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2016年5月11日 (水)

「ゴルゴ13」第562話「Gの遺伝子 前編」を読む

PART 1 死神の夢
フランスのパリに、私立サン・リュカ中学校という名門のお嬢様学校があります。この中学校にファネット・ゴベールという眼光の鋭い女生徒がいました。絶世の美少女です。左目の下に泣きぼくろがあります。

ファネットの夢の中に出てくる女性も左目の下にほくろがあります。この女性はファネットではなく明らかに大人の女性です。おそらくはファネットの実の母親です。

ファネット・ゴベールはライフル射撃の名手です。その腕前は中学生ながらオリンピック級です。いや、実際はそれ以上で狙った的を射抜く正確さはオリンピックのレベルさえ超えているかもしれません。同級生たちはファネットのことを"聖なる怪物"と呼んで、尊敬と憧れの眼差しで見つめています。
 
ファネット・ゴベールは体操にスカッシュ、テニス、ジュード―とあらゆるスポーツ競技の万能選手です。どの分野でもその実力はトップレベルです。それでもファネットはライフル以外に興味を示すことはありません。ファネットがその他のスポーツを行うのは、あくまでもライフルの基礎技術を鍛えるために必要だからです。

ファネット・ゴベールが優れているのは運動能力だけではありません。学業成績も優秀です。去年、史上最年少タイで、すでに大学入学資格(バカロレア)を取得しています。知能指数は180です。
 
知能指数は130以上70以下は異常値と言われています。Wikipediaは130以上の知能指数について、次のように解説しています。

130以上の場合、その人間の英知はすさまじく強くなり、周囲をその思考回路で圧倒し、場合によっては相手の気を失わせてしまう。また、様々な超絶的な能力を少なくとも一つは持ち、その分野において、同じ高いほうに異常値で、その分野が得意の人と遭遇しない限り、絶対的な権力を持ち続ける。

140以上の場合は更にそれが顕著になり、周囲の人々はそのオーラに圧倒され、そしてその後畏怖と敬意を感じ、「天才」と呼称する。その頭脳が暴走した場合、一般人が束になっても返り討ちになることが多く、同様の高いほうに異常値の人間を数人もしくはその人よりもIQが高い人間を連れてくるしかない。しかし、異常値の人間そのものが希少なため、対応が遅れると大惨事を招くこともある。

160以上の場合は、その能力ゆえに周囲から危険視されることも多い、事実上最大限にその頭脳能力を発揮した場合、周囲はおろか国家単位で破滅の危機に陥れる危険性もはらんでいる。もちろん、逆に活用できれば、それはあらゆる人々に幸福を与える救世主・神ともなりえるのである。しかし自分で160ものIQをコントロールするのは非常に難しく逆にIQに身体がコントロールされる事もあるという。

200以上の場合、現代では幼年期は国家や企業に献体的にもてあそばれる。青年期にもなると、己の人生・哲学・エネルギーを完全にコントロールし人類への究極の利益、究極の幸福を探究し、IQを隠し凡人として静かに暮らす例も多い。

例:10歳で大学を首席で卒業後、小学校に凡人として戻り部活に励む。 莫大な予算を自由に使える研究機関を退職し、田舎の保育士になる。等

また、神である自分を隠すため、地域に根ざしたもっともポピュラーな宗教を選択し、神への信心行為をたしなむ傾向がある。

スポーツ万能、知能指数180……まだあります。ファネット・ゴベールは習っているわけでもないのにピアノの腕がプロ級です。さらに美術に関してもその特異な才能が認められています。パリ学生絵画展では"ゴルゴダの呼び声"というタイトルの宗教画風作品で金賞を受賞しました。受賞作は現在"モンマルトルの丘美術館"で公開されています。

 
芸術記事の評判が高い日刊紙『キニコス』の記者がパリ学生絵画展での金賞受賞を機に、噂の天才少女ファネット・ゴベールの取材にやってきました。

『キニコス』の記者がファネットに質問しました。

 「まるで昔の東欧の宗教画のような、凄みが感じられます。どんな画家の……どんな画風に影響を受けたのでしょう?」
 

ファネットは無表情のまま淡々と事実だけを述べました。

 「美術の授業で"昨夜見た夢を描くように"と言われ、幼いころからよく見ていた死神の夢をまた見たので描いたのです。先生が絵を見て、タイトルを考えて出品されたのですが、私は、ライフル以外興味がなくて絵の事はよくわからないのです……すみません……」
 
 

PART 2 奴は日本人?
数日後、モンマルトンの丘美術館に1人の男が現れました。ゴルゴ13です。ゴルゴ13は日刊紙『キニコス』に掲載されたファネット・ゴベールの記事を見て、パリ学生絵画展金賞受賞作"ゴルゴダの呼び声"に異常な関心を示しました。
 
ゴルゴ13は、美術館の館長に10万ユーロ(約1200万円)を払って閉館後の美術館を貸し切りにしてもらいました。そして"ゴルゴダの呼び声"を一人でじっくり鑑賞(?)していました。

 「パリ学生絵画展金賞……"ゴルゴダの呼び声"……この絵に間違いない……」

"ゴルゴダの呼び声"……ゴルゴ13には絵画に描かれているシーンに見覚えがありました(たぶん)。

作者のファネット・ゴベールが14歳の少女だという事を知って、ゴルゴ13はどこか感慨深げでした。ファネットは自分の娘かもしれない……ゴルゴ13には思い当る記憶がありました(たぶん)。
 


