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2013年5月30日 (木)

原作・渡辺淳一の「雲の階段」第7話を観る・亜希子(木村文乃)が妊娠しました。三郎(長谷川博己)の子どもです。

 いつのころからか、俺はいつも、俺の外側にいて、そこから俺を、眺めていた……。俺は、俺の、傍観者になっていた。
 
 
●やがてニセ医者であることがバレる……田坂三郎(長谷川博己)は覚悟を決めていました。
 
 無資格医の俺は、俺以外の医者が恐れるものを、恐れる必要はない。
 
 その日一日、医者でいられるかどうかの俺にとって、未来への不安など、何の意味もなさない。
 
三郎はまるで余命を宣告された末期ガンの患者のように、医者でいられる残された日々を、とにかく全力で生きようとしていました。三郎には処世のための妥協は必要ありません。権威の前にひれ伏すこともしません。
 
空気を読もうとしない三郎の態度が、病院長の田坂雄一郎(内藤剛志)にはガキの所業に見えてしまいます。忠告しなくてはなりません。
 
 「副院長、キミは少し調子に乗りすぎている」
 
 「そうでしょうか?」
 
 「自分が置かれている立場を忘れてはいけないよ」
 
 「……」
 
 「たしかにわたしは、無資格医であるキミを守るとは言った。だからといって、キミが好き勝手をしていいわけではない。くれぐれも、思い上がらないようにな」
 
やがて三郎の「思い上がり」がとんでもない事態を引き起こすことになるのですが、三郎の医者としての日常は美琴島にいたときとほとんど変わりません。患者には常に優しい笑顔で接しています。三郎が患者に笑顔を見せるシーンは、このドラマの中で唯一ホッとできる瞬間です。ニセ医者でさえなければよかったのにね。
 
 
 
●三郎は事務局長に怪文書を届けた犯人が明子(稲森いずみ)であると思い込んでいました。なぜそんなことをしたのか、明子を問い質すために、三郎はアパートの前で明子の帰りを待っていました。
 
 「どうしてそんな回りくどいことするの?バラしたければ、匿名電話でも何でもして、田坂副院長は、ニセ医者だって、告発すればいいだろ!」
 
 「決めつけるんだ……わたしがやったに違いないって」

 
 「じゃあほかに誰がいる!?」
 
 「自覚はあるんだ……あたしにそうされても不思議はないって」
 
明子の言葉にはいちいち棘があります。三郎から聞かされるまで明子は怪文書の存在を知りませんでした。それでも、あえて「あたしじゃない」とは言いませんでした。
 
三郎が明子の入れたコーヒー(?)を飲もうとしたとき、明子は三郎を試すようにつぶやきました。
 
 「毒……入れた」
 
 「……」
 
 「ホントだよ」
 
三郎は一瞬ためらいましたが思い切って明子の入れたコーヒーを飲み干しました。三郎が毒が入っているかもしれないコーヒーをあえて飲み干したのは、疑って悪かったという意思表示だったのかもしれません。
 
力なく帰ろうとする三郎に明子がいいました。
 
 「ひとつだけ言っとく。これからあなたの身に起こることはすべて、自業自得」
 
明子は怪文書を届けた犯人が幼馴染みの高岡洋平(萩原聖人)であると考えました。自分でなければ高岡以外には考えられないからです。
 
それにしても前回あれだけ明子の仕業であるかのような状況証拠を並べ立てて置いて、実は違いましたっていうのもなんだかなあ……。
 
 
 
●高岡洋平は明子に振られて切ながっている単なるお人好しではありませんでした。高岡のような真面目な男がキレると何をやりだすかわかったものではありません。
 
怪文書作戦は失敗に終わりましたが、どこでどうやって調べたのか、高岡は三郎の昔の知り合いに接触していました。山本竜二(やべきょうすけ)というやさぐれた男です。高岡は山本竜二にかつての仲間だった三郎がニセ医者をやっていることを教えました。金になるから三郎を脅してゆするようにそそのかしたようです。以後、この山本という男は、何かと三郎につきまとってゆすりを働くようになります。
 
高岡は明子に頼まれれば殺人でも犯しかねないほど明子を愛していました。明子には自分を思う高岡の気持が痛いほどわかっていました。それでも明子は高岡の気持に応えてあげることができません。まだ三郎のことが忘れられないからです。
 
 
 
●三郎の「思い上がり」がとうとう深刻な事態を招いてしまいました。三郎は専門外の血管外科手術(腹部大動脈人工血管置換術)に手を出してしまったのです。
 
医者としての三郎に何ができて何ができないか、美琴島での三郎をよく知っている明子は三郎の外科医としての限界もわかっていました。この手術は三郎にはムリです。経験のない付け焼刃の知識ではどうにもなりません。
 
明子は三郎を思いとどまらせようとしました。しかし三郎は明子を振り切ってオペを始めてしまいます。手術室は大混乱です。
 
三郎が患者を殺してしまう……明子はもう無我夢中です。明子は外科チームのエース・野上雅樹(青柳翔)に助けを求めました。
 
 「ムリなんです。このオペ、副院長にはムリなんです!」
 
 「何言ってるんですか?」
 
 「出来ないんです!」
 
明子が何を言っても、野上は医者としての三郎をすっかり信用していました。
 
 「……正直に言います。副院長は考え方も、医者としてのスキルも常に完璧ですよ。悔しいぐらい」
 
 「彼は、彼は違うんです!完璧な医者なんかじゃないんです!!」
 
明子は必死です。野上に三郎を助けてくれるように懇願しました。野上は手術室の現場を見て大変なことになっていることを悟りました。三郎が持て余していたオペを三郎を突き飛ばして野上が強引に引き継ぎました。三郎が患者を殺さずにすんだのは野上のおかげです。いや、明子のおかげです。
 
