2006年7月18日 (火)

MSCBについて

「機動的な資金調達手段、IR強化が課題」と題して、ロイターが流したMSCB特集の記事がありました。

  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060711-00000555-reu-bus_all

これについては、「馬鹿いってんじゃないよ!」というのが投資家サイドの率直な感想だと思います。そこで投資家の立場からMSCBに対する自己防衛策を考えてみました。

MSCBによる資金調達はやらないということを任意的記載事項として定款に書き込んでしまうことはできないものでしょうか。もしできるのであれば、株主提案のできる大株主には是非株主提案をしてもらいたです。一般の企業であれば、株主総会でほぼ間違いなく過半数の賛成が得られると思います。

また、突然のMSCBの発行はインサイダー取引の温床にもなりかねません。M&Aなどに積極的でMSCBやLBOによる資金調達も重要な選択肢のひとつとして位置づけている企業は、とりあえずそのことをはっきりと投資家に知らせておくべきだと思います。

MSCBによる資金調達はやらないことにしている企業と状況によってはやるかもしれない企業が事前にはっきり識別できていれば、投資家の立場からは銘柄を選択する際のひとつの判断材料になると思います。

企業家や証券会社は既存株主の利益を無視してMSCBによる資金調達を普及させようと画策しているようです。調達資金が同額であれば公募増資よりもMSCBのほうが株価に対するインパクトを小さくできるといいたいのでしょうが、これは株価に対するインパクトが同じであれば公募増資よりもMSCBのほうがより巨額の資金が調達できるということを意味します。こうした資金調達手段が普及すれば公募増資に輪をかけた野放図な資金調達が横行する危険があります。景気が減速して株価が本格的下落局面を迎えるようになれば、早い者勝ちとばかりに業績悪化企業のMSCBによる資金調達が氾濫するようになるかもしれません。やってくるのは株価の大暴落です。

MSCBは積極的に普及させるべき資金調達手段ではなく、それ以外に資金調達の手段のない企業がやむを得ず実施するという段階で歯止めをかけておくべきです。これは既存株主のためだけではありません。そうしないと蔓延する安易なMSCBがやがては株式市場の資本調達機能を麻痺させてしまう危険があるからです。

証券会社には、「目先の利益だけを追いかけていると、やがて自分で自分の首を絞めることになりますよ」・・・と、偉そうなことを警告しておきたいと思います。

なお、MSCBについての解説は下記のホームページが詳しいです。

 http://www15.ocn.ne.jp/~hiro-hmx/st_column.htm

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2006年7月 5日 (水)

チャート分析の疑問

もともと将来の株価というのは、上がるか下がるかのふたつにひとつです。サイコロを転がして予想しても半分は当たります。いわゆるチャート分析による株価予測がなにか意味ありげに思えるのは、はずれた場合はファンダメンタルズや外部環境の違いのせいにして、当たった場合はそれがたまたまであったとしてもチャート分析の成果のように考えてしまう傾向があるからではないでしょうか。

迷ったときに売買の決断を後押ししてくれるという意味ではチャート分析にもそれなりの意義があると思います。しかし、それは、「迷った時はサイコロを転がして偶数が出たら買い」と決めておいて実際にサイコロを転がしてみることで代用できる程度の意義です。チャート分析の有効性に過大の期待を抱くのは禁物だと思います。

人間には、画用紙に3つ点を打っただけでもそこにひとつの流れを読みとってしまう能力があります。しかし、その流れは実際には存在しない流れです。この存在しない流れが見えてしまうという人間の特殊な能力が、チャートを分析すれば株価が予想できるかのような錯覚を引き起こしているのではないでしょうか。

「拝めば治る」と主張するインチキ宗教はある意味で天下無敵です。それがたまたまであっても拝んで病気が治れば信仰のご利益だということになり、拝んでも治らなかった場合は、「信仰があれば拝めば必ず治ります。拝んでも治らないのは信仰が足りないからです」とうそぶいて突き放してしまえばいいのです。チャート分析に熱中している投資家の言動にこれと似たような論理を感じるときがありります。

「チャートを研究すれば株価は必ず予測できる。予測がはずれるのはチャートの研究が足りないからだ」

チャート分析による予測がはずれたとき、それをチャート分析の限界とは考えずに自分の研究不足だと考えてしまうと、ますます精緻なチャート分析の世界にのめり込んでいきます。しかし、いくら研究してもダメなものはダメなんですけどね。

