PART 1 ドローンの実力
ピコの部下が娼婦レトラの部屋に逃げ込みました。しかし無数のドローンが外側から迫ってきます。アルファ隊です。ドローンはガラス戸をぶち破り搭載した軽機関銃でピコの部下を撃ち殺しました。
ドローンはしばらく部屋の中に留まっていましたが、ほかに誰もいないことを確認すると引き上げていきました。
ゴルゴ13はレトラとともに天井裏に避難していました。天井裏から下りてきたゴルゴ13はピコの部下に撃ち落とされたドローンの残骸か一機ベットの上に転がっているのを手に取って凝視していました。ドローンの製造元を確認していたのかもしれません。
娼婦レトラは天井裏まで飛んできた流れ弾に当たって脇腹を負傷していました。それでもレトラは自分のことより妹のゼファ二―の身の上を心配していました。
PART 2 Gへの依頼
ニューヨークの民間軍事会社UDSS(ユニバーサル・ドローン・セキュリティ・サービス)の本社では、投資家の古狸がドローンによってポンテシティマンションの住民が無差別に殺戮されてゆく映像をモニターで鑑賞(?)して楽しんでいました。
「殺れ殺れっ!!狩り尽くせ!!」
人の血を見るのが大好きな古狸は凄惨なモニターの映像を観てよだれを垂らして興奮していました。
「素晴らしい!!生命は失われる瞬間が一番輝く!!へーっへへへ……」
ドローンを開発した技術者は悪趣味な古狸に苦りきっていました。しかし古狸は出資者です。会社のことを考えるとあからさまに文句を言うわけにもいきません。気弱な技術者は古狸に聞こえないように小さな声で呟きました。
「こ、この男は投資家なんかじゃない、ただの悪魔だ!しかし、我が社には今、この男の金が要る……」
娼婦レトラは、ドローンに襲撃されて殺された娼婦たちの中に妹のゼファ二―がいるのを発見しました。ゼファニーはすでに息絶えていました。たったひとりの妹を亡くして悲しみに暮れるレトラは、ゴルゴ13に仇討ちを依頼してきました。
娼婦から足を洗って皆でレストランをやろうとして貯めていたお金が天井裏に隠してあるというのです。そのお金でゴルゴ13を雇うつもりです。しかし、ゴルゴ13が雇えるほどのお金が貯まっていれば、とっくにレストランが開けています。
さて、ゴルゴ13はレトラの依頼を引き受けたでしょうか?考えられるのは次の3パターンです。
1. 格安の出血サービスで引き受けた。
2. 匿ってくれたお礼に無報酬で引き受けた。
3. 依頼を無視して立ち去った。
ゴルゴ13は依頼を無視して立ち去ったと思います(たぶん)。しかしレトラの依頼は実行されました(たぶん)。結果的にゴルゴ13はレトラの依頼を無報酬で引き受けたことになります。無報酬で引き受けつつ、薄幸の依頼主にあえて無報酬で引き受けるとは言いわない……これがゴルゴ13の美学というものです。
PART 3 目算は外れて……
ニューヨークの民間軍事会社UDSS(ユニバーサル・ドローン・セキュリティ・サービス)の本社に、国務省(日本の外務省に相当)とペンタゴン(国防総省)とCIA(中央情報局)の役人が招かれて新しく開発された軍事用ドローンについて説明を受けていました。オールバックが国務省、神経質そうなメガネがCIA、軍服を着た禿頭がペンタゴンの役人です。
モニターに映し出された殺戮シーンは衝撃的でしたが、あまりにも衝撃的なために国務省の役人が予算獲得の説得工作にこんな映像は使えないと言い出しました。「(もう少し)議員の誰もが、期待する実績」を示してほしいというのです。
UDSSが開発した軍事用ドローンは、これまでの無人機に比較してはるかに格安です。同じ無人機でもリーバ―なら1機1700万ドル(約20億4000万円)、それよりも安いプレデターでも450万ドル(約5億4000万円)はします。これに対して、UDSSが開発した軍事用ドローンはわずか1万ドル(約120万円)です。