メッキが剥がれてしまった三郎は、なすすべもなく手術室で呆然と立ち尽くしていました。
 
  
 俺は、俺の傍観者だった。こんな俺を、いつか、見ることになる……傍観者である俺にはわかっていたはずだ。

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原作・渡辺淳一の「雲の階段」番外編・なに!?視聴率が低い??気にすんなよ~(笑)。

●「雲の階段」は、お茶の間好みの笑いと涙の人情ドラマでもなければ、正義の味方(?)が悪人を懲らしめる勧善懲悪ドラマでもありません。あるいは裸やエロで視聴率を稼ごうとするドラマとも一線を画しています。このドラマは視聴率が低くて当り前の本格的なサスペンスドラマです。ハラハラ、ドキドキの連続です。
 
長谷川博己が「僕が主演で日テレさん大丈夫ですか」と心配するほど配役も地味です。明らかに演技力と内容で勝負しているドラマです。視聴者の立場からすると、こういうドラマは、ハマって真剣に観るか、疲れるから観ないことにするかのどちらかです。「雲の階段」を、いわゆる「ながら見」している視聴者はほとんどいないと思います。それでいて視聴率が8%以上もあるんだからたいしたものです。
 
 
 視聴率が一ケタでも、スポンサーからの苦情は一切ない……と、思いたい。
 
 

 
●日本テレビのドラマは、ピントがずれているのか根性があるのかよくわかりませんが、かつてはこんなこともありました。ジョージ秋山の「銭ゲバ」がドラマ化されて放送されたときのことです。

「銭ゲバ」の主人公・蒲郡風太郎は金のためなら平気で人殺しもする鬼畜のような人間でした。次々と犯罪行為を重ねて最後は滅びるしかない運命の悲しい男です(脚本を担当していたのは、なんと、「泣くな、はらちゃん」の岡田恵和)。
 
「銭ゲバ」はその内容があまりにも反社会的であったため、スポンサーが逃げ出しました。最後まで番組のスポンサーであることを明示していたのはコカ・コーラだけです。 
 

本作品(「銭ゲバ」)でドラマ内容の問題から、コカ・コーラを除くNTTドコモ、kao、Canon、スズキ、明治製菓の5つのスポンサーが提供クレジット自粛や土曜ドラマの提供を一時降板してカウキャッチャー(番組開始直前に流されるCM)やヒッチハイク(番組終了直後に流されるCM)での提供を行った。
 
                               フリー百科辞典Wikipedia より

 
ちょっとした「事件」でしたが、最後まで番組の提供クレジットをやめなかったコカ・コーラのほうが、逃げだしたスポンサーよりも視聴者には好印象を与えたような気がします。以来、わたしとしても、コカ・コーラに敬意を表して、コーラは必ずコカ・コーラを飲むことにしています(冗談)。

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2013年5月26日 (日)

春ドラマで熱演中の女優さん・ベスト3 頑張れ!夏帆

春ドラマで頑張っている魅力的な女優さん ベスト3 を紹介します。ほとんど個人的趣味です。
 
1.「みんな!エスパーだよ!」の夏帆    
美由紀(夏帆)のエロさには問答無用の風格(?)があります。パンチラも板についています。
美由紀は不良少女のくせにまだ未経験で、そのことがバレて恐縮したりしています。あまりのハマリ役に、夏帆という人はもともとこういう蓮っ葉な不良少女の役が得意なのかと思っていました。でも、本当はNHKの朝ドラのヒロインでもおかしくない清純派の女優さんだったんですね。ギャップがいいのかな?
  
   
2.「TAKE FIVE~俺たちは愛を盗めるか~」の松雪泰子
「ダブルス~二人の刑事」は一卵性双生児みたいな伊藤英明と坂口憲二のW主演ですが、「TAKE FIVE~俺たちは愛を盗めるか~」はデコボコで不揃いな5人組の窃盗団(TAKE FIVE)のお話です。
松雪泰子は父の仇とばかり、TAKE FIVEを追う芝大門警察署の刑事・笹原瑠衣役で登場します。この人は薄幸で翳りのある役が似合います。笑顔を見せない淡々とした演技がいかにも松雪泰子といった感じです。眉間のシワとホクロがいいです。
 
 
3.「鴨、京都へ行く-老舗旅館の女将日記-」の若村麻由美
梅垣屋の女将(おかみ)の梅垣鈴風(若村麻由美)は女将組合の組合長をしています。キップのよさは江戸っ子なみですが、生粋の京都人(?)です(たぶん)。
和服というのはこの人のためにあるんだというくらい和服がよく似合います。若林さん(若村です!はい、間違えました)は典型的な美人で美人過ぎるのが玉にキズです。女優さんは不細工だといっては貶され、美人過ぎるといっては貶され、楽じゃありませんね。

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2013年5月23日 (木)

原作・渡辺淳一の「雲の階段」第6話を観る・怖い!怖い!!怖いよ~っ!!!