チャート分析に限らず、あらゆるテクニカル分析には似たような側面があると思います。実際問題として、テクニカル分析に力を入れてその結果パフォーマンスが向上したという話はあまり聞いたことがありません。

たとえば、チャート分析に力を入れている投資家とチャートに無関心な投資家がいたとします。どちらの投資家のパフォーマンスがいいかというと、大して変わらないというのが実態ではないでしょうか。

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2006年7月 1日 (土)

儲からないからやめなさい

株式投資にインサイダー取引はつきものです。はっきりした証拠がないために犯罪として摘発されなかったとしても、状況証拠としてチャートや出来高がインサイダー取引を示唆している場合がよくあります。また、それほど目立たなくても小口のインサイダー取引は日常的に行われていると思います。あるいは入手した情報がたまたまインサイダー情報であったために、本人はまったくその自覚がないまま結果的にインサイダー取引をしていたというケースもけっこうあるのではないでしょうか。

それから、風説の流布(投資判断に影響を与えるような虚偽情報を流す行為)というのも株式市場にはつきものです。意図的で明らかな虚偽情報でなくても、投資判断に影響を与えるような不確かな情報(未確認情報)は常にネット上を飛び交っています。こうした情報について何がどこまで正しいのかは、当事者以外知るよしもありません。さらには売買における相場操縦的な違法行為(見せ板、仮装取引、馴合取引など)というのもあります。

こうした不正行為にたいして、フェアプレイの個人投資家はせいぜいだまされないようにするのが精一杯です。だまされることはあってもだますことはできないという意味で常にハンディを背負っているといえます。

インサイダー取引や風説の流布、あるいは相場操縦的な違法行為なども含めて市場の株価が形成されているとすれば、これらの行為と無関係の個人投資家が株式投資で市場平均並みのパフォーマンスをあげるのは至難の業であるといえます。短期では運よく市場平均を上回ることがあったとしても、長期になればなるほど市場平均には届かなくなってしまうのではないでしょうか。

個人投資家が株式投資でなかなか儲からない(=市場平均に負けてしまう)理由として、金額ベースで見れば株式投資のの大半はプロが運用しているんだから当然だという見方があります。しかし、たとえプロであったとしてもプロ中のプロではなくごく平均的なプロであれば、法令遵守を前提とする限りやはり市場平均を達成するのは難しいのではないでしょうか。

上げ相場でも値上り益は市場平均の半分、下げ相場になれば値下り損は市場平均の2倍に膨らむ、これが株式投資における個人投資家の平均的パフォーマンスだと考えておけばまず間違いありません。

金融庁監督局長懇談会が、証券市場の信頼回復に向けて証券界に自主規制の強化などを求める論点整理をまとめたそうです(7月1日付日経新聞朝刊)。インサイダー取引や相場操縦などの不正取引についても、監視体制を早急に整備するよう求めています。

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2006年6月29日 (木)

株式分割について

これよりもさらに落ちぶれるとホームレスになるか詐欺師になるかしかないという崖っぷちの境遇に追い込まれたことがあります。いや、今がその境遇です。ただ、これよりさらに落ちぶれる心配はなくなりました。もっとも、そう思っているのは本人だけかもしれません。

境遇の話はさておき、株の話をします。株式分割についてです。

去年までなら、株式分割を発表した銘柄は、分割の権利取りの買いと分割後の需給逼迫により、かなりの高確率で株価の上昇が期待できました。しかし、新株の発行日が変更されてからはどうもいけません。流通株の増加で需給が悪化するためか、株価が低迷してしまうケースが増えてきました。こうなってくると、せっかく株式分割をしても既存の株主にとってはむしろ迷惑で、もはや株式分割が株主還元策であるとはいえなくなってきました。

好業績の銘柄が売買単価を引き下げるために実施する株式分割ならともかくとして、業績悪化や無配の銘柄がお詫びのしるしに株式分割をするなどというのはもってのほかです。

株式分割は需給を悪化させるマイナス材料であるという認識がより一般的になってくれば、分割を発表した銘柄をここぞとばかりに信用で売り叩くような投資手法が流行りだすかもしれません。いまだに、「株式分割はコストのかからない株主還元策」などと調子のいいことを考えている経営者がいたとしたらぶっ飛ばしもんです。

長期保有の株主としては、派手な大幅分割よりも名目配当は据え置いたまま実質増配となるような小幅の分割がいいです。

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