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2015年12月28日 (月)

「ゴルゴ13」第558話「ドローン革命 前編」を読む

もし、蚊ぐらいの大きさで撮影機能を搭載したドローンが開発されたらどうなるでしょうか。女風呂だろうと女子トイレだろうと盗撮やり放題になってしまいます。世の中大混乱です。まあ、蝉ぐらいの大きさなら何とかなりそうですが、蚊の大きさとなると技術的に無理かもしません。
 

 
さて、「ゴルゴ13 558話」は、無人兵器として開発された新型ドローンのお話です。

南アフリカ共和国の都市ヨハネスブルグのヒルブロウ地区で、民間軍事会社が軍事用ドローンの試験飛行(性能実験)を行っていました。わずかばかりの報酬につられて命懸けで実験に参加した男たちは、軽機関銃を搭載したドローンの標的にされ、次々と殺されていきました。
 
 

PART 1 死の商人
ニューヨークにある民間軍事会社の本部では、迷彩服を着た顔に火傷の痕があるCEO(?)と軍事用ドローンを開発した技術者が、試験飛行の様子をモニターで観察していました。技術者はこの新型兵器がいかに画期的であるかをCEOに力説していました。

そこへ投資家と思しき客人がやってきました。約束の時間はとっくに過ぎています。その客人はでっぷりと肥った古狸のような男です。いかにも金満家といった雰囲気を漂わせています。

 「遅かったな……実験はもう始まっているぞ!」

 「ふんっ。君達のPMC(民間軍事会社)に替わる、新しい投資先を探していたのさ!」

投資家の古狸はこの軍事会社に見切りをつけようとしていました。

 「CIAや国防省……どの組織も君らのように高くつく所ではなく、日に数10ドルで命を張る、ネパール人やバングラデシュ人を雇っているぞ!」

古狸の嫌味にCEOが反論しました。

 「無能な奴らを幾ら雇っても作戦の成果は上がらんさ。」

 「ほう、言うな!」

 「ふふ、まあ見てくれ!革命を起こす新型兵器を!」
 
   

PART 2 実験ができる地
南アフリカ共和国最大の都市ヨハネスブルグは世界で最も治安の悪い都市といわれています。中でもヨハネスブルグ中心部のヒルブロウ地区はほとんど無政府状態です。

Wikipediaは、ヒルブロウ地区の歴史を次のように述べています。

アパルトヘイト時代において、ヨハネスブルグの中心地として繁栄していた。

1970年代までは白人居住地区であり、有色人種の居住は認められていなかった。

アパルトヘイト廃止以降、無職のアフリカ系住民やギャングの本拠地となり治安が極度に悪化しており、ヨハネスブルグ市都市圏内の危険地帯のひとつと言われる。

ヒルブロウ地区はギャングが街を支配する無法地帯です。毎日50人の殺人事件が起きるといわれています。人が何人殺されようと一般の住民は無関心です。まさに殺人の実験にはうってつけの場所です。
 
投資家の古狸は、新型兵器ドローンによって次々と人が殺されていく凄惨な映像をモニターで観て興奮していました。どうやらこの男は人の血を見るのが好きな性分のようです。

 

PART 3 苦笑するG
新型兵器ドローンの攻撃を振り切って、何とか逃げ続けている男がひとりいました。男は、ヒルブロウ地区にそびえ立つポンテシティマンションに逃げ込もうとしていました。
 
このポンテシティマンションのモデルとなっている「ポンテタワー」について、あるサイトは次のように解説しています。

南アフリカ共和国最大の都市ヨハネスブルグは外務省が危険情報を出している都市であり、中でもヨハネスブルグ中心部にあるヒルブロウ地区はギャングの本拠地にもなっている危険地帯のひとつ。そんなヒルブロウ地区にそびえ立つ南半球で最大級の超高層マンション「ポンテタワー」は繁栄の象徴と言われましたが、アパルトヘイト(人種隔離政策)以降にギャングが侵入したことで治安が急激に悪化し、犯罪の巣窟と化してしまいました。