 「今のあなたは、本当にあなたが望んでた、あなた?」
 「えっ?」
 「時々不安になるの。あたしが、あなたの人生を狂わせたんじゃないかって」
 「いきなり何言うの?」

 
 
●亜希子(木村文乃)は美琴島で、三郎(長谷川博己)と明子(稲森いずみ)が愛し合っていた事実を知っています。その明子が三郎を追うように田坂総合病院にやってきました。亜希子としては勘ぐりたくもなります。亜希子は三郎を相手にさりげなく明子のことを話題にしました。
 
 「そういえば、島にいた明子さん、うちの病院に就職したんだってね。あなたが呼んであげたんでしょ?」
 
言葉遣いは穏やかですが、亜希子の眼は笑っていません。亜希子は、嫉妬と怒りと憎悪が入り混じったような形相で三郎を睨んでいます。ヒステリーを起こす一歩手前の表情です。
 
亜希子は三郎が明子の悪口を言ってくれることを期待していました。
 
 「冗談じゃない。あの人が勝手に来たんだ。ボクだって迷惑している」
 
これぐらいは三郎に言って欲しかっただろうと思います。しかし、一度は愛し合ったことのある明子を、悪しざまに貶せるほど(たとえそれが本音であったとしても)、三郎は女性にたいして冷淡ではありません。小さな声で「誤解だ」と言うのが精一杯です。明子をかばうような三郎の煮え切らない態度が、亜希子の不安を増幅します。この人はまだあの人に未練が……。

 
 
●その日、勤務を終えて三郎が帰宅すると明子が来ていました。明子は結婚祝を口実に、三郎と亜希子の新居を訪問していました。アポなしの招かざる客です。亜希子は内心苦々しく思いながらも、表面上は明子を歓待していました。
 
 「ねえ、見て。美琴島のお酒。結婚祝だって。それと、あなたが島に残してきたもの、わざわざ届けてくださって」
 
美琴島の地酒といっしょに明子が持ってきたのは、三郎が空き瓶の中に作っていた帆掛け舟のコレクションでした。この帆掛け舟のコレクションは、かつて愛し合っていた三郎と明子の思い出の品でもあります。三郎が過去と決別するために島に置いてきたコレクションを、明子は、「愛し合っていた日々を思い出して」と言わんばかりにわざわざ持って来たのです。
 
亜希子は明子が持ってきた帆掛け舟のコレクションが何を意味しているのかわかっていました。亜希子の脳裏には思い出したくない三郎の過去が浮かんできます。
 
これ見よがしの明子の嫌がらせに三郎は明子を帰らせようとしました。しかし亜希子が引きとめました。亜希子は、この際だから、三郎と徹底的にイチャついて甘い新婚生活の様子を明子に見せつけてやろうと考えたようです。明子に食事をしていくようにとすすめました。
 
 「もしかして、誤解なさっているといけないと思って」
 「何がですか?」
 「こんなこと、ここで言うのも何か変だけど、あたしと、この人、別に付き合ってたとか、そういう関係じゃなかったのよ」
 「ええ、それは主人からもそう聞いてます」
 「それならいいんだけど」
 「あたし初めは勘違いしてて問い詰めちゃったんです。まさか違うわよね、って。そしたらこの人、バッカだなあ、って。うふふふふ」

 
ふたりのアキコは、お互いに嘘とわかっていながら、嘘をつき合っています。三郎は火花を散らして嫉妬と嫉妬がぶつかり合う「女の闘い」にただうろたえるばかりです。
 
 
明子はわざわざトイレからこっそり三郎に電話してきました。
 
 「いずれ、あなたの正体はバレる。もうやめたほうがいい。逃げるのなら、いっしょに逃げてあげる。取り返しがつかないことになる前に、どこか、遠いところに……」
 
これが、おそらくは、明子が三郎に伝えたかった本音です。明子のこころには、裏切った三郎を許せない気持と、もし謝ってくれればすべてを許してしまいたい気持が複雑に絡み合っています。
 
 「好きな人を想う気持って、その人が結婚したからといって、なくなるものでもないですよね」
 
 
 
●明子の仕業かどうかわかりませんが、事務局長・久恒和男(金田明夫)のところに1通のメモが届けられました。
 
  相川三郎について、調べてみてください
 
今までどうして調べなかったのか不思議ですが、このとき初めて、久恒事務局長は「医師等資格確認検索システム」で相川三郎が医師として登録されていないことを確認しました。 
 
 
深夜です。三郎のケータイに久恒事務局長から電話がかかってきました。院長からの呼び出しです。用件は「確かめたいことがある」とだけ三郎に伝えられました。急患でもなく、突然深夜に呼び出されて「確かめたいことがある」と言われれば、バレたと思わなくてはいけません。三郎は覚悟を決めて田坂総合病院に向いました。
 
 
実は、院長の田坂雄一郎(内藤剛志)は以前から三郎が無資格医であることを知っていました。三郎を娘の亜希子の娘婿として迎えて、さらには自分の後継者として副院長にまで抜擢したのは、三郎が無資格医であるとこを知った上でのことでした。
 
雄一郎は、民自党の片岡幹事長のオペを三郎に任せてしまったため、今さら執刀医が無資格医だったとは言い出せなくなっていました。片岡幹事長からは三郎を主治医にしたいとまで言われています。後戻りできなくなっていたのは三郎だけではありません。雄一郎も雲の階段を上り始めていました。雄一郎は、妻の芳江(多岐川裕美)から病院の主導権を奪ってゆくゆくは資金力にものをいわせて政治家に転身するつもりでいます。
 
