2008年12月20日 (土)

パナソニックは慈善事業団体か?

パナソニック、三洋電機と資本・業務提携で最終合意…TOBを実施へ
12月19日22時11分配信 レスポンス

パナソニックと三洋電機は、資本・業務提携契約を締結したと発表した。今後、株式公開買付け(TOB)で、パナソニックは、三洋電機のA種優先株式、B種優先株式の普通株式への転換後の議決権の過半数の取得を目指す。将来的には両社の組織再編も視野に入れ、両社は緊密な協業関係を構築する。

TOBは、国内外の競争法に基づいて必要な手続、対応を終えた後、可能な限り早期に実施する。
 
世界的な景気後退局面で、パナソニックと三洋電機は、既存戦略の加速だけでなく、成長性の更なる強化に向けた抜本的なアクションが必要との課題認識を共有。今回の提携により、両社がこれまで培ってきた技術やモノづくりの力を結集し、グローバル競争力強化に向けたシナジーを追求することで企業価値の最大化を目指すとしている。
 
TOBは全株式が対象で、買付価格は普通株式が1株当たり131円、A種優先株式・B種優先株式が1株当たり1310円の予定。
 
全株式の過半数が買付予定数の下限として設定する。三洋電機の大株主であるオーシャンズ・ホールディングス有限会社(ゴールドマン・サックス・グループの関連会社)、エボリューション・インベストメンツ(大和証券エスエムビーシープリンシパル・インベストメンツの完全子会社)、株式会社三井住友銀行は応募する見通しで、この3社のTOBの応募だけで優先株の普通株への転換後、議決権の70.5%を取得する。
 
パナソニックが三洋電機を子会社化後も三洋電機の上場は維持することで合意しており、上場廃止に抵触する場合は必要な手を打つ、としている。

優先株が普通株に転換されると三洋電機の発行済普通株式数は18.7億株から約60億株に膨れ上がります。三洋電機の時価総額を大甘に見積もって約3000億円としてもそのときの妥当株価は1株50円です。それをパナソニックは1株131円で買おうというのです。パナソニックの経営陣は何を考えているのでしょうか。三洋電機の優先株を保有する銀行や証券会社を儲けさせるためにパナソニックに損害を与えるような経営判断がまかり通ってもいいのでしょうか。不思議なことにまかり通ってしまうようです。

ちなみに、パナソニックが三洋電機の優先株4.28億株を1株1310円ですべて買取るには約5600億円の資金が必要になります。5600億という金額はNECの時価総額(約5000億円)を上回る金額です。

日本経済もいよいよリッチ企業(つまりパナソニック)の「慈善事業」に頼らないと回らなくなってきているのかもしれません。すさまじい時代になったものです。

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2008年12月17日 (水)

日電産が東洋電のTOB断念、長期化は株主価値損ねる恐れ

12月15日19時45分配信 ロイター
 [東京 15日 ロイター] 日本電産<6594.OS>は15日、東洋電機製造<6505.T>に対して行っていた資本・業務提携提案をこれ以上行わないと発表した。
 同日会見した永守重信社長は、交渉の長期化が日本電産の株主価値を損ねる可能性があるのを懸念したほか、2度行われた東洋電との会談をふまえ、「この経営者とは一緒にやっていけないと思った」ことなどが、交渉打ち切りを決定した理由と説明した。
 ただ、今後も鉄道分野に進出する意思に変わりはなく、「東洋電機以外にも世界には(モーターメーカーが)あるので、そのようなところに興味をもってみていく」と語った。
 日本電産は、9月16日に東洋電機に対し1株あたり635円で株式公開買い付け(TOB)を行うほか、業務提携の提案を行い、3カ月後の12月15日を提案書の有効期限日として交渉を続けてきた。紙面のやりとりのほか、両社の社長を含む会談1回、実務者レベルの会談も1回行われた。
 永守社長は、これ以上の提案を東洋電機に行わない決定をした背景と関連し、東洋電機の経営陣について「最初からこの案件(提案)をつぶしたいという前提で議論していたと思う。自分の会社の価値を上げるとか、格調高い視点が欲しかった」と非難した。
 そのうえで自身の経営戦略について、企業の価値向上には「M&Aがすべてだとは思わないが、(買収や資本提携をテコに成長する)方針を見直すつもりはない」と述べた。また、「(今回を)あきらめて無念、残念という気持ちもない。全然疲れていないし意欲はますます出ている」と語り、今後も積極的にM&Aを行う意欲をみせた。
(ロイターニュース 江本 恵美記者)