これだけ安ければお試しで使ってみる価値はあります。実績もへったくれないと思うのですが、世の中には米国にとってもっと安上がりな味方がいました。
CIA 「ホワイトハウスが日本政府に圧力をかけ、新安保法案を通させた。もうすぐ自衛隊が大いに働いてくれることになる。」
ペンタゴン 「うむ。君ら(民間軍事会社)に高い金を払って頼んでいる重要施設や弾薬輸送の際の警護、要人警護等は、彼らがやってくれることになるんだ。」
国務省 「日本の自衛隊は優秀な上に、規律が確立しているからな。ヘタなPMC(民間軍事会社)より遥かに優秀だ。第一、我が国の出費がなくて済むからね。」
ペンタゴン 「と、言う事だ。ま、日本の自衛隊より君達のドローンの方が優秀である事を示す実績でもできたら、また連絡しくれたまえ!」
軍事用ドローンで大儲けができるはずだったのに、古狸たちの目算は外れてしまいました。ちなみに、迷彩服を着た顔に火傷の痕のある男はメイザー、軍事用ドローンを開発た技術者はベルという名前がありました。しかし投資家の古狸は依然として名前が不明です。
PART 4 銃職人デイブ・マッカートニー
ゴルゴ13の無茶な要求にブツブツ文句を言いながらもいつも必ず応えてくれるのが凄腕の銃職人デイブ・マッカートニーです。デイブの銃職人としての腕前はスナイパーのゴルゴ13並みです。ゴルゴ13はデイブの銃職人としての腕に全幅の信頼を置いています。
ゴルゴ13はデイブに戦闘機並みの能力を持つ機器が欲しいと依頼しました。しかし銃専門のデイブにあっさり断られてしまいました。それでもその代わりに「戦闘機なんかより何倍も強力な能力を持つ奴」が見つかったといわれました。なにやら秘密兵器みたいです。
ゴルゴ13はデイブから腕に"SLQ-32"という入れ墨のある男を紹介されました。ゴルゴ13はその男に大金を渡して何かを依頼しました。何を依頼したのかは不明です。
PART 5 一か八かの……
NYマラソンのスタート地点でUDSS社のドローンがイスラム過激派と思われるテロを防いだというニュースが流れました。しかしこれは、古狸が考えたヤラセでした。もしバレたら軍事用ドローンの信用は地に墜ちてしまいます。しかもこの程度のテロ防止ではドローンの実力をアピールするには力不足です。ホワイトハウスを動かすことはできません。
ほかにもっといいアイデアはないのかと、投資家の古狸と迷彩服のメイザーが口論しているところに開発技術者のベルが血相を変えて飛び込んできました。ラガーディア空港で警備に当たっていたドローンがニューヨークにやってきたゴルゴ13を撮影していたというのです。
ゴルゴ13はなぜニューヨークにやってきたのか……ゴルゴ13の標的はひょっとすると自分たちかもしれないと考えたメイザーは、腹をくくりました。ゴルゴ13を実験の標的にするつもりです。
「奴を始末すれば、アメリカ政府だけでなく、世界中から、我が社のドローンへの注文が来るぞ!」
軍隊なら一個師団に匹敵するといわれているゴルゴ13を標的にするなんて……気弱なベルはビビりまくっていましたが、古狸は巨万の富にありつけると考えて大乗り気です。
そのころゴルゴ13はモーターボートで水上からマンハッタンに向かっていました。ゴルゴ13は古狸たちが自分の現在位置を把握していることをすでに承知していました。やがて軍事用ドローンが自分に襲いかかってくることも想定済みです。銃職人のデイブ・マッカートニーが危惧していたように、ゴルゴ13は自分を囮にして逆襲の一手を考えていました(たぶん)。
ゴルゴ13にどんな秘策があるのか……次号・後編(完結編)は巻頭カラーです。
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