悪人(?)の雄一郎は三郎よりも肝が座っています。慌てず騒がずです。「バレなければいい」ということで、三郎が無資格医である事実は伏せたまま、三郎には今まで通り副院長を続けてもらうことにしました。三郎が無資格医であることが発覚すれば、三郎が破滅するだけではすみません。田坂総合病院もおしまいです。すでに三郎と雄一郎は運命共同体です(雄一郎も無資格医だったりして)。
 
幸い、事務局長の久恒は院長の雄一郎から「黙ってろ」と命じられればその通りにする忠実なイエスマンです。久恒から三郎の秘密が漏れることはなさそうです。
 
そうはいってもこの設定はさすがに無理があります。相川三郎(または田坂三郎)が本名である限り、病院の関係者や患者の誰かが、たとえ一人でも、興味本位で検索システムを利用すれば、三郎が無資格医であることが簡単にバレてしまいます。三郎はあまりにも無防備です(現実のニセ医者というのは、簡単にはバレないように、医師免許証を偽造して実在する医師になりすましているケースがほとんどのようです)。
 
 
●明子は、三郎から「いっしょに逃げてくれ」と言われることを期待していたかもしれません。メモもおそらく明子のしわざです。しかし、残念ながら、明子の企みは失敗に終わりました……。

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2013年5月16日 (木)

原作・渡辺淳一の「雲の階段」第5話を観る

相川三郎(長谷川博己)はいつ発覚してもおかしくない無資格医という秘密を抱えています。この秘密はいつか必ず発覚します。そして、発覚したら最後、三郎は雲の階段から転落します。それなのに、三郎は、どうして、雲の階段を上ろうとするのでしょうか……。

  
 
●三郎のケータイに電話がかかってきました。鈴木明子(稲森いずみ)からです。三郎が出ると無言のまま切れてしまいました。死んでしまったかもしれないと思っていた明子は生きていました。
 
そのとき、オレは、心の片隅で、たしかに、思ったのだ。どうせらな、死んでいてくれたら……。
 
かつての恋人だった明子の存在は、過去と決別しようとしている三郎を不安に陥れます。今の三郎にとっての明子は、邪魔であり、不都合であり、迷惑な存在です。三郎がもし本当の悪人だったら、自分の手で明子を殺していたかもしれません(あな恐ろし)。
 
 
 
●三郎は、亜希子(木村文乃)に誘われて河口湖にある田坂家の別荘に出かけました。そこで、偶然、亜希子の高校時代のクラスメートだった連中に出会いました。
 
世の中には、悪気はなくても、存在そのものが他人を傷つける場合があります。三郎は、裕福な家庭に育って贅沢を贅沢とも思わないで受け入れている若者たちを見ると、無性に腹が立ちます。貧しさを知らない彼らの屈託のない明るさが刃(やいば)のように三郎の心を突き刺さします。でも、三郎はそういう連中の一人である亜希子と結婚しようとしています。
 
 「もう一度、考え直した方がいいかもしれないね」
 
 「何を?」
 
 「ボクたちの結婚。キミは、ボクのことをどんな人間だと思っているの?」 
 
 「どんなって?」
 
 「いや、考えなくてもいい。キミには到底想像もできない……」

 
酔っ払って混濁した意識の中で、三郎はつい本当のことを亜希子に話してしまいそうになります。亜希子は、三郎のことを、嘘のない純粋な人間であると信じています。
 
三郎は騙そうと思って亜希子の前で「純粋な人間」を演じてきたわけではありません。三郎の「無意識の狡さ」がそうさせていたのです。
 
 「どうしてそんなこと言うの!?人間の本性なんてだれにもわからないわ。たとえ親子でも、夫婦でも、兄弟も、友だちも、あたしの周りはみんな仮面をつけて生きてる。人間なんてそんなものだって、子どものころから、あたしにはわかってた。でも、あなたは違った。だって…あの島で会ったあなたには、ウソが見えなかったから…そう思わせてくれたから……」
 
亜希子は何かをしゃべろうとする三郎の言葉を遮りました。
 
 「今、あたしが聞かなきゃいけないことですか?知らなくてはいけないことですか?あなたに会えなかったら、あたしは、死んでいた……お願い、お願いします。ひとりにしないでください。あたしをひとりにしないでください」
 
亜希子は三郎が無資格医であることを知っているのかもしれません。
 
 
 
●三郎は亜希子と結婚することになりました(提出が求められていた医師免許証はどうなったのだろう?それにしても結婚式が早すぎるのではなかろうか?)。
 
場違いで針のむしろのような結婚披露宴に出席した三郎の母親の喜美枝(加賀まり)が、披露宴の後でこっそり三郎に言いました。
 
 「ずーっと考えていた。あんたに、いったい、何を言えばいいのか。もう、後戻り、できないんだろ?」
 
最初は人の道を外れた三郎の「ニセ医者人生」に激怒していた喜美枝でしたが、どうやら母親としての覚悟を決めたようです。
 
 「あんたはニセ医者だ。だったら…絶対に人を死なせちゃダメだ。人殺しにはなるな。もし…もしも、そういうことに巻き込まれたら……どんなにぶざまでもいい、逃げ出しなさい。逃げて来なさい。母さん……守ってやる
 