ポンテタワーは54階建てで高さは173メートルの超高層マンション。ヨハネスブルグを一望できる一等地にあるものの、アパルトヘイト後にギャングが侵入したことでほぼ全ての居住者が退去。一時期はギャング団・麻薬の密売人・売春婦が押し寄せ、「性的サービスからドラッグまでなんでも数分で手に入る」とまで言われていたポンテタワーですが、ある時期からセキュリティを改善して今では多くの住民が生活するようになっています。

詳しくは → http://gigazine.net/news/20150515-documentary-of-ponte-tower/

 

ポンテシティマンションを実効支配しているギャング団のボスはピコ・デューベと呼ばれる男です。そのピコがポンテシティマンションで何者かによって殺害されました。

ピコは暗殺を警戒して窓際には絶対に立たない男です。ピコを殺害するには犯罪組織の巣窟となっているポンテシティマンションに侵入するしかありません。

ピコを殺害したのはゴルゴ13でした。驚いたことに、ゴルゴ13もピコによって左腕を撃たれて負傷していました。ゴルゴ13に負傷を負わせるとはピコの射撃の腕も相当なものです。

左腕を負傷したため、ゴルゴ13はマンションからの脱出計画が狂ってしまいました。高層マンションから脱出するために用意した脱出用のパラシュートの操縦が出来なくなってしまったのです。

マンションにピコの部下たちが帰ってきました。部下たちはボスのピコが殺されているのを発見して騒ぎ出しました。ボスを殺した犯人はまだマンション内にいると睨んで犯人捜しを始めました。

ゴルゴ13はとりあえず娼婦の部屋に逃げ込みました。娼婦にピコを殺したと伝えてもなかなか信じてもらえません。

 「ふ、絶対ウソだね。あの男は南ア政府も恐れた元傭兵組織のリーダーで、凄腕の殺し屋なんだよ!」

 「……」

このとき、ゴルゴ13がニヤリと笑いました。いったい何がおかしかったのでしょうか。

それにしても、ただニヤリと笑うだけで読者を大笑いさせてくれるキャラというのも珍しいです(ゴルゴ13にも笑った顔があったとは知りませんでした)。

 

PART 4 依頼内容
数日前、オランダのアムステルダムで、ゴルゴ13はポンテシティマンションの所有者からマンションを不当に占拠しているピコ・デューベの暗殺を依頼されました。ゴルゴ13は自分の狙撃が無駄に終わるような依頼は引き受けません。

 「……奴を殺したところで、また誰かが代わりに現れるだけだろう……」

 「いや、南アの犯罪組織は中南米のカルテルの様な巨大組織ではない。元々は出身部族だけで群がる、小さな組織しかなかったんだ!だが"アラブの春"で中東各国の軍を追い出された奴らを、ピコが集めて巨大化させたのだ。だから、奴さえ殺せば組織はバラバラになる!」

かつては白人居住地区であり有色人種の居住は認められていなかったヒルブロウ地区は、依頼主の故郷でもありました。ゴルゴ13はピコの殺害がポンテシティマンションに巣食っている犯罪組織の解体に有効であると判断して、ピコの暗殺依頼を引き受けました。

ピコ・デューベは「世界初のPMC(民間軍事会社)の創設者の1人であり、20年以上続いたコンゴ内戦を1年で停戦させた男」です。犯罪組織のボスとはいえカリスマ性のあるなかなかの大物みたいです。ゴルゴ13にとってもめったに出会うことのない強敵です。

   

PART 5 不審者は発見!?
ゴルゴ13は女にモテます。娼婦のような薄幸の女には特にモテモテです。裏街道を行く似た者同士ということで、娼婦たちはゴルゴ13に同じにおいを感じるのかもしれません。

