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2013年10月25日 (金)

「連続講義・デフレと経済政策」(池尾和人著・日経PB社)を読む・第5回

30ページからです。②の式を再掲します。
 
 名目賃金上昇率-予想インフレ率=-α×失業率+β(α、βは定数)

この式の右辺を-αでくくると、

 名目賃金上昇率-予想インフレ率=-α(失業率-β/α)

β/αは自然失業率だから
 
 名目賃金上昇率-予想インフレ率=-α(失業率-自然失業率)
 
予想インフレ率を右辺に移項すると、
 
 名目賃金上昇率=予想インフレ率-α(失業率-自然失業率)
 
「失業率」を自然失業率と区別するために「現実の失業率」に書き換えると、
 
 名目賃金上昇率=予想インフレ率-α(現実の失業率-自然失業率)  (2)
 
ここで21ページの式を再掲します。
 
  価格=(1+m)×時間当たりの賃金÷労働生産性  (1)
 
この式の「価格」は経済全体で考えれば「物価」にあたります。この式が意味しているのは、マークアップ率mと労働生産性が一定だと仮定すると、名目賃金上昇率は物価上昇率(インフレ率)と等しくなるということです。そこで、(2B)の式の名目賃金上昇率をインフレ率に置き換えます。
 
 インフレ率=予想インフレ率-α(現実の失業率-自然失業率) (2B)
 
この式の意味するところをテキストは次のように説明しています。

人々の予想インフレ率が変わらない間(短期)には、現実の失業率とインフレ率の間に右下がりの関係がみられることになります。この意味で、フィリップ曲線の考え方が当てはまります。しかし、人々の予想が現実に追いついて、現実のインフレ率=予想インフレ率となったとき(長期)には、現実の失業率=自然失業率とならざるを得ない。ということで、長期的にみるとインフレ率と失業率の間にトレードオフは存在しない。

(2B)の式で予想インフレ率と自然失業率が不変(定数)なら、現実の失業率とインフレ率の間に右下がりの関係があることは理解できます。しかし、どうして長期と短期を区別する必要があるのでしょうか。
 
長期だろうと短期だろうと、現実のインフレ率と予想インフレ率が等しいときは現実の失業率が自然失業率に等しくなると思います。もっというと、長期的にみた失業率というのは、労働市場における需要と供給の関係から自然失業率を中心に上がったり下がったりしているのではないでしょうか?
 
最初、素人のわたしはこのように考えました。しかし、いろいろ調べてみると、経済学における長期と短期というのは独特の概念(非常識な概念?)で、何ヶ月とか何年とかといった具体的期間のことではないようです。

フリー百科事典のWikipediaは、経済学における「長期」と「短期」を次のように説明しています。

長期
経済学における長期(ちょうき)とは価格が完全に伸縮的である状態をいう。この時、価格メカニズムによる調整によって全ての市場(労働・財・貨幣など)で需給が均衡している。古典派経済学では長期の状態を想定しており、先験的な仮定としての完全雇用が成立している状態を長期均衡とする。なお、長期以外の状態を短期と呼ぶ。
 
短期
経済学において用いる場合の短期(たんき)とは、価格の粘着性などの原因により、何らかの市場(労働・財・貨幣など)で需給が均衡していない状態をいう。粘着性による価格メカニズムの不全以外にも、たとえば工場のように建設・廃棄に時間が掛かるため、需給が均衡していなくても調整が行われないという状態もある。不均衡であるため、失業や稼働していない生産設備などが存在し得る。
 
全ての財の価格が伸縮的で、価格メカニズムが完全に機能している状態を考えるものが長期均衡モデルである。これに対して価格メカニズムが完全に機能しない財が存在する期間を短期という。価格調整が完全に行われきっていない財が存在する状態を想定すれば、たとえ100年であってもそれは短期ということになる。

何のことはありません。長期には現実の失業率と自然失業率が等しくなるのではなくて、現実の失業率と自然失業率が等しくなったときが長期なんだそうです。
 
 
32ページに近年の経済学の標準的な見解が紹介されています。
 
 「持続的な失業率の低下を達成するためには、労働市場のマッチング機能を強化するための構造改革を進める以外にない」
 
つまり、自然失業率そのものを低下させない限り、持続的な失業率の低下は望めないということらしいです。深く納得です。

 
ところで、(2B)の式に関してですが、この式は「マークアップ率mと労働生産性に変化がない」ということが前提条件になっています。つまり、(2B)の式が成立するのは無条件ではありません。マークアップ率mと労働生産性に変化がない限りにおいてです。
 
22ページの
 
――でも、マークアップ率や労働生産性は常に一定ではありませんよね?
 
という疑問に対する答えをここでして欲しかったです。

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