 
 
●三郎の姓が相川から田坂に変わって三郎の新たな人生が始まりました。そんなある日、田坂総合病院の外科に新しい看護師がひとり入りました。
  
その新しい看護師というのは、なんと、三郎が心の片隅で「どうせなら、死んでいてくれたら……」と思っていた鈴木明子でした。明子はどうやって田坂総合病院に潜り込んだのでしょうか。経歴を詐称したのでしょうか。明子はいったいどういうつもりなのでしょうか……なんだか女の恐ろしさが全開になってきました。
 
そのときはまだ、わからなかった。彼女が何を考え、そして、何について考えるのを、やめてしまったのか。

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2013年5月11日 (土)

原作・渡辺淳一の「雲の階段」番外編・相川三郎(長谷川博己)をめぐるふたつの疑問点について

Yahoo!テレビの「雲の階段」に対するみんなの感想を読んでいると、感想を述べている視聴者がいかにこのドラマを熱心に楽しんでいるかがわかります。肯定的な感想であれ、否定的な感想であれ、ドラマをよく観ていて説得力のある感想が非常に多いです。ただ、ひょっとしたら誤解ではないかと思われる感想も散見されます。そこで、誰もが感じてしまいそうな相川三郎をめぐる疑問点について考えてみました。
 
 
 
●田坂総合病院の病院長・田坂雄一郎(内藤剛志)は娘婿になるかもしれない相川三郎(長谷川博己)の身元調査をなぜやらなかったのでしょうか?
 
亜希子(木村文乃)は、父親の雄一郎が外科チームの紅一点(市川実和子)と浮気していることを知っていました。妻の芳江(多岐川裕美)は夫・雄一郎の浮気にまだ気がついていません。亜希子は芳江には浮気のことを黙っていてあげるかわりに、雄一郎に二つの要求をしました。ひとつは野上雅樹(青柳翔)との婚約解消です。もうひとつはおそらく相川三郎を田坂総合病院で採用してほしいという要求です。このとき、亜希子は、できれば三郎と結婚したいということも雄一郎に伝えていたかもしれません。
 
亜希子の要求は雄一郎にとって「渡りに舟」でした。雄一郎は娘の幸せを真剣に考えるような男ではありません。雄一郎は、芳江の息のかかった野上雅樹が亜希子の婚約者(つまり自分の後継者)であることを内心苦々しく思っていました。野上でなければ亜希子の結婚相手はだれでもよかったのです。ヘタに相川三郎の身元調査を行ってよからぬ事実が発覚したら、雄一郎は野上雅樹を排除する絶好のチャンスを失ってしまいます。困るのは雄一郎自身です。
 
そんなわけで、いわゆる興信所による相川三郎の身元調査は行われませんでした。世の中には余計なことは知らないほうが都合がいい場合もあります。雄一郎は三郎が無資格医だとは夢にも思っていなかったはずです。
 
相川三郎は、当然自分の身元調査がされているものと覚悟していたと思います。それでも、ここは一か八かの賭けです。無資格医であることがバレたとしても三郎にとっては「ダメモト」です。三郎には失うものがなにもありません。もし不採用なら、美琴島の診療所に戻るだけです。
 
今風に言えば、相川三郎は何か持っている強運の男です。結局身元調査は行われませんでした(たぶん)。
 
 
 
●相川三郎は田坂総合病院のいきなりの手術になぜ成功したのでしょうか?
 
三郎は亜希子の子宮外妊娠の手術に奇跡的に成功しています。さらに、美琴島の村長の孫娘の急性虫垂炎の手術にも成功しました。このふたつは病巣がどこにあるのかわからない難しい手術でした。
 
このふたつに比べれば、田坂総合病院で三郎が担当した手術はそれほど難しい手術ではありません。患者がVIP(民自党の片岡幹事長)だというだけで平凡な(?)大腸癌の摘出手術です。つまり、過疎の離島の診療所にいた外科医に任せても大丈夫な程度の手術です。しかも、助手には外科チームのエース・野上雅樹がついていました。もし三郎に不手際があれば、野上が適切なアドバイスができる態勢がとられていました。
 
素質のない不器用な外科医はいくら経験を積んでも外科手術はなかなかうまくなりません。しかし、手先の器用な三郎なら数回の執刀経験があればそれで十分です。三郎は直接執刀しなくても何度も何度もオペのシュミレーションをやっているはずです。猛勉強による医学の知識も相当なものです。適切な診断ができる三郎の深い知見は折に触れて何度もドラマの中に出てきます。
 
三郎が田坂総合病院のいきなりの手術に成功したのはむしろ当然のことです。ここで失敗するようなら、逆にろくな設備もなかった美琴島での難手術の成功はなんだったのかということになります。

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2013年5月 9日 (木)

原作・渡辺淳一の「雲の階段」第4話を観る・背徳のニセ医師・相川三郎(長谷川博己)がメスを握ると鬼気迫る緊張感が走ります。

●田坂総合病院の院長室で、相川三郎は病院長の田坂雄一郎(内藤剛志)から言われました。
 
 「娘のことをどう思っていてくれているのかな?こちらの勝手を言わせていただくと、うちは娘二人でね。結婚となると、婿を取るということになる。つまり、いずれこの病院を継いでもらうということだ。キミ次第だ。忌憚なく本音を訊かせて欲しい」
 