ゴルゴ13が逃げ込んだ部屋の娼婦も、初対面のゴルゴ13に傷の手当てをしてくれました。そればかりか、犯人捜しで部屋に乱入してきたピコの部下たちからゴルゴ13をかくまってくれました。チンピラの二人や三人、ゴルゴ13にとってはどうということはないのですが、せっかくの親切を無にしてはいけないということで、おとなしく匿われていました。

 

円柱型をしたポンテシティマンションは中央部が空洞になっています。空洞の部分は上の階から地上が見下ろせます。ピコの部下たちはその空洞部分に不審な男がいるのを発見しました。新型兵器ドローンに追われてマンションに逃げ込んできた男です。
 
 「てめえかっ!?ピコを殺ったのは!?」
 
ピコの部下たちは、男がピコを殺した犯人ではないかと疑っていました。しかし身に覚えのない男には何のことかさっぱりわかりません。



PART 6 ドローン襲来
ニューヨークのPMC(民間軍事会社)の本部では、ドローンに追われた男がポンテシティマンションに逃げ込んだ映像が流れていました。

投資家の古狸がやや興奮気味に言いました。

 「おいっ!!獲物が、ビルの中に入っていったぞ!!追えるのか!?」

追いかけることは可能でもビルの中まで追いかけると、戦闘にマンションの住民を巻き込んでしまう恐れがあります。そのため気弱な技術者はドローンの突入を躊躇していました。しかしCEOと古狸は血を見るのが大好きな人種です。

 「ポンテシティ……あの地区でも、特に悪名高い、ギャング達の巣窟だ!構わん、殺れっ!」

 「うむ、抵抗したら皆殺しにしろ!逆に警察に感謝されるぞ!ふふふ……」

数機のドローンがマンションの空洞部分に入り込んできました。事情を知らないピコの部下たちは、無防備のまま不思議そうにドローンを眺めていました。近づいてきたドローンが突然軽機関銃を発射しました。通路にいたピコの部下たちはほとんど皆殺しです。何人かは命からがら部屋の中へ逃げ込んだようです。

CEOが、ヒルブロウ地区の現地でドローンを操縦している部下に指示を出しました。

 「アルファ隊は、命令があるまでその場で待機!デルタ隊は奴らが隠れた49階を外から包囲しろ!」

「なるほど!窓から攻撃するのか!」
 
これはもう実験の域を超えています。人の血が見たいために、無用の殺戮にご執心といった感じです。古狸はワイン片手にご満悦です。CEOも古狸もこういう殺戮行為が大好きみたいです。
 

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2015年12月23日 (水)

暖房費節約の知恵・ユニクロの「ヒートテック フリースネックウォーマー」

最近買った衣料品で大変な優れものを発見しました。ユニクロの「ヒートテック フリースネックウォーマー」(990円+消費税)です。

このネックウォーマーは防風性に優れているというのが売りですが、ファッション性に難があるのか、屋外ではあまり見かけません。やはり主流はマフラーです。でも、ファッションというのは気まぐれです。そのうち「不必要に長ったらしいマフラーなんてダサい、コンパクトなネックウォーマーのほうがかっこいい」とされる時代がくるかもしれません。

さて、このネックウォーマーですが、これを室内で着用すると、なんと暖房がいらなくなります。ウソだと思ったら試してみてください(少なくとも暖房の温度を5℃は下げられます)。

さらに、せんべい布団で寝るときが寒いという人には、就寝時にもこのネックウォーマーを着用することをおススメします。寒いどころか布団が1枚少なくて済みます。

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2015年12月11日 (金)