交渉打ち切りのニュースを受けて16日の東洋電機製造の株価はストップ安比例配分でした(258円)。TOBの思惑がなくなれば150円~200円程度が東洋電機製造の妥当株価だと思います。日本電産が提示した1株あたり635円というTOB価格はあまりにも破格です。(日本電産が親会社なら)会社の価値が毀損される恐れもありません。会社の将来を考えるならむしろ東洋電機製造のほうから資本・業務提携の提案をしてもおかしくない案件だったと思います。願ってもないような日本電産の提案に同意できない東洋電機製造の経営陣(&労働組合)というのは、自分たちの保身しか考えていないと思われてもしかたありません。日本ではこういう経営陣でも株主からクビにされないから不思議です。

これまで日本電産はM&Aに失敗したことはなく、今回が初めての失敗らしいです。日本電産が降りてしまったのは、3ヶ月が経過して今の相場環境ではさすがに635円のTOB価格は高すぎると考えたのだと思います。内心では東洋電機製造がゴネてくれてホッとしているかもしれません。

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2008年11月22日 (土)

日経新聞に騙されるな!

今日(11月22日)の日経新聞に

 「4-9月期経常利益の通期予想に対する進ちょく率の高い銘柄」

というランキング(ベスト30)が掲載されていました(集計対象は①時価総額が500億円以上②予想PERが30倍以下の銘柄)。よく見ると進ちょく率99.5%のトヨタ自動車がなんと第4位です。

日経新聞の記事によれば、「業績見通しの中に需要減退や円高、株安といった悪材料をどの程度織り込んでいるかが、今後の業績動向を占うポイントになる」のだそうで、「(トヨタは)足元の動向以上に円高で利益が目減りするリスクを織り込んでいる可能性もある」のだそうです。ホントかね?まるでトヨタは業績面から割安であるといわんばかりの論評です。でも、こんな記事を読んで「トヨタは割安」などと判断したらエライ目にあいますよ。

トヨタの下半期の想定為替レートは1ドル100円です。ところが現在の為替レートはすでに1ドル95円です。トヨタは1円の円高が400億円の減益要因ですから、このままでは円高による利益減がさらに2000億円(400億円×5)発生することになります。足元の為替相場を前提とすればトヨタの業績予想には円高で利益が目減りするリスクがまだ十分には織り込まれていないことになります。

今のところ、業績予想に着目して輸出関連企業の中から割安な銘柄を探そうとしてもほとんど無意味です。業績予想が全くあてにならないからです。為替レートひとつをとってみても、ほとんどの企業が下期の為替レートを1ドル100円前後に想定していると思います。(トヨタに限らず)ほとんどの輸出関連企業は為替レートの影響だけでも今後さらなる業績の下方修正を迫られる可能性が大です。厳しい時代になったものです。

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2008年11月 8日 (土)

トヨタショック

トヨタ自動車が2009年3月期の業績見通しを下方修正しました。

           売上高      営業利益
前回予想  250000億円   16000億円
今回予想  230000億円    6000億円
増減    ▲20000億円  ▲10000億円

営業利益を従来予想の1兆6000億円から6000億円へ1兆円の下方修正です。1兆円のうち6900億円は円高の影響だそうです。

トヨタ自動車は上半期(4-9月期)で5820億円の営業利益を計上していますが、通期予想の営業利益は6000億円です。つまり下半期の営業利益はわずか180億円しか見込んでいないことになります。トヨタ自動車の場合1円の円高が400億円の減益要因だそうですから、かりに下半期に計画通りの販売目標が達成できたとしても、為替レートが想定(1ドル100円)よりも円高になれば下半期は営業赤字に転落することになります。

               売上高    営業利益
第一四半期      62151億円  4126億円
第二四半期      59753億円  1694億円
下半期(予想)   108096億円   180億円

今回のトヨタショックは営業利益が「1兆円幅の減額修正」ということで話題となっていますが、それよりも第二四半期(7-9月期)の業績悪化が不気味です。第二四半期の業績悪化はほんの始まりで本格的悪化はむしろこれからであると考えると、営業利益の「1兆円幅の減額修正」さえ希望的観測に思えてきます。実際は上半期に計上した営業利益を下半期に食いつぶしていくという展開になるのではないでしょうか。

今回のトヨタショックは「1兆円幅の減額修正」が衝撃的なのではなく、「1兆円幅の減額修正」さえ甘い見通しに過ぎないというところに真の衝撃性があるのだと思います。恐ろしいことです。

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2008年10月27日 (月)