病院長からいきなりそんなことを言われても心の準備というものがあります。三郎は返答に窮しました。三郎が即答を避けたのは、奥ゆかしさ装ったのではなく、本当に困惑して絶句したみたいです。三郎はまだ「悪」になりきっていないところがあります。
 
 
●亜希子(木村文乃)は、すぐに東京で暮らせるようにと、三郎のために豪華(?)マンションを用意してくれていました。三郎さえよければ、すぐにでも同棲生活を始めてしまいそうな勢いです。
 
ニセ医師であるという三郎の秘密は三郎ひとりで抱え込むには重すぎます。ここで引き返さないと、その重すぎる秘密を三郎ひとりで抱え込んで生きていかなくてはなりません。秘密を共有してくれる「共犯者」が誰もいないということは、精神的にかなりきついです。美琴島の診療所のように、三郎がニセ医者であることをみんなが知っていて、知っていながら黙認してくれていたのとは訳が違います。
 
亜希子が三郎に言いました。
 
 「あなたは優しいけど、いつもとても優しくはしてくれるけど、なんか違う。いつもどこか壁を作って、わたしを避けている。本当のあなたを見せてくれてない気がします。あたしのような女なんかイヤだって、キライだって、そう思うなら、そうハッキリ言ってくれたほうが、そのほうがいっそ救われます」
 
 「そうですよね。あなたにはきちんとお伝えしなくては。今の今まで、決心がつきませんでした。迷ってました。ボクは……あなたが好きです」
 
三郎は本当のことを打ち明ける最後のチャンスを失いました。「ボクは……ニセ医者です」というかわりに「ボクは……あなたが好きです」と言ってしまいました。もう後戻りはできません。背徳のニセ医師・相川三郎は雲の階段を上り始めました。足を踏み外せば奈落の底に墜ちていきます。
 
ところで、三郎は本気で亜希子のことが好きなのでしょうか、それとも亜希子を己の野望のために利用しようとしているだけなのでしょうか……何だかよくわからなくなってきました。 
 
 
●美琴島の鈴木明子(稲森いずみ)は、三郎からの連絡を待っていました。しかし、いつまで待っても連絡がありません。明子は我慢できなくなって、東京の三郎の実家に電話をしてしまいました。三郎の母親の喜美枝(加賀まり)が電話に出ました。
 
喜美枝は明子のことを三郎の結婚相手と勘違いしていました。三郎が結婚の報告に来たことを明子に伝えて、式の日取りについて明子に訊ねたりしてしまいました。知らないこととはいえあまりにも残酷な仕打ちです。
 
明子は、三郎が自分を捨てて亜希子と結婚するつもりでいることを悟りました。明子は三郎の子どもを身ごもっています。そのことを三郎はまだ知りません。喜美枝を相手に明子は思わず口走ってしまいました。
 
 「あたし……あたし、妊娠しているんです」
 
明子の苦渋の訴えも喜美枝には通じません。喜美枝は三郎が急に結婚する気になったのはそういうことだったのかと勘違いしてしまいます。
 
 あなたを、あなたを求めようとすると、決まって、あたしはイヤな女になる。こんな女だけはなりたくない、っていう女に……なってしまってる。
 
 
●明子は三郎の子どもを流産(?)してしまいます。失恋と流産……二重の悲しみが明子を襲います。かすかな望みが絶望に変わったとき、明子がもう生きていくのがイヤになったとしても不思議はありません。
 
流産の後、明子は行方不明になります。海に身を投げたのかもしれません。あるいは死んだ気になって復讐の鬼になるのかもしれません。世の中には、復讐だけが生きる心の支えだという人もいないわけではありません。
 
 あたしからあなたには、もう、何も伝えられない。あたしの大好きなあなたには、会えないから。だって、あたしは……死んだから。
 
それにしても可哀想なのは明子の幼馴染みの高岡洋平(萩原聖人)です。失意の明子にプロポーズしたのに振られてしまいました。高岡のようなお人よしで優しいだけの男って、結局「いい人」で終わってしまうみたいです。
 
   危険な香りがないのよねぇ  by 加賀まりこ
 
 
●田坂総合病院に勤務することになった相川三郎は、いきなりVIP(民自党の片岡幹事長)のオペ(大腸癌の開腹手術)を任されます。挨拶代わりです。このオペはボロを出さずになんとか切り抜けました。もっとも医師免許がないというだけで三郎の外科医としての実力は相当なものみたいです。外科チームのエースといわれている亜希子の元婚約者・野上雅樹(青柳翔)と比べても遜色ないのかもしれません。
 
三郎の挨拶代わりの手術は無事に成功しました。しかし困ったことが起きました。事務局から医師免許証の提出を求められたのです。求められてもないものは出せません。どうするのでしょうか……。

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2013年5月 3日 (金)

原作・渡辺淳一の「雲の階段」第3話を観る・その3(3/3)

●新任の山中孝志(田中哲司)という医者は、一応医師免許は持っているもののとんでもない藪医者でした。外科医でありながらまともな外科手術ができません。急性虫垂炎に罹った村長の孫娘の手術を途中で投げ出して後始末を三郎(長谷川博己)に懇願する始末です。
 
