リドキスタンは架空の国ですが、リドキスタンの大統領官邸はトルクメニスタンの大統領宮殿にそっくりです。それに天然ガスの生産量や輸出量から判断するとモデルになっているのはトルクメニスタンみたいです。
天然ガスの生産量(2014年)
順位 単位百万立方メートル
11 トルクメニスタン 69271
15 ウズベキスタン 57291
31 カザフスタン 19251
天然ガスの輸出量(2014年)
順位 単位百万ドル
11 トルクメニスタン 13400
25 ウズベキスタン 2084
26 カザフスタン 1884
ちなみに天然ガスの輸入国ベスト3は、
順位 単位百万ドル
1 日本 74213
2 ドイツ 44029
3 韓国 31424
PART 1 ラスキンの狙い
リドキスタンの政府ナンバー2は、タジモフという男です。前編でマリコフ大統領に、「中国は油断のならない相手です。中国への依存を深める事は、我が国の主権を危うくします。」と進言していたあの男です。
リドキスタンの大統領官邸では、このタジモフを中心に幹部らがマリコフ大統領亡き後の対応を協議していました。
「大統領の死去は、まだ発表するな…イスラム過激派の蜂起に備えて、明朝に戒厳令を発令する!」
しかし、すでにマリコフ大統領が暗殺された事実はイスラム過激派に知られていました。ロシアのラスキン安全保障担当書記が情報を流したのです。
突然イスラム過激派が武装蜂起してリドキスタンの大統領官邸を襲撃してきました。
「や、奴らは大統領官邸を占拠して、一気に政府転覆を狙ってくるぞっ。すぐ、軍に出動命令を出せっ!!」
「敵は迫っており、軍は間に合いませんっ!!当面は50名の警備隊だけで、凌がねばっ!!」
大ピンチです。リドキスタンは政府崩壊の危機を迎えていました。ところがそのとき、タイミングよくロシアの特殊部隊が現れました。イスラム過激派は一網打尽です。
すべてはラスキンの描いたシナリオ通りに事が運びました。
故・マリコフ大統領の側近だったタジモフは、かつてKGB(旧ソ連の情報機関・秘密警察)の下部組織で働いていたことのある男です。中国に対する警戒心もロシアと共有しています。ラスキンはタジモフを新大統領に据えて、中国の影響力をリドキスタンから排除するつもりです。
PART 2 マリコフ暗殺の黒幕
日本では首相官邸で吉村国家安全保障局長がリドキスタンの情勢分析を行っていました。
リドキスタンの大統領選挙は親ロシア派のタジモフが圧勝しました。これでリドキスタンは、親中国路線から親ロシア路線へ舵を切ることになります。
マリコフ大統領暗殺以後、情勢はすべてロシアの思惑通りに運んでいました。それにしてもあまりにも話がうま過ぎます。吉村国家安全保障局長は何か裏があることを見抜いていました。
マリコフ大統領暗殺にロシアが関与しているのではないか……状況証拠としては真っ黒です。
リドキスタンの新大統領にタジモフが就任したことによって、石油・化学プラント建設計画は日本の企業連合が"再逆転"受注することになりました。
リドキスタンの大統領官邸でタジモフ大統領と日本の吉村国家安全保障局長の間で調印式が行われたとき、ロシアからラスキン安全保障担当書記も駆けつけてきました。
ラスキンは、日本に対して、成功の果実の分け前を要求してきました。サハリン沖の天然ガス田から北海道へのパイプラインを日本の負担で敷設して欲しいというのです。
しかし、北方領土問題が解決していないため、日本とロシアの間にはいまだに平和条約が結ばれていません。領土問題を棚上げにしてパイプラインの敷設など無理な話です。そんなことをしたら日本の国内で大反対が起きます。一歩間違えれば内閣が潰れるかもしれません。
即答をしぶる吉村国家安全保障局長をラスキンが脅迫してきました。
「石油プラント建設はすでに契約済み……今後、思わぬ大事故が起きても、貴国は工事を完成させる義務を、負う事になりますがね、ふふふふ……」
逆らうと「"思わぬ大事故"が起きるかもしれませんよ」というわけです。
ここで個人的な意見を述べさせてもらいます。ロシアには、北方領土などさっさと日本に返還して日本と平和条約を締結することをおススメしたいです。北方領土に固執するよりも日本と良好な関係を築いて日本の技術力や経済力をロシアの経済発展のために活用したほうがよほど国益に叶っています。ロシアはなぜそういう選択をしないのでしょうか。
北方領土が日本に返還されたからといって、そこに住んでいるロシア人が追い出されることはありません(たぶん)。今まで通りに暮らしていけると思います。いや、むしろ日本に返還されたほうが北方領土の暮らしは便利になるかもしれません。
PART 3 馬(マー)の揺さぶり
ドイツがロシアに対し、天然ガス輸入の段階的削減を通告してきました。最終的には輸入契約の打ち切りです。裏でドイツを動かしたのは中国の馬(マー)外交副本部長でした。不足する天然ガスは中国が格安で提供しますとでも言ったのでしょう。
天然ガスの生産量(2014年)
順位 単位百万立方メートル
1 米国 728265
2 ロシア 578733
3 カタール 177229
財政が逼迫しているロシアはこれ以上天然ガスの生産量を減らすことは不可能です。背に腹は代えられません。ロシアはリドキスタンからの天然ガス輸入を打ち切ることにしました。リドキスタンから天然ガスを受け取ってもダブつくだけで送る先がないのです。
ロシア以上に困惑したのはリドキスタンでした。ロシアに天然ガスの輸入を打ち切られて困り果てたリドキスタンはもっとも警戒していたはずの中国の泣きつきました。