日経平均、バブル崩壊後最安値

10月24日の日経新聞の「大機小機」というコラムに米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏のデリバティブ(金融派生商品)取引に関する見解が紹介されていました。

このコラムを参考にしてデリバティブ(金融派生商品)取引の要点を整理すると、

1.デリバティブ取引はゼロサムゲームである。取引の一方が利益を出せば他方は損失を蒙る。
2.デリバティブ取引の損益は複雑な数学モデルによって推計される。その推計は将来の経済変数の想定を多少いじるだけで大きく変動する。
3.双方がそれぞれ自分に都合の良い評価モデルを使って損益の推計をしていれば、決済されるまでは双方が儲かっているような幻想が生れる。

35歳を過ぎたら習得できないといわれているような金融工学の難しい理論は分からなくても、素人としてはこれだけ知っていれば十分です。要するに、競馬の馬券を買った人が自分が予想した通りのレース展開になることを信じてみんながみんな自分が儲かった気になっているのと似たようなものだと思います。競馬の馬券の場合はすぐに結果が出て厳しい現実を思い知らされますが、デリバティブ取引の場合は10年を超えるような長期契約もあるそうです。そして長期のデリバティブ取引が決済されるころには(つまり巨額の利益計上が幻想であったことがバレるころには)、高額の報酬を得ていたデリバティブ会社のCEO(経営最高責任者)やディーラーは退職してしまっています。デリバティブ会社のCEOやディーラーといった人たちは金融工学に精通した金融取引のスペシャリストだと思います。しかしこれではほとんど詐欺師とかわらないですね。もちろんゼロサムゲームですから本当に利益を上げているすご腕の人もいるんでしょうけど・・・。

それを保有することのリスクの大きさから、ウォーレン・バフェット氏は「デリバティブは金融上の大量破壊兵器」と指摘していたそうです。

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2007年10月 1日 (月)

年間上昇率ナンバーワン銘柄を追う・その9

9月末までの上昇率ベスト10です。

    コード   上昇率(%)  銘柄     
 1. 6378  388.70   木村化  
 2. 9132  289.90   第一中汽
 3. 9113  268.46   乾汽船  
 4. 9115  164.45   明治海  
 5. 6755  162.60   富士通ゼ 猛暑関連・エアコン絶好調
 6. 9123  156.21   太平海  
 7. 9110  152.22   新和海  
 8. 6222  129.48   島精機  
 9. 4997  120.94   日農薬  
10. 7999  119.79   MUTOHH

波乱の株式相場も9月はやや落ち着きましたが、8月のひどかったことといったら目も当てられません。損益を計算する気力も失せてしまった人も多かったのではないでしょうか(自分のことを人ごとのように言う)。

9月30日の日経新聞に、世界主要20市場の1-9月騰落率というのが載っていました。

    騰落率(%)
 1.  104.5  中国
 2.   35.6  韓国
 3.   33.6  香港
 4.   33.2  ブラジル
 5.   24.0  インド
 6.   22.0  シンガポール
 7.   19.6  台湾
 8.   19.3  南アフリカ
 9.   17.7  ドイツ
10.   15.8  オーストラリア
11.   11.4  米国
12.    9.1  カナダ
13.    8.0  オランダ
14.    4.9  スウェーデン
15.    2.5  英国
16.    1.7  フランス
17.    1.5  スペイン
18.    0.1  スイス
19.   ▲3.3  日本
20.   ▲5.1  イタリア

潜在的な財政問題を抱えている日本とイタリアがともにマイナスだったというのが象徴的です。何か不吉な将来を暗示しています。国際貢献もいいけれど、無料サービスのガソリンスタンドをやっている場合ではないと思うのですが・・・。

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2007年8月 8日 (水)

スティール・TOB続行

最高裁の抗告棄却を受けてスティールはTOBを撤回すると予想していましたが、予想が外れました。スティールは買取り価格を425円に引き下げてTOBの続行を表明しました。

でも、スティールのTOBは、取扱い窓口がウツミ屋証券であったり、延長期間が8月23日までだったりして、全株取得を表明しながらも何とか応募してもらおうという積極的な姿勢が感じられません。特に締切が8月23日というのは致命的です。株主によっては新株の応募が不可能だったりします。このTOB続行は明らかに本気ではないです。抗告を棄却されて即TOB撤回では体裁が悪いのかもしれません。