このときの三郎はいつもの温和な三郎とはちょっと違っていました。三郎は山中孝志を睨みつけて言いました。
 
 「執刀医である、山中先生が、直接ボクに、きちんと頼んで下さるのであれば……やります」
 
医師免許を持たない三郎を蔑んできた非礼を詫びて頭を下げることを山中孝志に要求したのです。
 
このときまでに、三郎は山中孝志の医師としての力量を完全に見抜いていたと思います。日ごろから猛勉強をしている三郎には藪医者とまともな医者の区別ぐらい簡単にできます。内心「こいつは使いものにならん」と思っていたはずです。
 
温厚な三郎が日ごろ見せたことのない厳しい態度に明子(稲森いずみ)は胸騒ぎを覚えました。
 
 今思えば、このときだったのだ。わたしがこのとき、わたしがまだ知らない相川三郎に出会っていたのだ。
 
たしかに、三郎は、これまでとは違った何か重大な決断をしているようでした。
 
 
●再縫合の手術後、亜希子(木村文乃)は三郎に一通の手紙を渡して言いました。
 
 「東京で待ってます」
  
手紙に何のが書かれていたのか視聴者には不明です。しかし、手紙を読んだ三郎は東京へ行く決心をしました。三郎は明子が自分の子どもを身ごもっていることをまだ知りません。誰にも告げることなく私物を整理して美琴島を去ってしまいました。三郎が向った先は田坂夫婦が経営する田坂総合病院です。三郎はニセ医者であることを伏せたまま東京で新たな人生を送るつもりなのでしょうか?
 
 わたしには、何が起きたのかわかっていた。全部…わかってた。あのとき、もし、新しい命の存在を知らせていたら、あなたは、喜んでくれた?
 
 あのころのわしは、あなたの居場所を、探してたのに。そこなら、あたしの居場所も、あったのに……。 

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原作・渡辺淳一の「雲の階段」第3話を観る・その2(2/3)

診療所の屋上で鈴木明子(稲森いずみ)は洗濯物を干していました。そこへ魂を抜かれた夢遊病者のような相川三郎(長谷川博己)がやってきました。
 
 「どこ、行ってたの?」
 「うん」
 「……田坂亜希子さんでしょ?」
 「
(知っているならしょうがない)今日……東京に帰るって」
 
こういうところはなぜか三郎は正直です。ウソをついたり誤魔化したりしません。
 
 「やだ。(カマかけたら)当ってた……案外正直なんだね」
 「案外って
(いつも正直だよ)……」
 「そっか、今日帰るのか……」
 「手術痕の再縫合また頼まれたけど……断った」
 「してあげればいいじゃない。所長も、してやれって、言ってたし」

 
無資格の三郎は医療行為が禁止されています。問診程度の医療行為でも、新任の医師・山中孝志(田中哲司)に見つかって大騒ぎになりました。
 
 「やりたくたって、できない」
 「ほら、やっぱやってあげたいんだ」
 「どうしてそういう言い方するの?
(かりにの話としてやりたくたってできないって言ったのに)
 「今日土曜か……」

 
明子は三郎に協力してこっそり亜希子の再縫合手術をやってあげようと考えました。もうひとりの協力者は明子の幼馴染みで薬剤師の高岡洋平(萩原聖人)です。美琴島の診療所は土曜の4時半を過ぎると月曜日までだれもいなくなります。こっそり手術をやってしまうには絶好のチャンスです。
 
人はときとして、そんなことやっている場合じゃないとわかっていても、つい咄嗟に敵(ライバル?)に塩を送るような行為をしてしまうことがあります。ふとわれに返ったとき、「何やってんだか…」と自分で自分のお人よしぶりに情けなくなることがあります。明子しかり、洋平しかりです。

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原作・渡辺淳一の「雲の階段」第3話を観る・その1(1/3)

●第3話は、次のような鈴木明子(稲森いずみ)の独白で始まります。どういう意味かわかりますか?
 
田坂亜希子とはもう二度と会うことはない。大病院の娘である彼女と、自分のようなニセ医者がこれ以上会えるはずもない……そのときのあなたは多分本当にそう思っていた。でも、そういうところが、あなたの無意識の狡さだった。
  
  
この「無意識の狡さ」というのは、自己欺瞞(=自覚がないまま自分で自分を騙すこと)です(たぶん)。 
 
 
●相川三郎(長谷川博己)が東京から美琴島に戻ってくると、診療所には新しい医師・山中孝志(田中哲司)が来ていました。無資格の三郎に医療行為を任せるわけにはいかないと考えた診療所の事務長(半海一晃)が美琴島の村長(ラサール石井)と相談して破格の条件で新しい医師を迎い入れたのです。
 
これまで黙認されていた三郎の医療行為は禁止されてしまいました。山中孝志はやたらとプライドが高く、自分が医師であることを鼻にかけています。常に上から目線で三郎のことは事務員よばわりして蔑んだりします。実に嫌味な男がやってきたものです。
 
 
●そんなある日、突然、美琴島に田坂亜希子(木村文乃)がやって来ました。予告なしの再訪です。心のどこかで、相川三郎は再び田坂亜希子が美琴島にやって来ることを期待していたと思います。でも、三郎には亜希子の再訪を素直に喜んだり歓待したりすることはできません。あくまでも亜希子は大病院の令嬢で三郎は根無し草のようなニセ医者です。 
 
