犯罪の臭いのする別世界を生きてきた人間です。空也は取材云々とは関係なく立花のことをもっと知りたいという好奇心を抱くようになりました。そして、立花望にたいする好奇心が強くなれば強くなるほど、空也は、得体の知れない世界に近づいているのではないかという、恐怖とも不安ともつかない不思議な感覚にとらわれるのでした。

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