「ゴルゴ13」第557話「33+G 前編」を読む
PART 1 デュークが居た!?
東洋通信のメキシコ支局に梶本という顎の長い社員がいました。梶本は勤務中だというのにエロ雑誌のヌード写真を眺めてにやけていました。どうやら梶本は海外勤務をいいことにのんびりとハッピーライフを送っているぐーたら社員みたいです。
その梶本に支局長(?)から取材の指令がくだりました。
「おい、梶本、2010年8月5日の、チリのコピアコ鉱山落盤事故から丸5年だ!救出者に面会してインタビューを取ってこい!」
突然のチリ行き指令に戸惑う梶本を支局長が脅しました。
「チリ行きが嫌なら東京に戻るか?海外勤務手当はなくなり、すし詰めのラッシュ、切れ目のない仕事の嵐、昼食難民、会社の臭い仮眠ベッド!中南米じゃ、ハグは挨拶代わりだが、日本でハグしてみろ。強制わいせつで逮捕されるぞ!」
梶本には「嫌なら東京に戻す」という脅しが一番効き目があるようです。梶本はしぶしぶチリ行きを了解しました。久しぶりの仕事です。
梶本が最初に面会したのはコピアコ鉱山の元作業員・セダベル氏です。ところが落盤事故の救出者は協定を結んでいてマスコミの個別取材は全部断ることになっていました。ゼタベル氏は何も話してくれません。
梶本は諦めて帰りかけたときにふと漏らしました。
「とにかく34人だっけ、ガッツあったね」
これを聞いたセダベル氏は慌てました。
「えっ!? あ、あんた34人居たって……何で知ってるんだ!?」
「はん?」
「い、いや33人だ。取材に来るなら人数をちゃんと調べてから、来いよなっ!!」
梶本は単純に人数を言い間違えただけなのに、セダベル氏の慌て振りは尋常ではありません。
梶本の脳裏になぜか急にゴルゴ13の顔が浮かんできました。梶本という男、ゴルゴ13を知っているということは、一見ぐーたらに見えてもけっこう情報通なのかもしれません。
梶本はひとりごとのようにつぶやきました。
「そいつはカミソリのような目付きで無駄口を叩かず、サバイバル術から医学薬学、メカや人間心理など森羅万象に通じていて格闘技も強く、スペイン語もネイティブ並みに上手く、顔立ちは日系っぽい自称デューク・トウゴウ……な~んちゃって、へへ!へへ……参ったねどうも!」
これを聞いたセダベル氏はさらに慌てました。
「な、何であんた、デュークが居たことを知っているっ!?どうしてっ!?」
今度は梶本がびっくりです。
「えーっ!?本当に居たのっ!?」
しかし、69日目に地底から生還しのは、現場作業員の33人だけです。皆南米系の顔でした。生還者の中にデューク・トウゴウらしき人物は含まれていません。
セダベル氏の言葉から推測されるのは、デューク・トウゴウひとりを地底に残したまま救出作業が終了したらしいことです。救出された作業員はまだ地底に生存者がいることをデューク・トウゴウから固く口止めされていました。救出作業終了後、デューク・トウゴウがどのようにして地底から脱出したかは不明です。
PART 2 標的は2人
2010年8月、コピアコ鉱山で落盤事故が起きる少し前、ゴルゴ13はコピアコ鉱山の乗っ取りを企てている男からコピアコ鉱山の共同経営者であるケネスとビーンの暗殺を依頼されました。二人同時にというのが条件です。二人はいつも鉱山の入口が見下ろせる山腹の山荘に居ました。
ゴルゴ13は依頼を引き受けました。マスコミは、安全管理に手抜きをしていた共同経営者が落盤事故の恨みをかって撃ち殺されたと報じましが、実際は落盤事故の直前にすでに暗殺は実行されていました。
PART 3 落盤、来たる
暗殺を実行したゴルゴ13は、鉱山の現場作業員を装って鉱山に向かうトラックに乗せてもらいました。追手の追及を回避するためです。
トラックにはガデラスとローチャという陽気な二人組が乗っていました。ゴルゴ13を乗せたトラックは鉱山の入口からそのまま中へ入っていきました。
鉱山での小さな落盤は日常茶飯事です。しかしその日の落盤はかなり大規模でした。トラックは引き返すこともままならず、そのまま猛スピードで地下634mにある最深部の避難所に向かいました。避難所はコンクリートで固めてあって安全です。そこへ逃げ込めばとりあえずは助かります。
PART 4 お前は誰?
避難所にはすでに31人の作業員が避難していました。そこへガデラスとローチャそれにゴルゴ13の3人が加わりました。総勢34人です。ガデラスとローチャは避難所の作業員たちとすでに顔見知りでした。ところがゴルゴ13はまったくの新顔です。
「お前は誰だ?初めて見る顔だぞ?」
「デューク・トウゴウだ……明日から働く予定になっている」
「えっ?俺は、現場監督のウリヨアだが……聞いてねえぞ?」
「今日下見してから、正式に契約するつもりだった……」
「そうか。でも、働き出す前から落盤に巻き込まれるとは、ツイてなかったなデューク……」
現場監督はデューク・トウゴウがこれから働く予定の現場作業員であると、すっかり信じていました。
PART 5 わずかな食糧
しばらくは破壊的な落盤が断続的に続きました。これによって主坑道は完全に潰れてしまいました。
落盤が少し落ち着いたところで避難所の外に出てみると、避難所から1.5kmぐらいのところで坑道が完全にふさがれていました。作業員たちは生き埋め状態です。地上からの救出を待つしかありません。
しかし、避難所には水も食糧も十分にはありません。わずかな食糧で33人の作業員とゴルゴ13は救出が来るまで生き延びなくてはなりません。状況はかなり絶望的です。
<参考> :「コピアポ鉱山落盤事故」に関して、Wikipediaは次のように解説しています。
コピアポ鉱山落盤事故
コピアポ鉱山落盤事故(コピアポこうざん らくばんじこ)とは、チリ共和国アタカマ州コピアポ近郊のサンホセ鉱山(en:San Jose Mine)にて、現地時間2010年8月5日に発生した坑道の崩落事故。崩落により33名の男性鉱山作業員が閉じ込められるも、事故から69日後の現地時間10月13日に全員が救出された。サン・ホセ鉱山 (el yacimiento San Joseまたはla mina San Jose) は、コピアポの45km北に位置する。鉱山を所有したのはミネラサンエステバン社であったが、のちに倒産した。
作業員達が閉じ込められたのは地下634mの坑道内で、これは坑道の入り口から5kmの位置である。鉱山会社の弁護士を含む数名が、作業員らが救出された後、鉱山所有者らが破産に追い込まれる可能性を指摘している。サンホセ鉱山は金と銅の産出で1889年から操業してきた。現在の所有者は、マルセロ・ケメニー・ヒューラー(40%)とアレハンドロ・ボーン(60%)の2人である。
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