亜希子が再び美琴島を訪れたのは、手術痕の再縫合を三郎にお願いしたいというのが理由でした。
 
 「あたしね、大学卒業したら結婚しなくちゃいけないんです」
 「えっ?」
 「相手は、理事長の母がとても信頼しているうちの病院の外科医で、若いのにすごい優秀な人みたい」
 「……みたい?ご両親が決めたことなんですか?」
 「しかたないんです。もう諦めてます。だから…やっぱり、最後にひとつだけ、わがまま聞いてもらえませんか?」
 「えっ?」
 「わたしの傷の縫合のし直しを、相川先生に」
 「…だから、それは…ボクなんかがするよりお父様のほうが、きっと、きれいに、痕の残らない、縫合のし直し…」
 「あたしの体にキズが残るならそれでもいい。相川先生がつけてくれたキズなら……一生消えない……あなたのしるし」

 
なんという激烈な愛の告白でしょうか。再縫合のお願いというのは口実です。本当は三郎に会いたかった、ただそれだけです。再縫合が終われば、また別の理由をみつけて、亜希子は必ず三郎に会いたがります。もうとまりません。

この後に続くはずの激しい抱擁とキスシーンはカットです。視聴者の妄想(?)に委ねられました。

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原作・渡辺淳一の「雲の階段」・第1話と第2話のまとめ

4月にスタートした春ドラマの中で、イチオシのおススメは「雲の階段」です。原作は渡辺淳一の小説ですが、エロチックな要素を極力セーブした本格的なサスペンスドラマになっています。
 
「雲の階段」の主人公は、医師免許のないニセ医師・相川三郎(長谷川博己)です。相川三郎は勤勉で温厚な性格ですが、どこか屈折したところがあります。この主人公が漂わせているダークで怪しげな雰囲気が実にいいです。このドラマは長谷川博己の魅力を十二分に引き出しています。
 
このドラマの舞台となっている美琴島は、伊豆諸島の式根島がモデルであるとされています(ロケ地が式根島)。かつて式根島は、性に飢えたテーンエイジャーが押し寄せるナンパ島ということで有名でした。現在は家族連れやカップルの観光客が多く、ナンパ島の汚名(?)は返上しているとか。

式根島(しきねじま)は、伊豆諸島を構成する島の一つであり、新島の南西に位置する。行政上の所属は、東京都新島村。

面積3.9km²、人口約600人。最高地点はしばしば北部の神引山(かんびきやま)98.5m(三角点)と言われるが、実際には島西北部に109mの標高点が存在する。

                                 フリー百科辞典Wikipediaより

 
 
●相川三郎は過疎の離島・美琴島の診療所で事務の仕事をしていました。医師の資格はありません。しかし、診療所の所長・村木英次(大友康平)に見込まれて無資格のまま医療行為を行うようになります。無資格の医療行為は犯罪です。しかし、美琴島の医師不足は深刻で、診療所に何度新しい医師を呼んでも半年もしないうちに辞めてしまいます。このままでは将来、無医村になってしまう恐れがあります。資格を云々している場合ではありません。三郎は手先が器用でオペの素質があります。猛烈に医学の勉強もしています。所長の村木は、素質があって診療行為を任せられれば資格なんてどうでもいいと考えていました。村木は美琴島が無医村になることを避けるために、医師免許のない相川三郎を自分の後継者として育てようと決断します。三郎は人当たりがよく患者から若先生と呼ばれていて、おっかない村木所長よりも人気があったりもします。
 
 
●村木所長が不在のときでした。たまたま美琴島に遊びに来ていた女子大生・田坂亜希子(木村文乃)の開腹手術を三郎がやってしまったことからドラマが動き出します。田坂亜希子は子宮外妊娠をしていて、腹腔内出血を起こしていました。三郎が何とかしないと診療所には三郎のほかに医師がいません。しかし、患者の命にかかわるような本格的開腹手術は三郎にとって初めての経験です。本来なら失敗して当り前なのですが、運が味方して手術は奇跡的に成功してしまいます。子宮外妊娠ということで胎児は助かりませんでしたが、母体の亜希子の命は取り留めました。
 
亜希子は東京の大きな病院の院長の令嬢です。普通なら子宮外妊娠も早期に発見されて適切な処置がとられていたはずです。亜希子は誰の子どもを妊娠していたのでしょうか。美琴島には自殺するために訪れていた節もあります。この亜希子に関してはまだ謎が多いです。 
 
なにはともあれ、亜希子にとって三郎は命の恩人です。亜希子は三郎がニセ医者(無資格医)であるとは夢にも思っていません。亜希子は22歳、三郎は35歳です。ひと回り(12歳)程度の年の差というのは意外と相性がよかったりします。運命の出会いと思い込んだのか、亜希子は自分を救ってくれた三郎に惹かれて行きます。
 
 
●相川三郎と同じ診療所で働いている看護師の鈴木明子(稲森いずみ)は年下の三郎を愛していました(このドラマの三郎はやたらとモテます)。明子は、ニセ医者でもいい、離島の診療所で三郎といっしょに暮らしていきたいと考えていました。しかし、鈴木明子の前に突然女子大生の田坂亜希子が現われました。お嬢様育ち(?)の亜希子には自分が思ったことは何でも思い通りにしないと気がすまないところがあります。
 
明子は39歳です。もう若くはありません。そんな明子に突然強力なライバルが現われました。三郎を愛してしまった明子には、三郎に甘えて惹かれていく若い亜希子の気持が手に取るようにわかります。明子は田坂亜希子に三郎を奪われるのではないかという不安に駆られます。

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