« 連続テレビドラマ・2月の視聴率 | トップページ | 岡田氏「外相辞任は不要」…外国人献金問題 »

2011年3月 4日 (金)

角田光代の「空の拳」・第56回(2/26)~第60回(3/3)

第56回

いよいよ10月13日(金)がやってきました。この日のメインイベントは日本スーパー・ライト級タイトルマッチです。バンタム級の中神真の試合は全六試合の二試合目です。

プロボクサーのライセンスには、A級(八回戦)、B級(六回戦)、C級(四回戦)の区別があります。アマチュアで実績のある選手を除けば普通はC級からスタートです。C級で四勝(引き分けは1/2勝)するとB級に進み、B級で二勝(引き分けは1/2勝)するとA級に進めます。中神真のこれまでの戦績は九戦五勝二KOです。つまり今日の試合に勝てばA級ボクサーになれます。A級ボクサーになれば、八回戦、十回戦、十二回戦の試合に出場することができるようになります。いわば一人前(?)のプロボクサーです。今日の試合は中神にとってA級ライセンスのかかった大切な試合です。

チケットは二枚買ったが、倉田真喜にも橋爪雅人にも断られ、鹿野もべつの仕事があるとかで、(空也は)ひとりでの観戦になった。

倉田も橋爪ももともとボクシングに興味があるわけではなく、自分の担当している選手の試合を義務的に見ることはあっても、自分に関係のない選手の試合までわざわざ観戦に来たりしません。せっかく買ったS席なのに空也の隣りは空席になってしまいました。空也の隣りに限らずこの日の会場は空席が目立っていました。
 
 
第57回

空也は隣の空いている席を観戦に来ていた立花に勧めましたが、立花は遠慮して自由席にいってしまいました。立花は悪役キャラだから好青年なのがバレてしまうとまずいのです。トレーナーの有田から取材記者(空也のこと)と親しくしないようにと言われているのだと思います。

立花のかわりにやってきたのは坂本です。坂本は勧められたわけではないのに空也の隣りに座ってしまいました。「(チケットは持ってないけど)どうせ空いているんだから近くで見たい」というのが坂本の言い分です。坂本は遠慮深い立花とは対照的にちゃっかりしています(社会人になったら出世するタイプかもしれません)。

中神のバンタム級は二試合目である。照明の落ちた会場にストーンズの「サティスファクション」が流れ、有田と林、丸尾剣を従えて中神が登場する。

中神のような地味な(?)ボクサーでも入場曲は気分を高揚させてくれる派手な曲がいいです。ストーンズの「サティスファクション」は悪くないと思います。
 
1990年にローリング・ストーンズが初来日したときの映像です。

 

第58回

ゴングが鳴り、両者がグローブを合わせて試合がはじまる。どちらも相手を見定めるかのごとく、軽いジャブの応酬が続く。ときどき双方、ストレートやフックを出すが、決定打はないまま試合は続く。

中神の対戦相手は、二十五歳でこれまでの戦績が十戦四勝一KOということはわかっています。しかし名前がわかりません。読者に名前を教えないまま試合がはじまってしまいました(わざとか?)。

「なにちんたらやってるーッ」ひときは大きな、しかも女性の野次が飛び、空也は思わずあたりを見まわす。

さかんに野次を飛ばしているのは興奮した中年女性(五十歳ぐらいか?)です。この人、中神の母親でした。坂本は中神の母親とも知り合いみたいです。

一ラウンドは、強力な打ち合いがないままに静かに終了しました。そして、第二ラウンドのゴングが鳴ります。
 
 
第59回

リーチが長い相手の選手はジャブで牽制しながら、自分のパンチだけが当たる距離を保って戦おうとしています。中神としてはなんとか懐に潜り込んで接近戦に持ち込みたいところです。しかし、なかなか思うようなボクシングをさせてもらえません。

 近づこうとすると相手のパンチを受けてしまう。隙をつこうとしているのになかなか隙が生まれない。中神がジリジリしているのが空也にもわかった。

二ラウンドが終了して、三ラウンド目に入ると激しい打ち合いになりました。やがて中神真はロープに追い詰められ相手の執拗な猛ラッシュを浴びて防戦いっぽうになります。

いけいけ、KOしろっ、今だ今ー、まだいけるまだいける、さまざまな声がわき上がり、真ーッ、真ーッ、真ーッ、たえろ真ーッ、中神の母の声がひときわ大きく響き渡る。

 

第60回

三ラウンドは何とか持ちこたえた中神でしたが、四ラウンド目にはすでに戦意を喪失していました。相手のボディ攻撃をまともにくらってダウン、レフリーストップで試合終了です。

「たぶん三ラウンド目のラッシュで、そうとうボディもらったんだと思う。四ラウンド目で、とどめの一発をもらったというより、限界がきたんじゃないかな」坂本はリングをおりる中神を見つめて言い、「と、思います」とつけ加えた。

集団で応援に来ていた中神の母親は、真が負けるのにはもう慣れているみたいで試合後はいたって冷静でした。

中神母は笑顔で周囲の人々に頭を下げ、彼らも笑顔で彼女の背をたたいたり、うなずいたりし、あっという間に彼らは去る。そこだけぽっかりと席が空いた。

|

« 連続テレビドラマ・2月の視聴率 | トップページ | 岡田氏「外相辞任は不要」…外国人献金問題 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/122218/39101624

この記事へのトラックバック一覧です: 角田光代の「空の拳」・第56回(2/26)~第60回(3/3):

« 連続テレビドラマ・2月の視聴率 | トップページ | 岡田氏「外相辞任は不要」…外国人献金問題 »