「ゴルゴ13」第557話「33+G 後編」を読む

後編(完結編)は、ゴルゴ13がどのようにしてコピアコ鉱山の落盤事故から救出されたかというお話でした。

ゴルゴ13のゆくえを追っていた米国・国家安全保障局(NSA)の特別分析班チーフ、ミック・モチヅキが、実はゴルゴ13のサポーター(?)だったというのがオチでした。

ゴルゴ13はドミノタイルを使って暗号を送りました。その暗号はミック・モチヅキによってすぐに解読されました。
 
ドミノタイルの2つの数字を足すと、
 
  7 15 12  7 15
  8
  5
12
16 11 15 16 9  1  3 15

この数字にアルファベットを当てはめると、

  G  O  L  G  O
  H
  E
  L
  P  K  O  P  I  A  C  O

NSAのミック・モチヅキにとってこの程度の暗号はすぐに解読できます。ゴルゴ13も必ず解読されると信じていたと思います。


話が横道にそれますが、数学者の藤原正彦氏が「情報機関の創設を」というエッセイ(新潮文庫の「祖国とは国語」に収録)の中で、次のようなことを述べています。

 二十一世紀の世界は軍事よりも情報による戦争が主となりそうである。この戦争では政治的、軍事的な同盟は意味をなさず、世界すべてが敵国となる。しかもこの帰趨が国の興亡を決める。それを予見したアメリカでは、すでにNSA(国家安全保障局)やCIA(中央情報局)などの情報機関で、計二十万人以上が数兆円の予算の下で活動しているといわれる。
 イギリスでもGCHQ(政府通信本部)だけで一万数千人が暗号をはじめとした情報活動に携わっている。どの主要国にも同様の機関がある。

それなのに日本には情報活動を担う中核機関がありません。藤原正彦氏によれば、武士道精神も時と場合によりけりで、エッセイの結論は次のようになっていました。

 自国の情報に鍵をかけ他国の情報の鍵を開ける、という非紳士的なことはしたくない、と日本人は思いがちだが、紳士の国イギリスこそ、スパイや傍受や暗号解読のチャンピオンである。彼等は、「愚者は武力に頼り、賢者は情報に頼る」と信じている。どの国も国益しか考えない、という浅ましい世界にあって、日本だけが孤高を保つのは至難の業と思う。

 

 

さて、地下634mに閉じ込めらた33人の作業員の救出にはフェニックスカプセルという最新鋭機が使われました。救出に使われたフェニックスカプセルは2号機ですが、3号機と4号機も存在します。このフェニックスカプセルはゴルゴ13の救出のためにも必要です。
 
ミック・モチヅキがゴルゴ13の救出を依頼したフィッシャーという男は、フェニックスカプセルを製造したアスワン社を訪問して3号機を買い取ろうとしました。代金はなんと白紙の小切手です。

それでも政府の命令で製造したフェニックスカプセルを勝手に売るわけにはいきません。アスワン社の社長(?)は売ったのではなく盗まれたことにして欲しいと提案してきました。

 「風雨の耐久試験のために、屋外に出しておいたフェニックスカプセル3号機を、誰かが盗み去って行ったとしたら……これはどうしょうもないですな。」

交渉成立です。盗み出すことになりました。

フェニックスカプセル3号機によってゴルゴ13が救出されました。白紙の小切手についてはゴルゴ13が負担することになると思います。

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2015年12月 4日 (金)

つげ義春と水木しげるの最後の会話

5、6年前、つげ義春は地元の神社で偶然水木しげるに会ったそうです。そのとき水木しげるがつげ義春に訊きました。

 「(生きていても)つまらんでしょ?」

つげ義春が答えました。

 「つまらんです」

水木しげるが大きくうなづいて、

 「やっぱり!(水木サンもつまらんですよ)

これがつげ義春が水木しげると交わした最後の会話だそうです。

 

この会話の意味を考えていたら、なぜか突然フランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」浮かんできました(歌詞はやや不正確)。

 ♪ みな楽しそうにしているけど ♪

  ♪ ほんとうの××なんて歌の中だけよ ♪

どんなに現世で成功しても、人生に虚しさを感じてしまうのは、ニヒリスト(虚無主義者)の宿命なのかもしれません。

 

 

 

 

 

フランス・ギャル/夢みるシャンソン人形

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