タジモフ大統領は、リドキスタンの中国大使館を訪れ、馬(マー)外交副本部長に天然ガスの輸入量を増やしてもらえないかと懇願しました。
すべては馬のシナリオ通りです。馬はリドキスタンからの天然ガス輸入を増量する条件として、ロシアに代わってラジーク空軍基地を中国に貸与するよう要求してきました。
しかしこのときリドキスタンの大統領官邸はロシアの特殊部隊の管轄下にありました。イスラム過激派を掃討した特殊部隊がそのまま居座ったのです。
タジモフ大統領がロシアに逆らえない事情を説明すると、馬は不敵な笑みを浮かべて言いました。
「目には目を、だ!大統領官邸を奪回すれば良いんですな?」
馬には直接中国がロシアに対して武力行使することなく大統領官邸を奪回する秘策がありました。傭兵部隊の活用です。
PART 4 吉村、動く
中国とロシアがリドキスタンを巡って覇権争いを展開している一方で、日本の吉村国家安全保障局長はトルコを訪れていました。吉村はトルコの大統領(?)に次のような提案をしました。
「日本の企業連合が受注しているリドキスタンの石油・化学プラント建設に、貴国の建設会社の参加をお願いしたい。貴国と二人三脚で、中央アジア戦略を進めたいのです。」
吉村が石油・化学プラント建設にトルコの建設会社を引き込んだのは、ロシアが"思わぬ大事故"を起こす恐れがあったからです(たぶん)。日本だけでは大事故が起きても泣き寝入りになってしまいます。しかしトルコが絡んでいればロシアもあまり無茶なことはできなくなります。
吉村はトルコに対してもう一つ何かを提案(?)しました。今のところその内容は不明です。
PART 5 英国への依頼
英国は米国の反対を押し切って中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)に加盟してしまいました。また中国製原子炉の導入など約7兆4000億円におよぶビジネス案件の契約を中国と締結しました。最近の英国は中国にすり寄ろうとする姿勢が鮮明です。中国は中国で英国を「一帯一路」経済圏構想の終着点と位置づけています。
英国が中国をどのような国と考えているのかわかりませんが、今のところは両国の関係はかつてないほど良好です。
中国の馬(マー)外交副本部長は北京からロンドン(?)に国際電話をかけていました。電話で誰と話をしているのかわかりませんが、馬は電話の相手に対してグルカ兵部隊を紹介して欲しいと依頼していました。グルカ兵にリドキスタンの大統領官邸を襲撃させるつもりです。
この「グルカ兵」について、Wikipediaは次のように解説しています。
成り立ち
19世紀、ネパールとイギリス東インド会社軍との3度にわたる戦争(英・ネパール戦争)の停戦条約が締結される際に、ネパール山岳民族特有の尚武の気性と白兵戦能力、宗教的な制約が小さい点(ヒンドゥー教徒のインド人は宗教的な制約が多いため近代戦の兵士に向かず、運用に不自由をきたしていた)に目をつけたイギリス東インド会社は、グルカ兵が傭兵として同社の軍に志願することをネパールに認めさせた。
その後、セポイの乱が発生すると、ネパールは14,000人のグルカ兵を派遣し、イギリス軍が行った鎮圧戦で大きな戦力となり、後に発足した英印軍では、シク教徒・ムスリム系インド人・パシュトゥン人などとともに重要な地位を占めた。その後も第二次世界大戦においては日本軍とも交戦した他、イギリス連邦占領軍として日本の占領任務や朝鮮戦争にも従事した。
現在
以上の歴史からイギリスやイギリス連邦諸国との繋がりが深い。イギリス陸軍にはグルカ兵からなるグルカ旅団があり、2005年現在、イギリス軍に従軍しているグルカ兵は約3,600人である。非常に勇猛なことで知られフォークランド紛争など、イギリスが関わる戦争や紛争地域への派兵で先遣隊として派遣されることが多い。フォークランド紛争時にはグルカの兵が攻めてきたと聞いて逃げ出すアルゼンチン部隊もあったという。
イギリス本国や植民地(1997年以前の香港)、ブルネイなどのイギリス連邦諸国に駐屯しているほか、マレーシア軍、インド国軍、アメリカ海軍、シンガポール警察にも雇用されている。この様に現在もイギリスの信頼は非常に深く、2004年には、イギリスのブレア首相によって、イギリス軍で勤務したグルカ兵は、完全なイギリスの市民権を付与されるようになった。
一方で冷戦の終結により、イギリス軍の部隊縮小計画で若いまま退役したグルカ兵が、シエラレオネ内戦などの紛争で傭兵として参加していることが問題になったという。
詳しくは → https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%AB%E5%85%B5
PART 6 露軍VSグルカ兵
馬の依頼によってグルカ兵はリドキスタンの大統領官邸を襲撃しました。しかし勇猛なグルカ兵も徹底的に訓練されたロシアの特殊部隊には勝てません。激しい戦闘の末、殲滅されてしまいました。
グルカ兵が狙ていたのは官邸にいたロシアのラスキン安全保障担当書記です。ラスキンは間一髪のところで命拾いをしました。馬が想定していたよりもロシアの特殊部隊は強力でした。
PART 7 そして馬は……
馬はリドキスタンでラスキン暗殺の知らせを今か今かと待っていました。しかし馬にもたらされたのは暗殺失敗の知らせでした。計画が失敗に終わったことを知った馬は、慌ててリドキスタン国際空港に向かいました。国外に脱出するつもりです。しかしすでに遅しです。空港では警察当局(?)が馬を待ち受けていました……。
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