 
PART 3 ウサギのように臆病
ファネット・ゴベールはパリ郊外の豪邸に住んでいます。父のジャン・ミッシェル・ゴベールは大病院の院長です。ジャン・ミッシェルは人道主義者のようでお金のない人には無料で診察もしています。

10年前、つまりファネットが4歳のとき、ファネットは銃で撃たれて生死の境をさまよったことがありました。左腕には当時の傷痕が残っています。父のジャン・ミッシェル・ゴベールはライフルにしか興味を示さない娘ファネットの性癖を次のように解釈していました。

 「あの子は、10年前の事を忘れているが……恐らく記憶の底には残っている……ライフルを趣味にしているのは、男勝りの気の強さから来るものなどではなく、トラウマのせいでウサギのように臆病になったんだ。心の拠り所なんだよ、ライフルが。」
 

 

PART 4 卓越した腕
ファネットの写真が日刊紙『キニコス』に掲載されてしまったことで、母親のイレーヌは娘が誘拐されはしないかと心配していました。母が心配してくれることは嬉しい……でも……ファネットは自分の心の中を内省していました。

 「両親は、優しい……なのに愛されるほど自分の居場所はここではないような気がするのは、何故だろう……自分が本当の自分でないような焦燥感がある……」

ファネットは優しい母親が実は自分を生んでくれた本当の母親ではないことに無意識のうちに気がついていました。とにかくファネットは父親のジャン・ミッシェルとも母親のイレーヌともまったく似ていません。ファネットは眼光の鋭い目の覚める美少女です。それなのに両親はジャガイモかカボチャみたいな顔をしています。

物思いにふけっていたファネットは、ふと庭に二人の怪しい人影を見つけました。金銭目当てに忍び込んだ不法移民の二人組です。ファネットはこれまで人に銃口を向けたことはありませんでした。しかし今は緊急事態です。両親と自分を守るためには強盗と思しき二人組を撃退しなくてはなりません。ファネットはライフルを構えました。

ファネットが所有しているライフルは競技用で殺傷能力は脆弱です。競技用のライフルでは致命傷を負わせることはできません。また中途半端な狙撃をすると強盗が逆上して襲いかかってくる恐れがあります。下手な狙撃はかえって危険です。競技用のライフルで強盗を撃退するためには、強盗に最大限のダメージを与える確実な狙撃が必要です。ファネットにはそれを実行できる卓越した腕がありました。
 

 

PART 5 Gのルーツ
米国のシリコンバレーにアラクネットというIT企業の本社があります。表向きはゴシップ記事専門の配信会社ですが、内実は極秘で通信の監視をしている国家安全保障局(NSA)のPRISMシステム管制局です。

このPRISMシステム管制局のカーク局長のもとに国家安全保障局のマクレラン長官が訪れました。

電話やメールはすべてだれかに盗聴(盗読?)されていると考えるのがインテリジェンスに携わる人間の常識です。また、どんなに難解な暗号でも解読されてしまう恐れがあります。暗号も絶対安全とはいえません。そこでセキュリティ面で一番安全な情報伝達手段は、紙のメモの手渡しということになります。
 
マクレラン長官を局長ごときが呼び出したことを恐縮しながらもカーク局長は重要情報が書かれた資料をマクレラン長官に手渡しました。
 
その資料には、PRISMシステム管制局が何年にも渡って探し続けていた"ゴルゴ13のルーツ"に関する情報が書かれていました。正確には"ゴルゴ13のルーツを暴く鍵"の情報です。

カーク局長は、『キニコス』に掲載されたファネット・ゴベールの記事に関心を示し、ファネット・ゴベールのことを徹底的に調査したようです。

カーク局長は、ファネット・ゴベールはゴルコ13の遺伝子を持つ"Gの娘"という驚愕の事実に辿り着きました。

   
   

PART 6 ファネットの記憶
昨夜、フャネットは初めて人を撃ちました。強盗を撃退したことは両親には内緒です。心配をかけたくないからです。人を撃った体験がファネットに忘れていた記憶を蘇らせました。

 「夢の中では、ぼんやりとしか見えなかった死神の姿が……写真の様にはっきりと見えた! いつも見ていた"死神の夢"は、凄惨な虐殺現場の記憶に基づくものだった……その記憶が、今、確かなものとして蘇った……!!」

フャネットは核心に迫る独白を続けます。

 「善良な医者の両親のもとに生まれた私に、何故あんな記憶があるのだろう……?私は本当は、何者なんだろう?私によく似たあの女……あの女を殺した死神を……懐かしく感じるのは何故なんだろう?」

それはね、あの死神があなたのお父さんだからですよ。
 
 

   
PART 7 まさか娘とは……
NSA(アメリカ国家安全保障局)のマクレラン長官とPRISMシステム管制局のカーク局長はゴルゴ13に"首輪"をつけようとしていました。

ふたりはファネット・コベールがゴルゴ13の娘であると確信しました。そこで、ファネットを人質にしてゴルゴ13を操縦しようと考えました(たぶん)。果たしてうまくいくでしょうか?
 
 
今後「Gの遺伝子」がどういう展開になるにしても、ゴルゴ13がファネットを射殺するというシーンだけは勘弁してほしいです。できれば、驚愕の事実を知ってしまったNSAの二人を射殺するという展開を期待したいです。でもファネットは長く生きることが許されない運命なのかもしれません。美人薄命というからね。
 
本当にファネットはゴルゴ13の娘なのかどうか……99%確実でも真実は闇に包まれたまま終わってしまうというのがいつものパターンです。

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