天竜製鋸のTOBのときは、結局応募株式数はわずか14万3000株(発行済み株式数の約2.57%)で、これに対するスティールのコメントは次のようなものでした。

「天竜製鋸の株主がTOBに応じるか否かを自ら判断できたことを喜ばしく思う。われわれは同社の将来性を高く評価し、今後も継続的な成功を支援していきたい」

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2007年8月 7日 (火)

最高裁がスティールの抗告を棄却

[東京 7日 ロイター] 最終更新:8月7日19時4分
 
<乱用的か否かに関わらず法令違反でない>
  最高裁の決定によると、ブルドックの買収防衛策についてスティールが株主平等原則違反と主張したことに対し「特定の株主の経営支配権の取得で、会社の株主価値が毀(き)損され、会社の利益・株主共同の利益が害されるおそれが生じるような場合」には、その防止のために特定の株主を差別的に扱うことができるとした。
 そのうえで、ブルドックの買収防衛策は株主総会で83.4%の賛成を得て可決されたことを指摘して「ほとんどの既存株主が、スティールによる経営支配権の取得が相手方の利益・株主共同の利益を害することになると判断したものといえる」と認定した。

もしこれが本当なら、買収防衛策なんて必要ねーじゃん。株主がTOBに応じなければいいだけの話です。

 さらに、スティールに割り当てられる新株予約権には新株が交付されないが、その代わりに現金23億円が支払われることを指摘して「相当性を欠くものとは認められない」とした。

今日ののブルドックソースの終値は下がったとはいえ630円です。スティールの新株予約権を396円で強制的に買取ることはどう考えても相当性を欠ています。

また、スティールが高裁で「乱用的買収者」と認定されたことに関しては「乱用的買収者に当たるといえるか否かに関わらず、新株予約権は株主平等原則の趣旨に反するものではなく、法令に違反しない」とだけ言及して、明確な判断は避けた。

高裁がスティールを濫用的買収者と認定したのは、そうしないと新株予約権を市場価格よりも低い396円で買取ることを正当化できなかったからだと思います。濫用的買収者かどうかの認定は避けて、なぜか結論だけは同じという最高裁の判断には首をかしげてしまいます。正否はともかくとしてまだ高裁の判断のほうが論旨が一貫していたと思います。

最高裁の抗告棄却は、頭ごなしに、

  ダメなものはダメだ

といっているだけで理屈もへったくれもありゃしません。

これでスティールは堂々とTOBを中止できることになりました。10日からは新株が市場に出回ることになります。ブルドックソースの株価は奈落の底に沈んでいくと思います。

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2007年8月 6日 (月)

年間上昇率ナンバーワン銘柄を追う・その7

米国のサブプライムローン問題、円高、参院選の与党大敗、安倍内閣続投など、日本の株式市場は悪材料が満載ですが、頑張っている銘柄もあります。7月末までの上昇率ベスト10です。

    コード   上昇率(%)  銘柄     高値日
 1. 6378  355.82  木村化     7/12
 2. 9132  205.22  第一中汽    7/26
 3. 9113  173.69  乾汽船     6/04
 4. 9123  171.89  太平海     6/07
 5. 9115  160.10  明治海     6/05
 6. 7709  155.13  クボテック   7/31
 7. 9110  129.38  新和海     8/03
 8. 4997  121.76  日農薬     7/17
 9. 6519  116.99  エネサーブ   7/18
10. 6368  110.09  オルガノ    7/11

中越沖地震による柏崎刈羽原発のトラブル以来、原発関連銘柄に勢いがなくなりました。相変わらず頑強なのは海運株です。どうも面白くないので10位以下の注目銘柄もピックアップしてみました。いずれも業績上方修正銘柄です。

15. 5333  ガイシ    99.13
16. 6217  津田駒    98.32
18. 6222  島精機    93.66
21. 7974  任天堂    89.64
35. 5302  カーボン   70.55

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2007年7月25日 (水)

ブルドックソース・不可解な大量保有報告書

7月24日付でみずほ銀行がブルドックソースの大量保有報告書を提出しています。

保有株          54万株
新株予約権      163万株(54×3)
合  計         218万株

発行済株式数    1901万株

(54+163)÷(1901+163)=10.56%

新株予約権の割当によって保有比率が10.56%に増加したという報告なんですが、こういう大量保有報告書って、何か意味があるんでしょうかね。第一生命(8.55%)や日本生命(13.09%)も同様の大量保有報告書を提出しています。

この方式で計算すると、約25万株以上を保有するブルドックソースの大株主は軒並み保有比率が5%を超えてしまうことになります。報告義務が発生すると思うのですが、今のところ大量保有報告書を提出しているのはこの3社だけです。

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